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日本の競走馬。日本の調教馬として初めて海外ダートG1を制覇した。

データ

データ

生年月日2016年5月4日
英字表記Marche Lorraine
性別
毛色鹿毛
オルフェーヴル
ヴィートマルシェ
母の父フレンチデピュティ
競走成績22戦9勝
主な勝利レースBCディスタフ('21)、他地方重賞4勝
獲得賞金中央6607万9000円+地方1億2720万円+海外164万アメリカドル
管理調教師矢作芳人(栗東)

概要

概要

父オルフェーヴルは7頭目の三冠馬であり、フォワ賞連覇、凱旋門賞も2年連続2着と海外実績も大きい名馬。種牡馬としても初年度からクラシックホースを出すなどG1勝ち馬を何頭も輩出している一方、産駒の勝ち上がり率は高くなく(特に2歳時の勝ち上がり率は上位種牡馬としては非常に低い)、当たり外れが大きい事で知られる。

母ヴィートマルシェは現役時代は1勝しか挙げられなかったが、その母はマイル路線で実績を挙げたキョウエイマーチ。ヴィートマルシェは産駒唯一の牝馬である。

名前の由来はフランスの行進曲から。また『マルシュ』は英語だと『マーチ』のため、母母であるキョウエイマーチから3世代に渡って名を受け継いでいる。

所属は矢作厩舎で、同厩のラヴズオンリーユーとは非常に仲が良い。

ちなみに血統を遡るとサンデーサイレンスメジロマックイーンディクタスノーザンテーストフレンチデピュティダンシングブレーヴといった日本や世界で活躍した名馬、名種牡馬が名を連ねている。


2019年(3歳)

2月3日、京都競馬場にてデビュー。このデビュー戦は惜しくも1/2馬身差の2着だった(このレースの6着馬ボッケリーニが後に中日新聞杯を勝利している)。

その後もオッズこそ1桁が続いたが勝ちきれず、未勝利を抜けたのは、未勝利戦も終わり間近の8月だった。その後、1勝クラスを勝利し、7戦2勝で3歳シーズンを終える。


2020年(4歳)

年内初戦の四国新聞杯で3勝目を挙げ、その後、福島牝馬ステークス、マーメイドステークスの重賞に挑むもいずれも着外。その後も勝てず、博多ステークスのクビ差2着を最後にダートに転向。すると、いきなり頭角を表し、ダート初戦の桜島ステークスを勝利、続くレディースプレリュードで3馬身差を付け、重賞初勝利。その後JBCレディスクラシックでGⅠ初挑戦(JBCレディスクラシック自体は日本独自の格付けのため、正式にはJpnⅠ)。単勝1.3倍の圧倒的1番人気に推されたが、3着に敗れた。

なお、後に矢作調教師より、博多Sを勝っていたらダートに転向しなかったかもしれないと語っている。


2021年(5歳)

年内初戦にTCK女王盃に出走。昨年のJBCレディスクラシック2着のマドラスチェックも出走していたが、これらを抑え、重賞2勝目を挙げる。その後のエンプレス杯でも人気に応え勝利。その後牡馬混合戦となる平安S、帝王賞に出走するも、勝つことは出来なかった。

その後牝馬路線に戻ると、ブリーダーズゴールドカップで重賞4勝目。改めて牝馬路線での力の強さを見せつけた。


ブリーダーズカップ・ディスタフ

2021年11月、事前にBC出走を決めていたラヴズオンリーユーの帯同馬として米国へ遠征し、ブリーダーズカップディスタフ(牝馬3歳以上ダート9F≒1810m)へ出走。


雨が多い日本ではダートコースに水はけの良い砂を使用しているが、アメリカのダートは赤土であり日本の砂よりもスピードが要求される。歴史的に芝の二軍扱いで生産・育成・レース編成上軽んじられてきた日本のダート馬には厳しい馬場と言える。またそもそもアメリカはダートがメインの本場であること、桁違いの馬産規模のおかげで層が厚いこともあり、日本のダート馬がアメリカダートG1を勝つなどまず無理と考えられていた。

しかもBCディスタフは世界最強女王決定戦と位置付けられており、BC創設以来存在する7レースのうちの1つという歴史的な格も併せ持つ、まさにアメリカ競馬の聖域中の聖域。事実これまで1回を除き、全てアメリカ調教馬が勝利してきたレースである(その1回も同じ北米のカナダ調教馬。それも牝馬なのに牡馬の三冠路線でカナダ三冠馬になり殿堂入りしたという超名牝)。

そのため、相手は実績十分。1番人気のレトルースカはこの年に入ってからGIを4勝含む重賞5連勝中。2番人気のマラサートはその年のケンタッキーオークスの勝ち馬だった。


それに対しマルシュロレーヌは、日本のダート牝馬では最強格だったものの重賞実績はJpnII止まり(日本ではダート重賞が少ないので仕方ない面もあるが)と国際的には重賞未勝利扱いだったため、11頭立ての9番人気と完全な穴馬扱い。また、海外メディア「レーシングポスト」が出したレーティングは99。10番目のブルーストライブが108である(最高値はレトルースカとプライベートミッションの118。ちなみに、部門こそ違えどラヴズオンリーユーも118)。

BCフィリー&メアターフと違い、BCディスタフは日本で馬券が販売されないこともあり、さらにラヴズオンリーユーはこの舞台でも勝ち負け可能のレベルということもあって、日本の競馬ファンからの注目はラヴズオンリーユーに集中していた。そのためBCディスタフへの注目度は低く、「ラヴズオンリーユーの付き添いが主目的で、ついでに出走するようなものだろう」と見る向きが大半であった。

さらにこの時期に海外遠征を行うということは、国内の牝馬ダートJpnIであるJBCレディスクラシックを諦めなくてはならない。この年のJBCレディスクラシックは距離さえ克服すれば十分勝算があると思われたため、一口馬主たちからは否定的な意見があった。何せBCは招待競争ではないため、遠征費用は馬主負担なのである。

しかもラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌの所有一口クラブのスタンスの違いから、本命であろうラヴズの一口馬主は一銭たりとも金銭負担がないのに付き添いだろうマルシュの一口馬主だけ金銭負担があると言う状態だったのだから尤もである。


しかし矢作調教師としては「アメリカのダートは芝も走れる馬なら勝てるのではないか」という考えがあった。博多ステークス2着など、芝でもある程度結果を出したマルシュロレーヌなら赤土ダートにも合うのでは、という見込みがあったのである。


レース当日、先に親友ラヴズオンリーユーがBCフィリー&メアターフを見事に勝利し、この時点で日本馬初のBC制覇という偉業を達成した。


そしてマルシュロレーヌの出番、BCディスタフ。

レースはプライベートミッションがハイペースで逃げ、1番人気レトルースカを筆頭に先行5頭がこれを追走。2マイルは21秒台、半マイル44秒台という異常なハイペースですっ飛んでいく先行勢。アメリカのダートはハイペースになりやすいが、この時は現地の実況者さえ驚愕するほどのハイペースだった。

第3コーナーでプライベートミッションが失速。レトルースカとシーデアズザデビルがこれを交わしにかかるが手応えがない。そこに第4コーナーで先行6頭は後続5頭に捕まった。

マルシュロレーヌはコーナーから仕掛け、ロイヤルフラッグと共に先行勢を外から追い抜き先頭に立つ。

マーフィー騎手としては「前を塞がれて見せ場なく終わるよりは」と考えての早仕掛けだったが、彼の位置取りと曾祖父譲りのコーナリングは絶妙であり、一緒に上がってきたロイヤルフラッグをコーナー出口で競り落とす。内から2番人気マラサートとダンバーロードが追い込みに入るが、この2頭は熱くなったのか馬体をぶつけあって競ってしまう。


その時実況が叫んだ。

「Marche Lorraine is trying for the Giant Upset!!(マルシュロレーヌが大番狂わせを狙っている!)」


ハイペースの中から早めに仕掛けたためさすがにバテてきたマルシュロレーヌだが、マーフィー騎手の檄に応えて押し切りにかかった。外からクレリエールと立て直したロイヤルフラッグが突っ込んでくるが届かない。そしてマラサートを競り落としたダンバーロードの猛追をハナ差で振り切り優勝。大番狂わせをやってのけ、現役ダート牝馬の世界一に君臨した


これによりマルシュロレーヌは自身初のGI優勝を果たすとともに、オルフェーヴル産駒のダートG1初制覇、日本調教馬として初の海外ダートGI制覇(※)を、ダートの本場である米国の最高峰レースで達成するという歴史的快挙を成し遂げた。

また上述の通りラヴズオンリーユーも勝ったため、2頭の所属する矢作厩舎は同日に2つの米GI、それも最高峰のブリーダーズカップを制するという偉業を達成した。


また2着のダンバーロードもG1馬にして前年の3着馬ながら8番人気と低評価であり、人気勢は2番人気のマラサートが3着に入るまでで軒並み轟沈。ブリーダーズカップ史上稀に見る大波乱のレースとなった。アメリカでは4連単や5連単の馬券も売られているが、その荒れ模様は4連単は20,000倍以上となり、5連単は的中者がいなかったほど


有力視された先行馬が異常なハイペースのたたき合いで沈んだ事、最後にハナ差の競り合いとなったダンバーロードが接触によるタイムロスを出していたという巡りの良さこそあったものの、そのハイペースにしっかりついていって最後まで譲らなかったことは間違いなく馬の実力を示すものであった。勝ち時計がレース歴代5位というハードなレースであったことを鑑みればマルシュロレーヌの能力は確かにアメリカダートの最高峰に挑戦する資格を有するものであり、そして勝ち切ったのだと言える。

また3着に入ったマラサートはこの翌年にBCディスタフを含むG1三勝をあげる活躍により、アメリカ版JRA賞にあたるエクリプス賞の最優秀古馬牝馬を受賞。このレースの評価を再度高めることとなった。


この勝利はGⅠ未勝利ながらトゥザヴィクトリーの帯同馬として遠征し、年度代表馬犇めくドバイSC(当時GⅡ)で体調不良もあり低人気ながら世界最強馬をハナ差で下した祖父を彷彿させるものがあった。

そして一族のお約束ディクタスアイを見せたり、誘導馬に毛づくろいしてやったり、派手な優勝レイに驚いてサイドステップで逃げたり(マーフィー騎手が振り落とされそうになったが、なんとか安全に降りた)と、コミカルな面も見せた。



クインナルビーにまで遡る牝系や日本が育んだステイヤー血統メジロマックイーンに加え、マリー病により泣く泣く日本に売られたダンシングブレーヴや、BCクラシックを勝利しながら、種牡馬として見込まれず日本に売り飛ばされたサンデーサイレンスも入ったこの血統は正しく近代日本競馬の結晶というべきものだろう。


この勝利で、日本のダート競走の地位を大きく高めたとして、その年のNARグランプリ特別表彰馬を受賞。さらに日本のダート馬では初めてエクリプス賞にノミネートされた(芝馬では同年のラヴズオンリーユー、05年のシーザリオがノミネート)。

エクリプス賞自体は受賞を逃したものの、アメリカの競馬ファンがその年で「最も記憶に残った瞬間」を選ぶ『モーメント・オブ・ザ・イヤー』には、ラヴズオンリーユーと共に日本馬として初めて選出された。

その一方でJRA賞では部門賞はまだしもほぼ確実と見られていた特別賞の授与すらなく、その理由の一つが「ライトファンの認知度の低さ」とされたこともあり、ファンや複数の競馬関係者から批判や疑問が噴出する事態にもなった。



ヴィクトワールピサが勝ったドバイワールドカップはオールウェザー馬場だった。また「日本生産のアメリカ調教馬」であれば2018年にヨシダ(ハーツクライ産駒)がウッドワードステークスを勝っている。



2022年(6歳)

父に似て遅咲きである彼女だが、馬主であるキャロットファームの「牝馬は6歳春までに引退させる」という規定に則り、引退レースとしてサウジカップの招待を受諾した。国内での追い切りでは既に引退レースを終えたラヴズオンリーユーと併せ馬を行っている。

また、日本からは他にテーオーケインズが参戦を表明。海外の有力勢は昨年の覇者ミシュリフが連覇を掛けて参戦を表明した他、翌月にこの年のドバイWCを制することになるアメリカのカントリーグラマー、同じくアメリカの強豪ミッドナイトバーボン、南米最強馬アエロトレム、英チャンピオンS馬シリウェイなど世界各地の強豪が集まった。


レース当日はアンダーカードの競走にて日本勢が快勝。この勢いでメインレースであるサウジカップも日本勢が初の掲示板入りどころか勝ち負けもできるのではと期待が集まっていた。

しかし、マルシュロレーヌは不利な外枠を引いてしまった事もあり、位置取りこそ良かったものの直線で先行勢を捉え切る事が出来ずに6着。日本馬歴代最先着(当時)であったことやダートにおける牡牝の力の差を考えれば大健闘と言えるものであり、BC勝利がフロックでないことは示せたものの悔しい結果に終わった。

勝ち馬は地元サウジアラビアのエンブレムロード。有力馬と好調な日本勢を破ってのG1初勝利は話題を呼んだ。

一方、同じく日本勢のテーオーケインズは展開に恵まれず8着、前年覇者のミシュリフはなんと最下位に沈んでしまい、大荒れの結果となった。


引退後(6歳~)

サウジカップ前の併せ馬の際には今生の別れになるだろうと言われていたラヴズオンリーユーとは繁殖牧場でまさかの再会。ドレフォンを種付けして無事受胎し、2023年の初めごろに出産予定だという。


翌2023年、同厩舎の後輩パンサラッサが日本馬初のサウジカップ制覇を達成。そしてマルシュロレーヌと同父のウシュバテソーロがドバイワールドカップを圧勝、ダートでのドバイWC勝利は日本馬初となった。

パンサラッサはそれまではほぼ芝専門(一応師走Sに出たことはある)、ウシュバテソーロはマルシュロレーヌ同様に芝からダートへ転向した馬である。

さらに皐月賞馬ジオグリフまでもがサウジカップで4着に健闘し、海外ダートへの挑戦が活発になってきている。

マルシュロレーヌは競走馬としては一発屋だったかもしれない。しかしその一発は海外ダート戦線における飛躍の嚆矢となり、日本競馬に残した影響は大きいと言えるだろう。



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ステイゴールド

キョウエイマーチ

データ

データ

生年月日2016年5月4日
英字表記Marche Lorraine
性別
毛色鹿毛
オルフェーヴル
ヴィートマルシェ
母の父フレンチデピュティ
競走成績22戦9勝
主な勝利レースBCディスタフ('21)、他地方重賞4勝
獲得賞金中央6607万9000円+地方1億2720万円+海外164万アメリカドル
管理調教師矢作芳人(栗東)

概要

概要

父オルフェーヴルは7頭目の三冠馬であり、フォワ賞連覇、凱旋門賞も2年連続2着と海外実績も大きい名馬。種牡馬としても初年度からクラシックホースを出すなどG1勝ち馬を何頭も輩出している一方、産駒の勝ち上がり率は高くなく(特に2歳時の勝ち上がり率は上位種牡馬としては非常に低い)、当たり外れが大きい事で知られる。

母ヴィートマルシェは現役時代は1勝しか挙げられなかったが、その母はマイル路線で実績を挙げたキョウエイマーチ。ヴィートマルシェは産駒唯一の牝馬である。

名前の由来はフランスの行進曲から。また『マルシュ』は英語だと『マーチ』のため、母母であるキョウエイマーチから3世代に渡って名を受け継いでいる。

所属は矢作厩舎で、同厩のラヴズオンリーユーとは非常に仲が良い。

ちなみに血統を遡るとサンデーサイレンスメジロマックイーンディクタスノーザンテーストフレンチデピュティダンシングブレーヴといった日本や世界で活躍した名馬、名種牡馬が名を連ねている。


2019年(3歳)

2月3日、京都競馬場にてデビュー。このデビュー戦は惜しくも1/2馬身差の2着だった(このレースの6着馬ボッケリーニが後に中日新聞杯を勝利している)。

その後もオッズこそ1桁が続いたが勝ちきれず、未勝利を抜けたのは、未勝利戦も終わり間近の8月だった。その後、1勝クラスを勝利し、7戦2勝で3歳シーズンを終える。


2020年(4歳)

年内初戦の四国新聞杯で3勝目を挙げ、その後、福島牝馬ステークス、マーメイドステークスの重賞に挑むもいずれも着外。その後も勝てず、博多ステークスのクビ差2着を最後にダートに転向。すると、いきなり頭角を表し、ダート初戦の桜島ステークスを勝利、続くレディースプレリュードで3馬身差を付け、重賞初勝利。その後JBCレディスクラシックでGⅠ初挑戦(JBCレディスクラシック自体は日本独自の格付けのため、正式にはJpnⅠ)。単勝1.3倍の圧倒的1番人気に推されたが、3着に敗れた。

なお、後に矢作調教師より、博多Sを勝っていたらダートに転向しなかったかもしれないと語っている。


2021年(5歳)

年内初戦にTCK女王盃に出走。昨年のJBCレディスクラシック2着のマドラスチェックも出走していたが、これらを抑え、重賞2勝目を挙げる。その後のエンプレス杯でも人気に応え勝利。その後牡馬混合戦となる平安S、帝王賞に出走するも、勝つことは出来なかった。

その後牝馬路線に戻ると、ブリーダーズゴールドカップで重賞4勝目。改めて牝馬路線での力の強さを見せつけた。


ブリーダーズカップ・ディスタフ

2021年11月、事前にBC出走を決めていたラヴズオンリーユーの帯同馬として米国へ遠征し、ブリーダーズカップディスタフ(牝馬3歳以上ダート9F≒1810m)へ出走。


雨が多い日本ではダートコースに水はけの良い砂を使用しているが、アメリカのダートは赤土であり日本の砂よりもスピードが要求される。歴史的に芝の二軍扱いで生産・育成・レース編成上軽んじられてきた日本のダート馬には厳しい馬場と言える。またそもそもアメリカはダートがメインの本場であること、桁違いの馬産規模のおかげで層が厚いこともあり、日本のダート馬がアメリカダートG1を勝つなどまず無理と考えられていた。

しかもBCディスタフは世界最強女王決定戦と位置付けられており、BC創設以来存在する7レースのうちの1つという歴史的な格も併せ持つ、まさにアメリカ競馬の聖域中の聖域。事実これまで1回を除き、全てアメリカ調教馬が勝利してきたレースである(その1回も同じ北米のカナダ調教馬。それも牝馬なのに牡馬の三冠路線でカナダ三冠馬になり殿堂入りしたという超名牝)。

そのため、相手は実績十分。1番人気のレトルースカはこの年に入ってからGIを4勝含む重賞5連勝中。2番人気のマラサートはその年のケンタッキーオークスの勝ち馬だった。


それに対しマルシュロレーヌは、日本のダート牝馬では最強格だったものの重賞実績はJpnII止まり(日本ではダート重賞が少ないので仕方ない面もあるが)と国際的には重賞未勝利扱いだったため、11頭立ての9番人気と完全な穴馬扱い。また、海外メディア「レーシングポスト」が出したレーティングは99。10番目のブルーストライブが108である(最高値はレトルースカとプライベートミッションの118。ちなみに、部門こそ違えどラヴズオンリーユーも118)。

BCフィリー&メアターフと違い、BCディスタフは日本で馬券が販売されないこともあり、さらにラヴズオンリーユーはこの舞台でも勝ち負け可能のレベルということもあって、日本の競馬ファンからの注目はラヴズオンリーユーに集中していた。そのためBCディスタフへの注目度は低く、「ラヴズオンリーユーの付き添いが主目的で、ついでに出走するようなものだろう」と見る向きが大半であった。

さらにこの時期に海外遠征を行うということは、国内の牝馬ダートJpnIであるJBCレディスクラシックを諦めなくてはならない。この年のJBCレディスクラシックは距離さえ克服すれば十分勝算があると思われたため、一口馬主たちからは否定的な意見があった。何せBCは招待競争ではないため、遠征費用は馬主負担なのである。

しかもラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌの所有一口クラブのスタンスの違いから、本命であろうラヴズの一口馬主は一銭たりとも金銭負担がないのに付き添いだろうマルシュの一口馬主だけ金銭負担があると言う状態だったのだから尤もである。


しかし矢作調教師としては「アメリカのダートは芝も走れる馬なら勝てるのではないか」という考えがあった。博多ステークス2着など、芝でもある程度結果を出したマルシュロレーヌなら赤土ダートにも合うのでは、という見込みがあったのである。


レース当日、先に親友ラヴズオンリーユーがBCフィリー&メアターフを見事に勝利し、この時点で日本馬初のBC制覇という偉業を達成した。


そしてマルシュロレーヌの出番、BCディスタフ。

レースはプライベートミッションがハイペースで逃げ、1番人気レトルースカを筆頭に先行5頭がこれを追走。2マイルは21秒台、半マイル44秒台という異常なハイペースですっ飛んでいく先行勢。アメリカのダートはハイペースになりやすいが、この時は現地の実況者さえ驚愕するほどのハイペースだった。

第3コーナーでプライベートミッションが失速。レトルースカとシーデアズザデビルがこれを交わしにかかるが手応えがない。そこに第4コーナーで先行6頭は後続5頭に捕まった。

マルシュロレーヌはコーナーから仕掛け、ロイヤルフラッグと共に先行勢を外から追い抜き先頭に立つ。

マーフィー騎手としては「前を塞がれて見せ場なく終わるよりは」と考えての早仕掛けだったが、彼の位置取りと曾祖父譲りのコーナリングは絶妙であり、一緒に上がってきたロイヤルフラッグをコーナー出口で競り落とす。内から2番人気マラサートとダンバーロードが追い込みに入るが、この2頭は熱くなったのか馬体をぶつけあって競ってしまう。


その時実況が叫んだ。

「Marche Lorraine is trying for the Giant Upset!!(マルシュロレーヌが大番狂わせを狙っている!)」


ハイペースの中から早めに仕掛けたためさすがにバテてきたマルシュロレーヌだが、マーフィー騎手の檄に応えて押し切りにかかった。外からクレリエールと立て直したロイヤルフラッグが突っ込んでくるが届かない。そしてマラサートを競り落としたダンバーロードの猛追をハナ差で振り切り優勝。大番狂わせをやってのけ、現役ダート牝馬の世界一に君臨した


これによりマルシュロレーヌは自身初のGI優勝を果たすとともに、オルフェーヴル産駒のダートG1初制覇、日本調教馬として初の海外ダートGI制覇(※)を、ダートの本場である米国の最高峰レースで達成するという歴史的快挙を成し遂げた。

また上述の通りラヴズオンリーユーも勝ったため、2頭の所属する矢作厩舎は同日に2つの米GI、それも最高峰のブリーダーズカップを制するという偉業を達成した。


また2着のダンバーロードもG1馬にして前年の3着馬ながら8番人気と低評価であり、人気勢は2番人気のマラサートが3着に入るまでで軒並み轟沈。ブリーダーズカップ史上稀に見る大波乱のレースとなった。アメリカでは4連単や5連単の馬券も売られているが、その荒れ模様は4連単は20,000倍以上となり、5連単は的中者がいなかったほど


有力視された先行馬が異常なハイペースのたたき合いで沈んだ事、最後にハナ差の競り合いとなったダンバーロードが接触によるタイムロスを出していたという巡りの良さこそあったものの、そのハイペースにしっかりついていって最後まで譲らなかったことは間違いなく馬の実力を示すものであった。勝ち時計がレース歴代5位というハードなレースであったことを鑑みればマルシュロレーヌの能力は確かにアメリカダートの最高峰に挑戦する資格を有するものであり、そして勝ち切ったのだと言える。

また3着に入ったマラサートはこの翌年にBCディスタフを含むG1三勝をあげる活躍により、アメリカ版JRA賞にあたるエクリプス賞の最優秀古馬牝馬を受賞。このレースの評価を再度高めることとなった。


この勝利はGⅠ未勝利ながらトゥザヴィクトリーの帯同馬として遠征し、年度代表馬犇めくドバイSC(当時GⅡ)で体調不良もあり低人気ながら世界最強馬をハナ差で下した祖父を彷彿させるものがあった。

そして一族のお約束ディクタスアイを見せたり、誘導馬に毛づくろいしてやったり、派手な優勝レイに驚いてサイドステップで逃げたり(マーフィー騎手が振り落とされそうになったが、なんとか安全に降りた)と、コミカルな面も見せた。



クインナルビーにまで遡る牝系や日本が育んだステイヤー血統メジロマックイーンに加え、マリー病により泣く泣く日本に売られたダンシングブレーヴや、BCクラシックを勝利しながら、種牡馬として見込まれず日本に売り飛ばされたサンデーサイレンスも入ったこの血統は正しく近代日本競馬の結晶というべきものだろう。


この勝利で、日本のダート競走の地位を大きく高めたとして、その年のNARグランプリ特別表彰馬を受賞。さらに日本のダート馬では初めてエクリプス賞にノミネートされた(芝馬では同年のラヴズオンリーユー、05年のシーザリオがノミネート)。

エクリプス賞自体は受賞を逃したものの、アメリカの競馬ファンがその年で「最も記憶に残った瞬間」を選ぶ『モーメント・オブ・ザ・イヤー』には、ラヴズオンリーユーと共に日本馬として初めて選出された。

その一方でJRA賞では部門賞はまだしもほぼ確実と見られていた特別賞の授与すらなく、その理由の一つが「ライトファンの認知度の低さ」とされたこともあり、ファンや複数の競馬関係者から批判や疑問が噴出する事態にもなった。



ヴィクトワールピサが勝ったドバイワールドカップはオールウェザー馬場だった。また「日本生産のアメリカ調教馬」であれば2018年にヨシダ(ハーツクライ産駒)がウッドワードステークスを勝っている。



2022年(6歳)

父に似て遅咲きである彼女だが、馬主であるキャロットファームの「牝馬は6歳春までに引退させる」という規定に則り、引退レースとしてサウジカップの招待を受諾した。国内での追い切りでは既に引退レースを終えたラヴズオンリーユーと併せ馬を行っている。

また、日本からは他にテーオーケインズが参戦を表明。海外の有力勢は昨年の覇者ミシュリフが連覇を掛けて参戦を表明した他、翌月にこの年のドバイWCを制することになるアメリカのカントリーグラマー、同じくアメリカの強豪ミッドナイトバーボン、南米最強馬アエロトレム、英チャンピオンS馬シリウェイなど世界各地の強豪が集まった。


レース当日はアンダーカードの競走にて日本勢が快勝。この勢いでメインレースであるサウジカップも日本勢が初の掲示板入りどころか勝ち負けもできるのではと期待が集まっていた。

しかし、マルシュロレーヌは不利な外枠を引いてしまった事もあり、位置取りこそ良かったものの直線で先行勢を捉え切る事が出来ずに6着。日本馬歴代最先着(当時)であったことやダートにおける牡牝の力の差を考えれば大健闘と言えるものであり、BC勝利がフロックでないことは示せたものの悔しい結果に終わった。

勝ち馬は地元サウジアラビアのエンブレムロード。有力馬と好調な日本勢を破ってのG1初勝利は話題を呼んだ。

一方、同じく日本勢のテーオーケインズは展開に恵まれず8着、前年覇者のミシュリフはなんと最下位に沈んでしまい、大荒れの結果となった。


引退後(6歳~)

サウジカップ前の併せ馬の際には今生の別れになるだろうと言われていたラヴズオンリーユーとは繁殖牧場でまさかの再会。ドレフォンを種付けして無事受胎し、2023年の初めごろに出産予定だという。


翌2023年、同厩舎の後輩パンサラッサが日本馬初のサウジカップ制覇を達成。そしてマルシュロレーヌと同父のウシュバテソーロがドバイワールドカップを圧勝、ダートでのドバイWC勝利は日本馬初となった。

パンサラッサはそれまではほぼ芝専門(一応師走Sに出たことはある)、ウシュバテソーロはマルシュロレーヌ同様に芝からダートへ転向した馬である。

さらに皐月賞馬ジオグリフまでもがサウジカップで4着に健闘し、海外ダートへの挑戦が活発になってきている。

マルシュロレーヌは競走馬としては一発屋だったかもしれない。しかしその一発は海外ダート戦線における飛躍の嚆矢となり、日本競馬に残した影響は大きいと言えるだろう。



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性別
毛色鹿毛
オルフェーヴル
ヴィートマルシェ
母の父フレンチデピュティ
競走成績22戦9勝
主な勝利レースBCディスタフ('21)、他地方重賞4勝
獲得賞金中央6607万9000円+地方1億2720万円+海外164万アメリカドル
管理調教師矢作芳人(栗東)

概要

概要

父オルフェーヴルは7頭目の三冠馬であり、フォワ賞連覇、凱旋門賞も2年連続2着と海外実績も大きい名馬。種牡馬としても初年度からクラシックホースを出すなどG1勝ち馬を何頭も輩出している一方、産駒の勝ち上がり率は高くなく(特に2歳時の勝ち上がり率は上位種牡馬としては非常に低い)、当たり外れが大きい事で知られる。

母ヴィートマルシェは現役時代は1勝しか挙げられなかったが、その母はマイル路線で実績を挙げたキョウエイマーチ。ヴィートマルシェは産駒唯一の牝馬である。

名前の由来はフランスの行進曲から。また『マルシュ』は英語だと『マーチ』のため、母母であるキョウエイマーチから3世代に渡って名を受け継いでいる。

所属は矢作厩舎で、同厩のラヴズオンリーユーとは非常に仲が良い。

ちなみに血統を遡るとサンデーサイレンスメジロマックイーンディクタスノーザンテーストフレンチデピュティダンシングブレーヴといった日本や世界で活躍した名馬、名種牡馬が名を連ねている。


2019年(3歳)

2月3日、京都競馬場にてデビュー。このデビュー戦は惜しくも1/2馬身差の2着だった(このレースの6着馬ボッケリーニが後に中日新聞杯を勝利している)。

その後もオッズこそ1桁が続いたが勝ちきれず、未勝利を抜けたのは、未勝利戦も終わり間近の8月だった。その後、1勝クラスを勝利し、7戦2勝で3歳シーズンを終える。


2020年(4歳)

年内初戦の四国新聞杯で3勝目を挙げ、その後、福島牝馬ステークス、マーメイドステークスの重賞に挑むもいずれも着外。その後も勝てず、博多ステークスのクビ差2着を最後にダートに転向。すると、いきなり頭角を表し、ダート初戦の桜島ステークスを勝利、続くレディースプレリュードで3馬身差を付け、重賞初勝利。その後JBCレディスクラシックでGⅠ初挑戦(JBCレディスクラシック自体は日本独自の格付けのため、正式にはJpnⅠ)。単勝1.3倍の圧倒的1番人気に推されたが、3着に敗れた。

なお、後に矢作調教師より、博多Sを勝っていたらダートに転向しなかったかもしれないと語っている。


2021年(5歳)

年内初戦にTCK女王盃に出走。昨年のJBCレディスクラシック2着のマドラスチェックも出走していたが、これらを抑え、重賞2勝目を挙げる。その後のエンプレス杯でも人気に応え勝利。その後牡馬混合戦となる平安S、帝王賞に出走するも、勝つことは出来なかった。

その後牝馬路線に戻ると、ブリーダーズゴールドカップで重賞4勝目。改めて牝馬路線での力の強さを見せつけた。


ブリーダーズカップ・ディスタフ

2021年11月、事前にBC出走を決めていたラヴズオンリーユーの帯同馬として米国へ遠征し、ブリーダーズカップディスタフ(牝馬3歳以上ダート9F≒1810m)へ出走。


雨が多い日本ではダートコースに水はけの良い砂を使用しているが、アメリカのダートは赤土であり日本の砂よりもスピードが要求される。歴史的に芝の二軍扱いで生産・育成・レース編成上軽んじられてきた日本のダート馬には厳しい馬場と言える。またそもそもアメリカはダートがメインの本場であること、桁違いの馬産規模のおかげで層が厚いこともあり、日本のダート馬がアメリカダートG1を勝つなどまず無理と考えられていた。

しかもBCディスタフは世界最強女王決定戦と位置付けられており、BC創設以来存在する7レースのうちの1つという歴史的な格も併せ持つ、まさにアメリカ競馬の聖域中の聖域。事実これまで1回を除き、全てアメリカ調教馬が勝利してきたレースである(その1回も同じ北米のカナダ調教馬。それも牝馬なのに牡馬の三冠路線でカナダ三冠馬になり殿堂入りしたという超名牝)。

そのため、相手は実績十分。1番人気のレトルースカはこの年に入ってからGIを4勝含む重賞5連勝中。2番人気のマラサートはその年のケンタッキーオークスの勝ち馬だった。


それに対しマルシュロレーヌは、日本のダート牝馬では最強格だったものの重賞実績はJpnII止まり(日本ではダート重賞が少ないので仕方ない面もあるが)と国際的には重賞未勝利扱いだったため、11頭立ての9番人気と完全な穴馬扱い。また、海外メディア「レーシングポスト」が出したレーティングは99。10番目のブルーストライブが108である(最高値はレトルースカとプライベートミッションの118。ちなみに、部門こそ違えどラヴズオンリーユーも118)。

BCフィリー&メアターフと違い、BCディスタフは日本で馬券が販売されないこともあり、さらにラヴズオンリーユーはこの舞台でも勝ち負け可能のレベルということもあって、日本の競馬ファンからの注目はラヴズオンリーユーに集中していた。そのためBCディスタフへの注目度は低く、「ラヴズオンリーユーの付き添いが主目的で、ついでに出走するようなものだろう」と見る向きが大半であった。

さらにこの時期に海外遠征を行うということは、国内の牝馬ダートJpnIであるJBCレディスクラシックを諦めなくてはならない。この年のJBCレディスクラシックは距離さえ克服すれば十分勝算があると思われたため、一口馬主たちからは否定的な意見があった。何せBCは招待競争ではないため、遠征費用は馬主負担なのである。

しかもラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌの所有一口クラブのスタンスの違いから、本命であろうラヴズの一口馬主は一銭たりとも金銭負担がないのに付き添いだろうマルシュの一口馬主だけ金銭負担があると言う状態だったのだから尤もである。


しかし矢作調教師としては「アメリカのダートは芝も走れる馬なら勝てるのではないか」という考えがあった。博多ステークス2着など、芝でもある程度結果を出したマルシュロレーヌなら赤土ダートにも合うのでは、という見込みがあったのである。


レース当日、先に親友ラヴズオンリーユーがBCフィリー&メアターフを見事に勝利し、この時点で日本馬初のBC制覇という偉業を達成した。


そしてマルシュロレーヌの出番、BCディスタフ。

レースはプライベートミッションがハイペースで逃げ、1番人気レトルースカを筆頭に先行5頭がこれを追走。2マイルは21秒台、半マイル44秒台という異常なハイペースですっ飛んでいく先行勢。アメリカのダートはハイペースになりやすいが、この時は現地の実況者さえ驚愕するほどのハイペースだった。

第3コーナーでプライベートミッションが失速。レトルースカとシーデアズザデビルがこれを交わしにかかるが手応えがない。そこに第4コーナーで先行6頭は後続5頭に捕まった。

マルシュロレーヌはコーナーから仕掛け、ロイヤルフラッグと共に先行勢を外から追い抜き先頭に立つ。

マーフィー騎手としては「前を塞がれて見せ場なく終わるよりは」と考えての早仕掛けだったが、彼の位置取りと曾祖父譲りのコーナリングは絶妙であり、一緒に上がってきたロイヤルフラッグをコーナー出口で競り落とす。内から2番人気マラサートとダンバーロードが追い込みに入るが、この2頭は熱くなったのか馬体をぶつけあって競ってしまう。


その時実況が叫んだ。

「Marche Lorraine is trying for the Giant Upset!!(マルシュロレーヌが大番狂わせを狙っている!)」


ハイペースの中から早めに仕掛けたためさすがにバテてきたマルシュロレーヌだが、マーフィー騎手の檄に応えて押し切りにかかった。外からクレリエールと立て直したロイヤルフラッグが突っ込んでくるが届かない。そしてマラサートを競り落としたダンバーロードの猛追をハナ差で振り切り優勝。大番狂わせをやってのけ、現役ダート牝馬の世界一に君臨した


これによりマルシュロレーヌは自身初のGI優勝を果たすとともに、オルフェーヴル産駒のダートG1初制覇、日本調教馬として初の海外ダートGI制覇(※)を、ダートの本場である米国の最高峰レースで達成するという歴史的快挙を成し遂げた。

また上述の通りラヴズオンリーユーも勝ったため、2頭の所属する矢作厩舎は同日に2つの米GI、それも最高峰のブリーダーズカップを制するという偉業を達成した。


また2着のダンバーロードもG1馬にして前年の3着馬ながら8番人気と低評価であり、人気勢は2番人気のマラサートが3着に入るまでで軒並み轟沈。ブリーダーズカップ史上稀に見る大波乱のレースとなった。アメリカでは4連単や5連単の馬券も売られているが、その荒れ模様は4連単は20,000倍以上となり、5連単は的中者がいなかったほど


有力視された先行馬が異常なハイペースのたたき合いで沈んだ事、最後にハナ差の競り合いとなったダンバーロードが接触によるタイムロスを出していたという巡りの良さこそあったものの、そのハイペースにしっかりついていって最後まで譲らなかったことは間違いなく馬の実力を示すものであった。勝ち時計がレース歴代5位というハードなレースであったことを鑑みればマルシュロレーヌの能力は確かにアメリカダートの最高峰に挑戦する資格を有するものであり、そして勝ち切ったのだと言える。

また3着に入ったマラサートはこの翌年にBCディスタフを含むG1三勝をあげる活躍により、アメリカ版JRA賞にあたるエクリプス賞の最優秀古馬牝馬を受賞。このレースの評価を再度高めることとなった。


この勝利はGⅠ未勝利ながらトゥザヴィクトリーの帯同馬として遠征し、年度代表馬犇めくドバイSC(当時GⅡ)で体調不良もあり低人気ながら世界最強馬をハナ差で下した祖父を彷彿させるものがあった。

そして一族のお約束ディクタスアイを見せたり、誘導馬に毛づくろいしてやったり、派手な優勝レイに驚いてサイドステップで逃げたり(マーフィー騎手が振り落とされそうになったが、なんとか安全に降りた)と、コミカルな面も見せた。



クインナルビーにまで遡る牝系や日本が育んだステイヤー血統メジロマックイーンに加え、マリー病により泣く泣く日本に売られたダンシングブレーヴや、BCクラシックを勝利しながら、種牡馬として見込まれず日本に売り飛ばされたサンデーサイレンスも入ったこの血統は正しく近代日本競馬の結晶というべきものだろう。


この勝利で、日本のダート競走の地位を大きく高めたとして、その年のNARグランプリ特別表彰馬を受賞。さらに日本のダート馬では初めてエクリプス賞にノミネートされた(芝馬では同年のラヴズオンリーユー、05年のシーザリオがノミネート)。

エクリプス賞自体は受賞を逃したものの、アメリカの競馬ファンがその年で「最も記憶に残った瞬間」を選ぶ『モーメント・オブ・ザ・イヤー』には、ラヴズオンリーユーと共に日本馬として初めて選出された。

その一方でJRA賞では部門賞はまだしもほぼ確実と見られていた特別賞の授与すらなく、その理由の一つが「ライトファンの認知度の低さ」とされたこともあり、ファンや複数の競馬関係者から批判や疑問が噴出する事態にもなった。



ヴィクトワールピサが勝ったドバイワールドカップはオールウェザー馬場だった。また「日本生産のアメリカ調教馬」であれば2018年にヨシダ(ハーツクライ産駒)がウッドワードステークスを勝っている。



2022年(6歳)

父に似て遅咲きである彼女だが、馬主であるキャロットファームの「牝馬は6歳春までに引退させる」という規定に則り、引退レースとしてサウジカップの招待を受諾した。国内での追い切りでは既に引退レースを終えたラヴズオンリーユーと併せ馬を行っている。

また、日本からは他にテーオーケインズが参戦を表明。海外の有力勢は昨年の覇者ミシュリフが連覇を掛けて参戦を表明した他、翌月にこの年のドバイWCを制することになるアメリカのカントリーグラマー、同じくアメリカの強豪ミッドナイトバーボン、南米最強馬アエロトレム、英チャンピオンS馬シリウェイなど世界各地の強豪が集まった。


レース当日はアンダーカードの競走にて日本勢が快勝。この勢いでメインレースであるサウジカップも日本勢が初の掲示板入りどころか勝ち負けもできるのではと期待が集まっていた。

しかし、マルシュロレーヌは不利な外枠を引いてしまった事もあり、位置取りこそ良かったものの直線で先行勢を捉え切る事が出来ずに6着。日本馬歴代最先着(当時)であったことやダートにおける牡牝の力の差を考えれば大健闘と言えるものであり、BC勝利がフロックでないことは示せたものの悔しい結果に終わった。

勝ち馬は地元サウジアラビアのエンブレムロード。有力馬と好調な日本勢を破ってのG1初勝利は話題を呼んだ。

一方、同じく日本勢のテーオーケインズは展開に恵まれず8着、前年覇者のミシュリフはなんと最下位に沈んでしまい、大荒れの結果となった。


引退後(6歳~)

サウジカップ前の併せ馬の際には今生の別れになるだろうと言われていたラヴズオンリーユーとは繁殖牧場でまさかの再会。ドレフォンを種付けして無事受胎し、2023年の初めごろに出産予定だという。


翌2023年、同厩舎の後輩パンサラッサが日本馬初のサウジカップ制覇を達成。そしてマルシュロレーヌと同父のウシュバテソーロがドバイワールドカップを圧勝、ダートでのドバイWC勝利は日本馬初となった。

パンサラッサはそれまではほぼ芝専門(一応師走Sに出たことはある)、ウシュバテソーロはマルシュロレーヌ同様に芝からダートへ転向した馬である。

さらに皐月賞馬ジオグリフまでもがサウジカップで4着に健闘し、海外ダートへの挑戦が活発になってきている。

マルシュロレーヌは競走馬としては一発屋だったかもしれない。しかしその一発は海外ダート戦線における飛躍の嚆矢となり、日本競馬に残した影響は大きいと言えるだろう。



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キョウエイマーチ

データ

データ

生年月日2016年5月4日
英字表記Marche Lorraine
性別
毛色鹿毛
オルフェーヴル
ヴィートマルシェ
母の父フレンチデピュティ
競走成績22戦9勝
主な勝利レースBCディスタフ('21)、他地方重賞4勝
獲得賞金中央6607万9000円+地方1億2720万円+海外164万アメリカドル
管理調教師矢作芳人(栗東)

概要

概要

父オルフェーヴルは7頭目の三冠馬であり、フォワ賞連覇、凱旋門賞も2年連続2着と海外実績も大きい名馬。種牡馬としても初年度からクラシックホースを出すなどG1勝ち馬を何頭も輩出している一方、産駒の勝ち上がり率は高くなく(特に2歳時の勝ち上がり率は上位種牡馬としては非常に低い)、当たり外れが大きい事で知られる。

母ヴィートマルシェは現役時代は1勝しか挙げられなかったが、その母はマイル路線で実績を挙げたキョウエイマーチ。ヴィートマルシェは産駒唯一の牝馬である。

名前の由来はフランスの行進曲から。また『マルシュ』は英語だと『マーチ』のため、母母であるキョウエイマーチから3世代に渡って名を受け継いでいる。

所属は矢作厩舎で、同厩のラヴズオンリーユーとは非常に仲が良い。

ちなみに血統を遡るとサンデーサイレンスメジロマックイーンディクタスノーザンテーストフレンチデピュティダンシングブレーヴといった日本や世界で活躍した名馬、名種牡馬が名を連ねている。


2019年(3歳)

2月3日、京都競馬場にてデビュー。このデビュー戦は惜しくも1/2馬身差の2着だった(このレースの6着馬ボッケリーニが後に中日新聞杯を勝利している)。

その後もオッズこそ1桁が続いたが勝ちきれず、未勝利を抜けたのは、未勝利戦も終わり間近の8月だった。その後、1勝クラスを勝利し、7戦2勝で3歳シーズンを終える。


2020年(4歳)

年内初戦の四国新聞杯で3勝目を挙げ、その後、福島牝馬ステークス、マーメイドステークスの重賞に挑むもいずれも着外。その後も勝てず、博多ステークスのクビ差2着を最後にダートに転向。すると、いきなり頭角を表し、ダート初戦の桜島ステークスを勝利、続くレディースプレリュードで3馬身差を付け、重賞初勝利。その後JBCレディスクラシックでGⅠ初挑戦(JBCレディスクラシック自体は日本独自の格付けのため、正式にはJpnⅠ)。単勝1.3倍の圧倒的1番人気に推されたが、3着に敗れた。

なお、後に矢作調教師より、博多Sを勝っていたらダートに転向しなかったかもしれないと語っている。


2021年(5歳)

年内初戦にTCK女王盃に出走。昨年のJBCレディスクラシック2着のマドラスチェックも出走していたが、これらを抑え、重賞2勝目を挙げる。その後のエンプレス杯でも人気に応え勝利。その後牡馬混合戦となる平安S、帝王賞に出走するも、勝つことは出来なかった。

その後牝馬路線に戻ると、ブリーダーズゴールドカップで重賞4勝目。改めて牝馬路線での力の強さを見せつけた。


ブリーダーズカップ・ディスタフ

2021年11月、事前にBC出走を決めていたラヴズオンリーユーの帯同馬として米国へ遠征し、ブリーダーズカップディスタフ(牝馬3歳以上ダート9F≒1810m)へ出走。


雨が多い日本ではダートコースに水はけの良い砂を使用しているが、アメリカのダートは赤土であり日本の砂よりもスピードが要求される。歴史的に芝の二軍扱いで生産・育成・レース編成上軽んじられてきた日本のダート馬には厳しい馬場と言える。またそもそもアメリカはダートがメインの本場であること、桁違いの馬産規模のおかげで層が厚いこともあり、日本のダート馬がアメリカダートG1を勝つなどまず無理と考えられていた。

しかもBCディスタフは世界最強女王決定戦と位置付けられており、BC創設以来存在する7レースのうちの1つという歴史的な格も併せ持つ、まさにアメリカ競馬の聖域中の聖域。事実これまで1回を除き、全てアメリカ調教馬が勝利してきたレースである(その1回も同じ北米のカナダ調教馬。それも牝馬なのに牡馬の三冠路線でカナダ三冠馬になり殿堂入りしたという超名牝)。

そのため、相手は実績十分。1番人気のレトルースカはこの年に入ってからGIを4勝含む重賞5連勝中。2番人気のマラサートはその年のケンタッキーオークスの勝ち馬だった。


それに対しマルシュロレーヌは、日本のダート牝馬では最強格だったものの重賞実績はJpnII止まり(日本ではダート重賞が少ないので仕方ない面もあるが)と国際的には重賞未勝利扱いだったため、11頭立ての9番人気と完全な穴馬扱い。また、海外メディア「レーシングポスト」が出したレーティングは99。10番目のブルーストライブが108である(最高値はレトルースカとプライベートミッションの118。ちなみに、部門こそ違えどラヴズオンリーユーも118)。

BCフィリー&メアターフと違い、BCディスタフは日本で馬券が販売されないこともあり、さらにラヴズオンリーユーはこの舞台でも勝ち負け可能のレベルということもあって、日本の競馬ファンからの注目はラヴズオンリーユーに集中していた。そのためBCディスタフへの注目度は低く、「ラヴズオンリーユーの付き添いが主目的で、ついでに出走するようなものだろう」と見る向きが大半であった。

さらにこの時期に海外遠征を行うということは、国内の牝馬ダートJpnIであるJBCレディスクラシックを諦めなくてはならない。この年のJBCレディスクラシックは距離さえ克服すれば十分勝算があると思われたため、一口馬主たちからは否定的な意見があった。何せBCは招待競争ではないため、遠征費用は馬主負担なのである。

しかもラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌの所有一口クラブのスタンスの違いから、本命であろうラヴズの一口馬主は一銭たりとも金銭負担がないのに付き添いだろうマルシュの一口馬主だけ金銭負担があると言う状態だったのだから尤もである。


しかし矢作調教師としては「アメリカのダートは芝も走れる馬なら勝てるのではないか」という考えがあった。博多ステークス2着など、芝でもある程度結果を出したマルシュロレーヌなら赤土ダートにも合うのでは、という見込みがあったのである。


レース当日、先に親友ラヴズオンリーユーがBCフィリー&メアターフを見事に勝利し、この時点で日本馬初のBC制覇という偉業を達成した。


そしてマルシュロレーヌの出番、BCディスタフ。

レースはプライベートミッションがハイペースで逃げ、1番人気レトルースカを筆頭に先行5頭がこれを追走。2マイルは21秒台、半マイル44秒台という異常なハイペースですっ飛んでいく先行勢。アメリカのダートはハイペースになりやすいが、この時は現地の実況者さえ驚愕するほどのハイペースだった。

第3コーナーでプライベートミッションが失速。レトルースカとシーデアズザデビルがこれを交わしにかかるが手応えがない。そこに第4コーナーで先行6頭は後続5頭に捕まった。

マルシュロレーヌはコーナーから仕掛け、ロイヤルフラッグと共に先行勢を外から追い抜き先頭に立つ。

マーフィー騎手としては「前を塞がれて見せ場なく終わるよりは」と考えての早仕掛けだったが、彼の位置取りと曾祖父譲りのコーナリングは絶妙であり、一緒に上がってきたロイヤルフラッグをコーナー出口で競り落とす。内から2番人気マラサートとダンバーロードが追い込みに入るが、この2頭は熱くなったのか馬体をぶつけあって競ってしまう。


その時実況が叫んだ。

「Marche Lorraine is trying for the Giant Upset!!(マルシュロレーヌが大番狂わせを狙っている!)」


ハイペースの中から早めに仕掛けたためさすがにバテてきたマルシュロレーヌだが、マーフィー騎手の檄に応えて押し切りにかかった。外からクレリエールと立て直したロイヤルフラッグが突っ込んでくるが届かない。そしてマラサートを競り落としたダンバーロードの猛追をハナ差で振り切り優勝。大番狂わせをやってのけ、現役ダート牝馬の世界一に君臨した


これによりマルシュロレーヌは自身初のGI優勝を果たすとともに、オルフェーヴル産駒のダートG1初制覇、日本調教馬として初の海外ダートGI制覇(※)を、ダートの本場である米国の最高峰レースで達成するという歴史的快挙を成し遂げた。

また上述の通りラヴズオンリーユーも勝ったため、2頭の所属する矢作厩舎は同日に2つの米GI、それも最高峰のブリーダーズカップを制するという偉業を達成した。


また2着のダンバーロードもG1馬にして前年の3着馬ながら8番人気と低評価であり、人気勢は2番人気のマラサートが3着に入るまでで軒並み轟沈。ブリーダーズカップ史上稀に見る大波乱のレースとなった。アメリカでは4連単や5連単の馬券も売られているが、その荒れ模様は4連単は20,000倍以上となり、5連単は的中者がいなかったほど


有力視された先行馬が異常なハイペースのたたき合いで沈んだ事、最後にハナ差の競り合いとなったダンバーロードが接触によるタイムロスを出していたという巡りの良さこそあったものの、そのハイペースにしっかりついていって最後まで譲らなかったことは間違いなく馬の実力を示すものであった。勝ち時計がレース歴代5位というハードなレースであったことを鑑みればマルシュロレーヌの能力は確かにアメリカダートの最高峰に挑戦する資格を有するものであり、そして勝ち切ったのだと言える。

また3着に入ったマラサートはこの翌年にBCディスタフを含むG1三勝をあげる活躍により、アメリカ版JRA賞にあたるエクリプス賞の最優秀古馬牝馬を受賞。このレースの評価を再度高めることとなった。


この勝利はGⅠ未勝利ながらトゥザヴィクトリーの帯同馬として遠征し、年度代表馬犇めくドバイSC(当時GⅡ)で体調不良もあり低人気ながら世界最強馬をハナ差で下した祖父を彷彿させるものがあった。

そして一族のお約束ディクタスアイを見せたり、誘導馬に毛づくろいしてやったり、派手な優勝レイに驚いてサイドステップで逃げたり(マーフィー騎手が振り落とされそうになったが、なんとか安全に降りた)と、コミカルな面も見せた。



クインナルビーにまで遡る牝系や日本が育んだステイヤー血統メジロマックイーンに加え、マリー病により泣く泣く日本に売られたダンシングブレーヴや、BCクラシックを勝利しながら、種牡馬として見込まれず日本に売り飛ばされたサンデーサイレンスも入ったこの血統は正しく近代日本競馬の結晶というべきものだろう。


この勝利で、日本のダート競走の地位を大きく高めたとして、その年のNARグランプリ特別表彰馬を受賞。さらに日本のダート馬では初めてエクリプス賞にノミネートされた(芝馬では同年のラヴズオンリーユー、05年のシーザリオがノミネート)。

エクリプス賞自体は受賞を逃したものの、アメリカの競馬ファンがその年で「最も記憶に残った瞬間」を選ぶ『モーメント・オブ・ザ・イヤー』には、ラヴズオンリーユーと共に日本馬として初めて選出された。

その一方でJRA賞では部門賞はまだしもほぼ確実と見られていた特別賞の授与すらなく、その理由の一つが「ライトファンの認知度の低さ」とされたこともあり、ファンや複数の競馬関係者から批判や疑問が噴出する事態にもなった。



ヴィクトワールピサが勝ったドバイワールドカップはオールウェザー馬場だった。また「日本生産のアメリカ調教馬」であれば2018年にヨシダ(ハーツクライ産駒)がウッドワードステークスを勝っている。



2022年(6歳)

父に似て遅咲きである彼女だが、馬主であるキャロットファームの「牝馬は6歳春までに引退させる」という規定に則り、引退レースとしてサウジカップの招待を受諾した。国内での追い切りでは既に引退レースを終えたラヴズオンリーユーと併せ馬を行っている。

また、日本からは他にテーオーケインズが参戦を表明。海外の有力勢は昨年の覇者ミシュリフが連覇を掛けて参戦を表明した他、翌月にこの年のドバイWCを制することになるアメリカのカントリーグラマー、同じくアメリカの強豪ミッドナイトバーボン、南米最強馬アエロトレム、英チャンピオンS馬シリウェイなど世界各地の強豪が集まった。


レース当日はアンダーカードの競走にて日本勢が快勝。この勢いでメインレースであるサウジカップも日本勢が初の掲示板入りどころか勝ち負けもできるのではと期待が集まっていた。

しかし、マルシュロレーヌは不利な外枠を引いてしまった事もあり、位置取りこそ良かったものの直線で先行勢を捉え切る事が出来ずに6着。日本馬歴代最先着(当時)であったことやダートにおける牡牝の力の差を考えれば大健闘と言えるものであり、BC勝利がフロックでないことは示せたものの悔しい結果に終わった。

勝ち馬は地元サウジアラビアのエンブレムロード。有力馬と好調な日本勢を破ってのG1初勝利は話題を呼んだ。

一方、同じく日本勢のテーオーケインズは展開に恵まれず8着、前年覇者のミシュリフはなんと最下位に沈んでしまい、大荒れの結果となった。


引退後(6歳~)

サウジカップ前の併せ馬の際には今生の別れになるだろうと言われていたラヴズオンリーユーとは繁殖牧場でまさかの再会。ドレフォンを種付けして無事受胎し、2023年の初めごろに出産予定だという。


翌2023年、同厩舎の後輩パンサラッサが日本馬初のサウジカップ制覇を達成。そしてマルシュロレーヌと同父のウシュバテソーロがドバイワールドカップを圧勝、ダートでのドバイWC勝利は日本馬初となった。

パンサラッサはそれまではほぼ芝専門(一応師走Sに出たことはある)、ウシュバテソーロはマルシュロレーヌ同様に芝からダートへ転向した馬である。

さらに皐月賞馬ジオグリフまでもがサウジカップで4着に健闘し、海外ダートへの挑戦が活発になってきている。

マルシュロレーヌは競走馬としては一発屋だったかもしれない。しかしその一発は海外ダート戦線における飛躍の嚆矢となり、日本競馬に残した影響は大きいと言えるだろう。



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