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行司

ぎょうじ

相撲において取組の有利・不利を判断し、勝者を判定する役目の者。

概要

行司は他競技でいうところの主審レフェリーなどに相当すると言われ、勝負が決まった段階でどちらの力士が勝ったかを軍配によって示さなければならない。

しかし、反則・同体(両力士が同時に土俵上に倒れたり、土俵外に出たりすること)の判定はできず(※1)、物言い(行司が下した判定に対し、勝負審判や控え力士が異議を唱えること)となった際には意見を述べることはできても最終的な評決には加わることができない等、近代スポーツであれば当然主審に与えられる権限が行司にはない。


大相撲においては、取組中に「はっけよい(※2)」「残った残った」などの取組中の掛け声や、水入り(長時間の取組になり、疲労などのために取組に進捗が見られない状態になった際、行司あるいは審判委員の判断によって取組を一時中断すること)の場合に両者の立ち位置や組み手などを決めたりする取組進行役としての役割も持っている。


上下の差が顕著な相撲界においては行司も例外ではなく、力士同様、行司も各相撲部屋に所属し、階級によって行司の装束も大きく変わる。幕下格以下は裸足で土俵に上がるため「裸足行司」、十両格と幕内格は足袋を履いて土俵に上がるので「格足袋」、三役格と立行司は足袋に加えて草履を履いて土俵に上がるので「格草履」とも呼ばれる。かつては三役格で格足袋も存在したが、現在では三役格は全員格草履と定められている。格足袋以上は袴の裾を足首まで下ろしているが、裸足行司は膝下までたくし上げていて、これは未熟な者が裾を踏まないようにする意味であるとの説がある。房や菊綴の色も格によって決まっている。

現在の装束は、『審判規則』第1条により直垂烏帽子の着用と軍配を持つことが決められている。それ以前は裃を着ていて、頭には何も被っていなかった。

なお、最高格である立行司木村庄之助式守伊之助)は、短刀を差しているが、これは「横綱大関の大事な一番を差し違えようものなら切腹する」という覚悟を表すためであり、現在では差し違えた場合は理事長に進退を伺うことが慣行となっている。もちろん立行司となれば責任は重く、2場所で3度差し違えた40代式守伊之助は場所中に3日間の謹慎処分を受けたことがある。伊之助は相当思いつめ引退を考えていたが、当時の理事長だった北の湖は「少しリラックスしたほうがいい」と謹慎処分で済ませ、結果的に本人の気持ちの切り替えに繋がった(プロジェクトXより(※3))。同体で落ちるような取組はまさに行司泣かせである。


また、土俵上で裁いている際には、力士の動きを妨害したり、衝突したりしないように避けながら動くのだが、それでも避け切れずに技に巻き込まれる等して、土俵上で転倒したり、土俵下に落下したりする場合もある。すぐに戻れる場合はいいのだが、大けがをする等して戻れなくなる場合もあり、そのために向正面に控行司がいて、いざという時に代理ができるようにしている。ただしその逆に控行司が巻き込まれて大けがをした例も存在する(※4)。控行司は基本的には次に出番を迎える者が務めるが、審判交代や土俵入りといった休憩をはさむ直前だったり、結びの一番の場合には直前に裁いた者が務める。また負傷等が無くても、倒されたために勝負がつく瞬間を見る事ができない事もあり、この場合には審判や控行司に勝負結果を尋ねる。転倒、落下、力士との接触といった事が多かったりすると、自分の身に危険なうえに、裁かれる力士の側も安心して動けない事に繋がり易く、行司としての能力審査にも悪く影響するため、的確に動きを見極めて避けつつ正確に裁けるかは重要な事である。


行司の役割は、大相撲の軍配を差すことばかりが目立つが、その他にも土俵入りの先導役、土俵祭の司祭、場内放送、取組編成会議の書記、番付編成会議の書記、割場などの仕事がある。

巡業においては交通機関や宿泊先の手配・部屋割りなどの先乗り親方の補佐したり、所属している部屋においては番付の発送、冠婚葬祭の仕切り、人別帳の作成などの仕事に携わる。このように雑務もこなしているため、単に軍配を差すだけがお仕事の人というわけではない(もちろん呼出等の他の裏方も同じ)。



※1…江戸時代には行司が同体の判定をする制度が存在し、無勝負と呼ばれた。軍配を真上に構えて無勝負を宣告し、その後に軍配を袴の中にしまい込むという方法で表現されていた。星取表に記される勝負結果は片仮名の「ム」を用いる。江戸相撲では幕末に廃止されているため、明治以降には存在しない。


※2…「はっよい」とも。日本相撲協会はせきトリくん等で「ハッキヨイ」を採用している。漫画では「バチバチ」が「ハッキヨイ」、「火ノ丸相撲」や「りきじょ」は「はっきよい」と表記されている。

「はっけよい」の掛け声の謂れについては「発気揚揚(はっきようよう)」、「八卦良い(はっけよい)」等諸説あるが、2021年に発売された三省堂国語辞典第八版では「はっけよい」の由来欄で「古語の「はや、きおえ 〔=早く競え〕」の変化。「八卦良い」「発気揚々」からという説は誤り。ただし、当て字としては「八卦良い」も使う。」という記述が加えられた。


※3…同番組で伊之助は立行司になった時から「毎晩差し違える悪夢を見ていた」と語り、上記の2回目の差し違えをした時に精神的に疲弊し、普段なら差し違えないような一番を差し違えてしまった。伊之助の奥さんは「行司一本で生きてきた人だから辞めてしまったら自殺するかもしれない」と気が気でなかったという。現場ではテレビで見ている以上に大変なことなのだ。


※4…29代式守伊之助が実際に経験し、左手首を骨折している。この時は土俵上で裁いていた8代式守勘太夫(後に30代式守伊之助)が即座に気付いて交代を申し出たが、伊之助は立行司の責任があるとして断り、その日の務めは予定通りに行なった。ただし当日の終了直後に病院に運ばれ翌日から休場、翌場所は全休している。


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