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IH

あいえいちまたはでんじゆうどうかねつ

IH(Induction Heating=電磁誘導加熱)とは、本来アラゴーの円盤などで知られる回転磁界による発熱現象を指すが、21世紀前半の現代において、通常は調理器具(コンロや炊飯器)をさしている場合が多い。
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前史

電源に繋いで調理器具を使うという点においては、電熱線(裸線のニクロムまたはカンタル線や絶縁されたシーズ線)を使った電気コンロがある。

しかし、慣れの問題という部分もあるものの、立ち上がりの悪さや蓄熱性の極端な高さ、そして何より国によっては電気代がバカ高いということが、余程の条件でないと電気式のコンロを導入するということの動機にならなかった。

ヨーロッパは電気コンロ化が進んだが、それは石やレンガづくりで中層以上の既存建物に後付で太いガス管を引き回すのは大変だし、ガスの爆発性を嫌った部分もあるだろう。アメリカは電気代が安いので、設備費が安いほうが結局得ということになる。

また気候の関係で、西洋料理は比較的低容量な熱源で足りた(中華料理のような超高カロリー熱源を短時間使うというものではない)。薪焚きの調理用暖炉からいきなり電気コンロへ移行した家庭も珍しくない。


しかし日本の場合、電気代は所得に比べて高い上、長らく供給量すらギリギリの時代が長く、一般家庭で電熱式のコンロを使い慣れている人は少なかった。

古い家屋は大抵木造で改造しやすいし、欧米並みの大きさの集合住宅は戦後1960年頃以降の鉄筋コンクリート造のものが殆どなので、ガスの配管も建築時にしてあった。

使うのは、防火上要求される場合が大抵だった。そのため、火気が原則禁止の地下2階以下の地下室船舶食堂車などでは使われたが、家庭では皆がガスコンロの迅速なレスポンスに慣れすぎて、電気を家庭調理熱源のメインにするという発想は平成になる頃までほぼなかった。


IHの登場

概念図は20世紀初頭に公表された。当時は変圧器のような鉄心に巻いたコイルと、その上にヤカンが載っている状態が図示されていた。

この時点では、「不可能ではない」という程度で、効率はむしろ電熱線のほうが遥かに高く、家庭用として実用になるのかどうか眉唾レベルであった。最初に現物が作られたのは1950年代~70年頃である。


普及

日本での普及は阪神淡路大震災のあとで、ガス管の復旧(当然ながら都市部ではガス代の安い都市ガスメタンが主流)に相当の時間を要したのに対し、電気は早く復旧したことから調理器具の熱源として電気が普通に使われるようになった。

また、これまで唯一電化にしくかったコンロを電化することで、火災の可能性が大幅に減るという利点がある。これも地震大国・木造大国にはなおさらである。


その間に、当初はあまり効率が高くなかった原理図同然の雛形から、鍋は選ぶものの70~80%台という高効率の加熱と、ガス同様の火加減のレスポンスを有するまでに改良された。


日本の場合、電気代が高かったのだが、効率の改善と割引料金プランの設定、そして建築費もガス管を通さなくて済む分工費が下がること、裸火や数百℃超の発熱体を露出しなくて済む、掃除がしやすい、部屋がガスコンロほど熱くならないなどということが受けて2000年頃から相当程度普及した。

また日本の電力会社は「総括原価方式」という一種の丼勘定を使っていたため、コストをかければかけるほど料金設定を高くとれ、売上も上がることからどんどん施主に勧めていった背景がある。


弱ったのが死活問題となったガス会社。東日本大震災・節電ブームの際にはここぞとばかりに反応した。だが仮に子供が火を使えなくなっても、電力会社が悪の秘密結社だったとしても、一部の料理が作れなくなったとしても、「家が火事になるよりマシ」と言われたらなんとも言い返せないのが辛いところだった。その後電力自由化に伴い、ガス会社が電力販売もするという呉越同舟におさまった。


構造

IHという略語は大抵、IHコンロかIH炊飯器を指す。

どちらも鍋への加熱部分には別段電熱線のたぐいはなく、代わりにモーターラジオチューナーのような電磁コイルが入っている。

ここに高周波数の電流が流れて鍋底(ものによっては鍋肌にも)に回転磁界を作ることで磁性体(当初)の鍋の中に直に渦電流を通し、鍋自体にジュール熱を発生させる。

このために可聴域を超えた高い周波数の電流を作るインバーターが必要であり、電車電球形蛍光灯などで使う交流制御と同じルーツの技術が用いられる。

但し周波数帯は違い、蛍光灯や調理器具だと数十KHzなのに電車は最高で100Hz程度。

なおロースターはIHではなく、大抵シーズ線になっている。これは魚(のことが多いが食材)に近いところに磁性体の板を当てて電磁誘導加熱しても良さそうだが、多分まだコストが釣り合わないのであろう。


火力

電源電圧が200Vで設定されている台所用コンロは1口の出力2~3kWと大きめに取られているが、鍋をつつくために用意されるような可搬式の小型のコンロはIHといえど出力は1.4kW程度にとどまり、シーズ線式の電気コンロの1.2kWを若干上回るだけである。

これは家庭内のコンセントの殆どが100Vで、アース線もないタイプだと15Aが通電量の上限のため(アース線必須形でも20Aにとどまる)。ヨーロッパなどの家庭内配電電圧が200V超えの国では、日本で1400Wクラスとして売られているタイプのIHコンロでも2kWの容量がある。

これを利用して高速調理を実演しようとした番組で、加熱の遅さに出演者がイライラしたのは、コンロの容量を考えるとやむを得ない。

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