「さっきからうるさいよ。キミも消してあげようか?」
演:沖田絃乃
変身する仮面ライダー
概要
特撮番組『仮面ライダーガッチャード』の登場人物。
錬金術を悪用する錬金術師の集団《冥黒の三姉妹》の1人にして、その長女。
三姉妹の中で最も若く見え、金の装飾があしらわれた黒いドレスに身を包んだショートヘアーの幼い少女の姿をしているが、強力な錬金術を操る。
なおこの幼女姿はあくまでも「錬金人形」としての仕様であり、本編時間軸の10年前から外見は変わっておらず、仮面ライダードレッド壱式への変身時には、サイズは一時的にドレッド壱式のスペックである2m超まで伸びる。
ケミーを「奇跡の存在」と称しているものの、実際は負の側面とも呼べるマルガムの力に魅了されている節があり、ケミーの持つ力を最大限かつ自在に操れるガッチャードライバーの強奪を目論む。
理由は不明だが、自分達の計画を邪魔した九堂風雅の娘である九堂りんねを執拗に狙っており、度々「遊び」と称して彼女の前に現れている。第11話ではわざわざ敵の本丸である錬金アカデミーに殴り込みをかけるような行動をしており、更にはりんねを前々から知っているような発言をするなど行動には謎が多い。
駆け付けたヴァルバラドの妨害を適当にあしらい、「これから起こることは全部君のせいだよ」と不穏な言葉を残して立ち去った。
首領格でもあるグリオンには一際強い忠誠を誓っており、当のグリオンも他の姉妹とは違って「君が傷つくのは本意ではない」と話したりと態度が異なるのだが……?
能力
作中では呪文を唱えずに周囲の土や石を使って巨大な壁を瞬時に錬成し、ケミーの攻撃を難なく防いだり、周囲にいる一般人を洗脳するなど、超常的な能力を持いる。
この洗脳はかなり精度が高く、相手の意識を奪わずに身体だけを操れるようで、第12話ではかなり悪質な方法でガッチャード達を苦しめた。
第9話以降からは、これまで集めた悪意のエネルギーを使って謎のドライバーを作り出すなど技術者としての才覚も併せ持つ。
第11話のヴァルバラド戦では、錬金アカデミーの錬金術師達が錬金術を行使するために使っている指輪に該当する金色の結晶のような物体に息を吹き掛けただけで近くにあるベンチを剣に錬成させてからヴァルバラドに向けて放っており、彼の攻撃も砂の如く楽にかわしている。
本気を出せば人を塵の一欠片も残さず殺害する芸当すら可能であり、アトロポスの錬金術によって人間が黒ずみながら分解されていく様子も描写されている。尚、劇中では人間を本人の意思に関係なく肉体を操作する芸当も見せており、これらの術の使用時には結晶ではなく、彼女自身の目が赤く発光する。
ただし、これらの強力な錬金術は流石に誰にも彼にも使える訳ではないらしく、ガッチャードやヴァルバラドなどの戦士には一度も使用してはない。加えてこの目が発光するタイプの術はそれなりに本人が集中しなければ維持できないため、第15話ではりんねにとある点を指摘されて激昂した瞬間拘束が解けてしまった。
また、錬金術抜きで攻撃を受ければ普通に怪我は負うらしく、第19話ではケルベロスマルガムによってパンパイプごと攻撃を喰らい右腕を火傷してしまった(それでもマルガムの攻撃を受けてこの程度なので、並の人間に比べれば遥かに丈夫な身体なのだが)。
この負傷で地面に右腕をついた際には金属音のような音がしており、走り方も重い右腕に身体を引っ張られるようなものとなっていたが、第32話にて冥黒の三姉妹はグリオンの禁忌の錬金術によって創造された「ホムンクルス(人造人間)」であることが判明し、ある程度その背景が明かされることとなった。
性格・人物像
三姉妹の実質的なトップであり、見た目不相応の落ち着いた言動をしている。中性的な口調をしており、一人称は「僕」。また、標的を逃がしたとしても「問題ない」と顔色をほぼ変えないなど、性格は無機質かつ冷静そのもの。
基本的に他人に対しては「冷酷」そのものであり、『仲間や家族』の概念に対し「曖昧な関係」「価値がない」と切り捨てている。
錬金連合を裏切り自勢力にブランクケミーカードや、情報を提供した協力者も特に何の躊躇もなく殺害した。
一応それなりにお互いの身体を心配し合っているクロトーやラケシスと比べると長女の立場ながら姉妹への関心もかなり薄く、彼女達が何かしら負傷した際にも心が動きはしない。グリオンによってラケシスが洗脳を受けた際にも、「子供ならプレゼントは喜ぶべき」と軽く流している。
反面、自身をこの世に生み出したグリオンに対しては「父親」と呼んでいるが、彼女の場合は普通の親子とかけ離れた異常とも言える忠誠心を持っており、その執着の強さは姉妹であるラケシスからも「アトロポスは私達とは違う」とまで断言される程病的な域にまで達している。
第8話辺りからりんねと接触を試みており、1度もその場にいた一般人を強制的に操った姿から「一般人ではなく攻撃するなら錬金術師を狙え」発言を聞くなり洗脳を解き、今度はりんねの周囲にいる仲間の錬金アカデミーのメンバーなどを重点的に攻撃する方向の作戦を行う悪辣な作戦を建てている。
意外にも仮面ライダー達に感情を向けているクロトーやラケシスとは異なり、マルガムなどは単なるデータ収集用の駒としか思っていないためか、あまり関心はない様である(そもそも現時点ではほぼ前線で怪人として宝太郎と対決していない)。
どうやらりんねの父親である九堂風雅の目的にも詳しいらしく、時折彼女の前で何か怪しい台詞を吐露しているのだが……?
第14話以降の活躍
隠されたコンプレックス
『仲間や家族』の概念を見下しながらりんねに対して「裏切り者の娘」と何度か小馬鹿にしていたが、当の本人から「仲間だとか親子の関係に憧れている」「仲間や家族を否定するのは自分の寂しさを誤魔化すため」と指摘されている。
本人もこの言葉に思う所があったのか、いつもと打って変わって見た目相応の癇癪を起こすなど明らかな動揺を見せた(りんねからは「あなたでも怒ることあるんだ……」と意外に思われていた)。
何度かりんねに接触し積極的に話し掛けに来ていたのも、アトロポス自身が無自覚なまま「友達になりたい願いからではないか?」と推測されている。第19話ではかつて父親が行方不明となり孤独な人生を送っていたりんねにもシンパシーを感じていた様だ。
通常のマルガムとは違い主人にも牙を向くケルベロスマルガムを前に、普段とは違い殺されかけるアトロポスだったが、それを仮面ライダーの力を手に入れたりんねによって救出され、挙句の果てには腕の火傷を治されてしまう。もう「いつも守られてばかり」の人間ではなくなった彼女を前に、アトロポスは「自分を助けたことを後悔する」と捨て台詞を吐きながら逃げるしかなかった……
良くも悪くもその特異な能力や出自などから、おおよそ普通の人間とは違いすぎる人生を送ってきたであろうアトロポスにとっては、ありふれた「家族や仲間」の存在は何よりも羨ましい物だったのだろうか……
尚、1度「自分達が処分される前に先に反旗を翻そう」と提案したラケシスに対しては、これまでとは打って変わり「二度と口にしないで」と錬金術で攻撃する苛烈な姿勢を見せ、少なからず動揺を隠せない様子が増えていく。
その後しばらくは殆ど目立った活躍はなかったが要所要所で登場しており、第20話にて10年前のグリオン事件においても主と共に「暗黒の扉」を開くべく錬金連合を訪れ、そこに居合わせたスパナの両親達と一度会っていた過去が判明する。
第25話ではこの直前のアトロポスが描かれており、丁度ミナトに消えない傷を植え付けたグリオンへ「暗黒の扉を見つけた」と報告している(ちなみに、同時期のクロトーやラケシスは風雅と対決しており別行動であった)。
第26話では、裏切り者のミナトだけでなく、自身とクロトー、主であるグリオンを裏切ろうとしたラケシスを始末するために仮面ライダードレッド壱式に変身したが、そこにスパナが乱入し仮面ライダーヴァルバラドと交戦する羽目に陥り、2人を取り逃してしまった。
第27話では、グリオン、クロトーとともにウロボロス界へ赴いたが、暗黒の扉を開く儀式を阻止しようとする宝太郎達がテンライナーでウロボロス界に来たことで非戦闘員でありながら宝太郎達ライダーに力を与える存在である鶴原錆丸と銀杏蓮華を危険視し、クロトーとともに対峙。しかし、思いの外彼らが粘り、肝心の洗脳もズキュンパイアの能力を応用した対洗脳シールドに阻まれ、クロトーに一任するしかなかった。
その後、グリオンが扉の向こう側にいる得体の知れない存在へ吸い込まれる姿を目撃。その形見である錬金具を拾い上げ、「まだ終わってないよ」とクロトーに呟いた。
第28話では、単独行動を取っており、「九ツ村」にて産業廃棄物処分場にするために廃村に追い込もうと暗躍する地上げ屋の2人を見て、「やっぱり人間は醜いね…。」と呟きながら、錬金具を使用して地上げ屋の2人とベロソル・ケアリーを結合させ、カラカサオバケマルガムとフェアリーマルガムを生み出した。
第29話では、りんねの真意を知るためにある存在が引き起こしていた怪事件を傍観。りんねに見つかってしまった際には、「皆から甘やかされている君が今、何を考えているのか、その頭の中を知りたいんだ。」と吐露。その質問にりんねは「あなたが過去の罪を償って同じ人間として生きていくこと」と答えたため、「やっぱり嫌いだな…君のこと。」と呟き、トンネルの中へと進みどこかへ去っていった。
第30話では、前話での発言によって怒りが頂点に達したのか、「自分の創造主であり父でもあるグリオンを倒したりんね達を絶望させて抹殺する」ことを目的に暗躍。悪意人形4体を結合させた上でブリザンモスを結合させてマンモスマルガムを誕生させた。そして、宝太郎の件で九十九静奈と口論になっていたりんねを強襲。彼女に精神的な揺さぶりをかけることでマジェードの実力を発揮できない状況へと追い込んだ。
しかし、ミナトの叱咤激励により再起したことでマンモスマルガムを撃破されてしまい、新たにマックラーケンを悪意人形数体と結合させてクラーケンマルガムを誕生させた。
しかし、クラーケンマルガムもガッチャードとマジェードに撃破されてしまい、一人焦燥感を剥き出しにしたまま立ち去った。
第32話では、その苛立ちをクロトーと悪意人形達にぶつけており、両者を「使い物にならない」となじっていた。
その後、ギギスト復活に際し、彼こそ「グリオン様の悲願」であると察知し彼に付き従うようになる。
第34話では、超兵器が金色の仮面ライダーの手に渡ったことをギギストに報告したが、ギギストは全く意に介さなかった。
余談
- 名前の由来はギリシャ神話に登場するモイライ(モイラ)の一柱・アトロポス。運命の糸を切る女神とされる。
- また演者は3幹部の中で長女ながら9歳の最年少となる。奇しくも名前の読みは「いとの」。
- メインライターの長谷川圭一によると「ガッチャードのキャストはみんな大好き」とのこと。その中でも、沖田には期待の眼差しを注いでいるらしい。
- パイロット監督を務める田崎監督も「オーディションの時、天才子役は何人もいたが、台本のイメージする怖さを表現するには彼女か最適だ」ということであえて一番若い9歳の彼女を選んだと語っている。
- また、沖田は本作が特撮作品初出演どころかテレビドラマ・映画等の映像作品自体初出演であるため、その点でもスタッフのみならず視聴者からも初経験とは思えない演技力を絶賛されている。
- 彼女レベルの年齢から組織に入っていた敵キャラクターは前例があるが、最初からこの年齢の幹部として登場するのは大変稀有な例。
- 第26話でドレッド壱式に変身したことで仮面ライダー変身者の最年少タイ記録(9歳)となった(それ以前の記録保持者は仮面ライダープリティ電王に変身したアンナ役の高尾日歌女史。当時9歳)。
- 《冥黒の三姉妹》では長女のポジションだが、見た目は真逆なのは違和感を覚えるものの、彼女達が兄(?)と同様にグリオンの被造物だったのならば、一部の機械工学で用いられる先代モデルの長所の改良・短所の改善を施した新型を「兄」と呼ぶルール(端的にはこの関係)を適用すれば、違和感を抑えられると思われる。
関連タグ
仮面ライダーガッチャード 錬金術師(仮面ライダーガッチャード) ボクっ娘
プライド:同じくホムンクルスでありその集団のリーダーかつ長子的な立場、容姿が幼い子ども、創造主に対する強い忠誠心を持ち同胞を手駒程度にしか見做していない等の共通点が見られる。