注釈
現在、タグ「グレシャム」はハイパーインフレーション関連のイラストのみで利用されているが、本タグを付けたイラストが多いことと、史実上の人物と区別する観点から、本記事でハイパーインフレーションのグレシャムを取り扱うものとする。
｢これが一番儲かるぞォ！！｣
人物
グレシャム商会を取り仕切る奴隷商人であり、主人公ルークの姉であるハルを奴隷として売り払った全ての元凶。その大きな体と赤ん坊のような欲張り性から「大きな赤ちゃん」と呼ばれている。部下にフラペコがいる。資本主義を擬人化したような人物で、カネを儲けるためには手段を選ばない。
（手数料のかかる贋金鑑定&交換、サクラを使ったオークション、火事場泥棒、マフィアとの取引など）
儲かると踏めばどんな卑劣な悪事も平然とこなし、人を裏切る事に対してもなんの疑問も持たないという、端的に見れば最低のクズそのもの。「金の切れ目が縁の切れ目」をそのまま体現したかのような人物。
目につくもの（人、物問わず）にベルク換算で価値を付ける癖があり、価値が上昇すれば喜び、価値が下落すればどうでもよくなったり動揺したりする。
己の金が懸かった時の底力は凄まじいものであり、ガブール人の反乱によりオークション会場が襲撃を受けた際には60代という高齢でありながら大量の芸術品を担いで誰よりも速く逃走用の馬のもとへ走り抜いたり、レジャットの狙撃で足を負傷した際にはろくな治療設備も確保出来ない逃避行の中で数日間痛みと熱に耐え抜く生命力を発揮したばかりか、己の治療とルークを捕らえる為の刺客を誰にも気付かれる事なく手配する狡猾さを見せた。
このように清々しい程のド外道だが、(上述の通り自分以外の人間を平等に自分の利益になるかどうかで価値を見出してるので)、ガブール人に対する差別が随所に描写される本世界において人種や身分への差別意識が無く、相手がどんな身分であろうと有能な者を味方に付けようとする。
(奴隷商をやってたのもそれが単に儲かるからである。)
加えて作中でもトップクラスに非常に頭の回転が速く（宿敵として恨んでいたルークも舌を巻くほど）、裏社会の人間とのコネも豊富であり、味方につけると非常に頼りになる人物であるため、物語中盤からルークはこの男と共同戦線を張る事となる。
そのモチベーションは厳密に言えば「金」そのもの以上に「自身が金を儲けること」に向けられているため、最初のハイパーノートを使った計画が失敗して意気消沈しているルークを前にしても「人生を懸けた計画が失敗するなんて普通」「全てを失った上に借金までしてるから、マイナスから金を稼げる」と笑顔で言い放っている。この異常なまでのバイタリティーがルークを再起させる最初のきっかけにもなった。
裏切り癖
さて、この男について突筆すべきはやはり儲け話を前にした時の裏切り癖であろう。
『常に自分が儲かる方の味方』になることを徹底している彼は、少しでも自分に利益があると考えれば主人公のルークはもちろん、たとえそれまで入念に計画や商談を結んできた相手であったとしても平然と裏切る。裏切る。それはもう裏切りまくる。儲かりそうと見ればたった今まで殺し合っていた相手とも手を組んで味方を裏切るし、何なら屋敷に入ってから裏切り、出てから元サヤに収まる形でまた裏切っている。
この男ほど「信頼」という言葉から縁遠い男は本作にはおるまい。ただし作中内外の人物たちから『コイツは儲け話が舞い込んできたら平然と裏切るだろう』という点に限っては絶対の信用を得ている(自ら「私は金の味方」と言い切っており、実際それが一貫している)ため、一般的な裏切り者キャラと異なり「裏切ってるのにヘイトが全然貯まらない」という奇妙な現象が発生する。
それどころかこの男が裏切り始めると物語が劇的に動き出すため、読者からはむしろ裏切りを期待されている面もあったり…
そんな曲がりなりに…というかネジ曲がりきりながらも筋の通った一面が、フラペコがグレシャムに忠誠を誓っている理由でもある。グレシャムにとってもフラペコは特別な存在であるらしく、ルークに感化されて自分に反発する形で裏切ったことを「成長」と捉えて褒めたり、窮地に陥ったフラペコを助けるために立ち向かったりしている(無論、それもより多くの金を儲けるためではあるのだろうが）。
余談
名前の元になったトーマス・グレシャムは『悪貨は良貨を駆逐する』という言葉を残している。そしてこの言葉の通称『グレシャムの法則』は作中、本来とは違う意味でグレシャムの人柄を表す言葉として用いられた。
