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マグニチュード・明日への架け橋

まぐにちゅーどあすへのかけはし

『マグニチュード・明日への架け橋』は平成9年(1997年)公開の日本映画である。主演・緒形直人、監督・菅原浩志。
目次 [非表示]

概要

制作の背景

兵庫県南に浮かぶ架空の島『中神島』を舞台に、震災によって20年もの間引き裂かれた父子、その父子と数奇な縁で巡り合った震災の傷を負う1人の女教師、彼ら3人を題材に据えた映画である。


橋の記憶


制作の背景としては平成7年1995年)1月17日早朝に発生した阪神・淡路大震災が挙げられる。阪神大震災は戦後初めて都市を襲った直下型地震であり、死者6,434名という甚大な被害をもたらした。


この震災を背景とし、防災への意識高揚や啓蒙、震災の記憶を風化させてはならないと思い至った映画人らによりボランティア活動の一貫として企画・制作された。


制作にあたっては宝くじによる助成金や、自治省消防庁をはじめとする公的機関の協力、数百社にものぼる企業・団体からの支援もなされた。興行収入ではなく、防災教育や啓蒙活動を目的としているため、学校での避難訓練や地域における防災訓練等の場面で上演されることもある。


映画ポスターやチラシには、地震の波形をもとにMAGNITUDEと記したものとなっている。


【映画序盤のまえがき】

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は、私たちに大きな衝撃をもたらしました。この映画は、これを機に、何かしら防災に貢献したいという映画人が集まって、ボランティア活動として制作した映画です。

そして、公共機関や企業など多くの方々からのあたたかいご支援、ご協力をいただいて制作されました。心から感謝申し上げたいと思います。

いうまでもなく、私たちの国 日本地震の大変多い国で、いつまた、あのような大地震が襲ってくるかわかりません。

この映画から、改めて防災の大切さを感じとり、少しでも防災への気持ちを高めて頂ければ幸いだと思っています。

ナレーション森繁久彌


あらすじ

昭和51年1976年)、中神〝なかがみ〟島を地震が襲った直後、消防官である佐伯辰雄は妻・美代子と一人息子の誠を自宅に残し出動した。辰雄が消火活動にあたるなか、漏洩したガスに引火したために自宅は爆発・全焼、美代子は帰らぬ人となる。爆発の寸前、美代子に促され脱出した誠は祖父母の元に引き取られ、故郷・中神島を後にした。


20年後、誠は東京消防庁の特別救助隊(レスキュー隊)小隊長を務めるなか、中神消防署に発隊した特別救助隊長へ抜擢される。父・辰雄は消防を退職したのち、漁師として生活する傍ら、消防団員を務めていた。20年の時を経て再会する機会を得た父子だが、妻を救えなかった自責の想いから、あるいは母を救えなかった父に対する恨みから、お互いに心を閉ざしてしまったままの両者はすれ違ってしまう。

ある日、辰雄は自らを「おじさん」と慕う中神小学校の教師・日置陽子と共に消火訓練を行なうが、訓練の最中、2人の小学生が体育倉庫で火遊びの末、煙に巻かれ閉じ込められてしまう。懸命に救出を試みる辰雄らだが、通報を受けて駆け付けた誠らによって小学生は無事、救出された。だが、これにより父子2人の間はより一層、気まずくなってしまう。

(幸にして、2人の小学生は怪我もなく、無事であった)


ぼや騒ぎの後、失意のまま辰雄は生き甲斐のように感じていた消防団を退職。直後、漁の最中、船上で巻網機のリールに巻き込まれて重傷を負う。陽子から連絡を受け誠は病院に駆けつけるも看護師から辰雄の既往歴、年齢を訊かれても何ひとつ答える事ができず、父親のことを全く知らなかったことに思い至る。辰雄の私物や着替えなどを準備するなか、誠は辰雄が地震についてまとめた幾多ものファイルやノートの束を発見し、父も自らと同じように美代子を奪った地震を決して忘れていなかったことを、地震の最中に辰雄が火災現場で懸命に救助活動に当たっていた事実に気付く。


燃え盛る炎の中、辰雄が救い出した人物こそ、当時7歳であった陽子だった。自らの心情を誠に吐露する陽子を前に、誠は地震を乗り越えるため、父・辰雄と会うことを決意する。一方、辰雄もまた、自らの心情を涙ながらに漏らした。

その夜、中神島を巨大地震の猛威が再び襲った。誠は部下隊員らと共に救助活動に奔走するなか、陽子が救助に駆け付けた辰雄とともに自宅で生き埋めになっているとの報を受け、レスキュー車で現場へ急行する。誠が陽子を救出した直後、ショートした電線からスパークした火花が自宅に燃え移る。バケツリレーなど、周辺住民らも協力するが救助は難航し、ついに陽子宅にも火の手が回り、爆発・全焼するなか、誠は全身を煤だらけにしながらも辰雄の救出に成功する。


やがて駆け付けたポンプ隊による消火活動が開始され、辰雄は救急隊に引き継がれた。その後、誠らが乗車したレスキュー車は払暁の中神島を駆け抜けてゆく。


キャスト・スタッフ

主演である佐伯誠消防士長を緒形拳の息子である緒形直人が演じた。


【主なキャスト】

  • 佐伯誠(28):演・緒形直人
    • 東京消防庁特別救助隊小隊長→中神消防署特別救助隊小隊長

20年前の地震の際、目の前で母・美代子を亡くす。地震の直前、辰雄と「消防車に乗せてもらう。はしご車にも乗せて」と約束していたように消防への憧れを子供の頃から抱いていたことが窺える。

平成2年に東京消防庁消防学校を卒業後、28歳という若さで特別救助隊の小隊長を務め、部下たちを束ねる。着任前、中神消防署では「相当のエリート」と噂され、実際に列車救助、火災救助、滑落救助、震災救助などの現場で的確な指示を出しつつ救助を完遂している。

階級は消防士長。


  • 佐伯辰雄:演・田中邦衛
    • 中神消防署小隊長→中神市消防団第一分団分団長

20年前の地震の際、発災直後、息子である誠を妻に託しスーパーカブで消防署に駆けつける。消火活動中、自宅の出火報を消防無線で聞くが、2階に取り残された陽子を救出することを決断。

美代子の死後、自身が自宅にいれば、美代子を死なせずに済んだのではとの自責の念に駆られ消防を退職。

退職後は漁師となり、消防団員(分団長)を務めていた。陽子の話によると酒も呑まず、消防団の活動に勤しんでいた。

消防吏員時代の最終階級は消防司令補。


20年前の地震の際、石油ストーブから火を出し自宅が全焼。2階に取り残されるなか、辰雄によって救出されるも「他の人の命と引き換えに自分は生きている」との負い目を抱いていたが、辰雄の言葉が心の支えとなっていた。

誠のことは辰雄から聞いていたとみえ、誠が中神島に赴任する前には「よかったね、おじさん」と辰雄を気遣ったほか、消火訓練の一件以降、誠を訪ね謝罪するなど随所で心遣いを見せる。


20年前の地震の際、誠を避難させた直後、爆発・全焼した自宅に取り残されて帰らぬ人となる。地震の揺れによりコンセントにタオルが被さったために出火した小さな火が、損傷したガス管より漏洩したガスに引火したことが出火原因と見られる。

地震直後、散乱したガラス片により右足を負傷し、誠に何か履き物を履くように促している。この20年後、中神島を再び地震が襲った際、揺れがおさまった直後、誠はスニーカーを取り出し、すぐに履いている。



  • 看護師:演・渡辺えり(渡辺えり子名義)
    • 中神総合病院救命救急センターの看護師。

美代子の両親、誠の祖父母である。美代子の死後、誠を引き取った。

陽子の話によると、母の方は辰雄との間で定期的に連絡を取っていたようで、仏壇に飾られている誠が消防学校を卒業した際の写真などを送っていた。


  • 室井哲郎:演・村井國夫
    • 東京消防庁人事部長。階級は消防司監。

誠に対し、中神消防本部への辞令を手渡す。辰雄とはかつて同僚だった模様。


  • 田端、秋山、藤本。
    • 中神消防署特別救助隊員。階級は消防士、消防副士長。

田端隊員はロープ登はんを苦手としていたが、中盤には誠から「よくやったな」と労われるほどに上達する。


ほか……

【ナレーション】

森繁久彌


【スタッフ】

監督:菅原浩志

プロデューサー:加藤和廣、小林壽夫、鍋島壽夫

脚本:長谷川隆、後藤槇子、菅原浩志

音楽:佐橋俊彦

撮影:栢野直樹(J.S.C)

照明:長田達也

録音:小野寺修

美術:沖山真保

装飾:柴田博英

編集:冨田功

ビジュアルエフェクト:松本肇

スクリプター:松澤一美

助監督:片島章三

俳優担当:足立公良

制作担当:鷲頭政充

ラインプロデューサー:渡井敏久

ほか……


【主題歌・挿入歌】

〈主題歌〉『白い鳥』

作詞:菅原浩志

作曲:佐橋俊彦

歌唱:河合美智子

ジパングで知られる佐橋俊彦が描いた旋律は、映画内でも劇中曲としてしばしば用いられている。


〈挿入歌〉『およげ!たいやきくん

作詞:高田ひろお

作曲:佐瀬寿一

歌唱:子門真人

映画序盤に挿入歌として用いられる。


【その他】

中神島を襲った地震

中盤、誠が読んでいた消防活動報告書や、辰雄が集めていた新聞記事の切り抜きなどによると地震は主に次のようなものだ。


発災日時:昭和51年1976年)5月2日19時頃

最大震度:震度5(阪神大震災まで、震度5および6に強弱はなかった)

マグニチュード:6.7

死者:2名

重軽傷者:68名


劇中に登場する地名等

佐伯家(出火前):中神3丁目29番

日置家(出火後):中神東5丁目7番

中神小学校:中神2丁目4番


制作

制作・企画

先述したように、何かしら防災に貢献したいという第一線級で活躍する映画人が集い、ボランティアで制作されたこの映画は、数多くの公的機関、企業・団体などから支援・協賛・協力を受けている。


企画はA.V.P.(アーティスト・ボランティア・プロジェクト)、制作は国家資格である防火・防災管理者講習などを受け持つ(財)日本防火協会が担当した。


企画:A.V.P.

制作:(財)日本防火協会(現・(一財)日本防火・防災協会)

制作協力:博報堂

特別協力:自治省消防庁(現・総務省消防庁)


撮影

劇中の地震シーンはCGのほか、鹿島建設技術研究所の「起震機」が映画撮影としては初めて用いられ、地震による揺れの恐怖や、家財道具の落下、蛍光灯の揺れなどがよりリアルに感じられるようになっている。


東京消防庁をはじめ、横浜市消防局神戸市消防局、舞台となる中神島のモデルである淡路島を管轄する『淡路広域消防事務組合』などが撮影に協力している。

消防車救急車レスキュー車は撮影用の劇用車ではなく、実際の車両が用いられたほか、淡路島での撮影では兵庫県警も協力したため実物のパトカーも登場する。

(都内の撮影で、警視庁の本物のパトカーが用いられたかは不明)

中神消防署として登場した建物は、淡路広域消防組合の消防本部・洲本消防署の旧庁舎である。


都内では、都営地下鉄新宿線岩本町駅や大島車両検修場が撮影に用いられた。


協力・協賛企業、団体

【協力機関】

全国知事会 全国市長会 全国町村会

全国消防長会 都道府県消防主管課長会

兵庫県 神戸市消防局 洲本市 洲本市消防団

淡路広域消防事務組合 大河内町消防団

洲本市立由良小学校 洲本市立由良中学校

洲本市由良連合町内会 西淡町役場

東浦町観光協会 東由良町漁業協同組合

由良漁業協同組合 由良町中央漁業協同組合


東京消防庁
品川消防署城東消防署立川消防署
多摩消防署調布消防署八王子消防署
深川消防署町田消防署東京消防庁消防学校

東京都交通局 横浜市消防局 横浜市磯子消防団

電力中央研究所 日本医科大学附属多摩永山病院

日本消防協会 日本消防設備安全センター

気象庁 災害救援ボランティア推進委員会

ほか……


【協力企業】

日立製作所 関西電力 レンタルのニッケン 日清食品

アングル アサヒ飲料 淡路フェリーボート

鈴醸酒造 中央建設 上州屋 宮田工業

エクシブ淡路島 ジャスコマリンシティ洲本

海月館 ロイヤルグレースホテル

社会福祉法人東京コロニー東京都葛飾福祉工場

佐川急便(運送・空中撮影協力)

鹿島建設(起震機提供)

ほか……


【協賛団体】

(財)自治総合センター(宝くじ助成)

電気事業連合会

(社)日本建設業団体連合会

(社)東京銀行協会

(社)日本自動車工業会

(社)日本電機工業会

(社)日本損害保険協会

通信機械工業会

日本チェーンストア協会

(社)日本鉄鋼連盟

日本証券業協会

石油連盟

(社)全国消防機器協会

(社)日本電子機械工業会

(社)日本民営鉄道協会

(社)不動産協会


【協賛企業】

アサヒビール(株)

協栄生命保険(株)

キリンビール(株)

セコム(株)

宝酒造(株)

東日本ハウス(株)

日本電信電話(株)

オリックス(株)

ヤマト運輸(株)

旭化成酒類事業部

(株)永谷園


ほか多数。


余談

辰雄が意識を失った場面にて、陽子が誠を呼び出すために119番通報するなど、制作自体が25年前の映画であるため現在では問題のある描写もみられる。

(出場の有無に関わらず、勤務中の消防官を呼び出す場合、119番通報ではなく消防署所の電話番号にかけなくてはならない)


一方、防災教育を目的とした映画であるため、現在でも通用する内容も数多い。

たとえば、揺れが収まった直後、誠は真っ先にスニーカーを履いているが、地震直後は破片や荷物などが室内に散乱し、裸足で移動すると脚を負傷する可能性が高く、脚を保護するためにも極めて有効である。


また、揺れている際、辰雄がベッドのを抑えているが、同様に頑丈なもので頭部を守る際、机の脚を抑えて、動かないようにしなくてはならない。


現在では震度5相当以上の揺れを感知すると都市ガスの供給は自動で停止するようになっているが、映画で描かれているように、ガスが漏洩し、なんらかの拍子で引火する危険性も孕んでいる。

特に、避難時は停電であったとしても、のちに通電状態となった際、断線や動線が露出している箇所などでスパークし火種となる可能性もある。このことから、避難時にはブレーカーを落とし、停電状態にしておくことが望ましい。


関連項目

阪神淡路大震災 兵庫県南部地震

直下型地震 東日本大震災 熊本地震

消防 レスキュー 消防車 救助工作車

防災

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