ここでは『ドラえもん』のエピソードについて解説する。ひみつ道具については「アンキパン」を参照。
概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』のエピソードの一つ。TC2巻収録。
ストーリー
ある日、のび太がやかんと枕を持って「困った困った!どうしよう!」と騒いでいた。その様子を見ていたドラえもんは、彼が何故やかんと枕を持って困っているかが分からない。
そこでドラえもんがのび太に困っている理由を尋ねると、彼曰く「明日には国語と算数のテストがあるから困り果てていて、やかんと枕はテストと全く関係無いけど、つまりそれほど慌てている」とのこと。
ドラえもんは呆れて部屋から出て行こうとすると、のび太から「助けてくれないのか!?僕がこんなに困って見せてるのに!」と引き留められる。そこでドラえもんは「せん風機」を取り出し、「これで学校を吹き飛ばせばテストは無くなる」と提案する。
しかしのび太から「そんな乱暴な!」と止められた為、ドラえもんは「動物ライト」を取り出し、「これで先生をゴリラにすれば良い」と提案する。
するとのび太が「真面目に考えてくれ!」と怒り出すが、ドラえもんは彼に「普段真面目に勉強しないのがいけないんだ!」と正論を突きつける。
のび太は耳に痛い言葉を聞かされ、涙を流しながら「これからはちゃんと勉強するから、今度だけは助けて!」と悲願する。見かねたドラえもんはポケットから「アンキパン」を取り出す。
ドラえもんがアンキパンをノートに貼り付けると、パンに文字が写る。そしてのび太にそのパンを食べさせると、彼はパンに写した内容を全て暗記していた。ドラえもんは「算数と国語のノートと、教科書とワークブックを全部覚えておけば何とかなる」と提案し、のび太に大量のアンキパンを渡す。
しかしノートの肝心のページが破けてしまっていた。のび太曰く鼻をかむ時にちり紙が無かった為、代わりに使ってしまったのだと言う。これでは暗記が進まないと考えたのび太は、ドラえもんから大量のアンキパンを貰い、友達のノートを写させてもらうことにする。
のび太は最初に骨川家へ向かうが、スネ夫のノートは使い込まれていた為に汚れており、パンに写して食べる気にならず断念する。次に源家へ向かうと、しずかが綺麗なノートを見せてくれた。
のび太が「これを覚えてしまおう。覚えることには自信があるんだ」と言うと、しずかから「クラスで一番忘れんぼのあんたが?ホホホ!」と笑われてしまう。のび太はアンキパンを使用し、電話帳の内容を丸暗記してしずかを驚かせる。
するとしずかのママがおやつの草餅を持って来た為、のび太はご馳走になることにする。しかし草餅を食べ過ぎてしまい、アンキパンが喉を通らなくなってしまう。のび太はやむを得ずしずかからノートを借り、少しお腹を減らしてから覚えることにする。
のび太が家に着くと、パパが料理を作っていた。彼曰く「母の日だからママの代わりに作った」とのことで、のび太は仕方なくパパの料理を食べることにする。
案の定、のび太は満腹になってしまった。部屋で待っていたドラえもんが「覚えて来たかい?」と尋ねると、のび太は「ちっとも」と言う。この言葉を聞いたドラえもんは「折角パンを出したのに!」と怒り出し、のび太も明日のテストに備えてアンキパンを食べようとする。
しかし満腹ののび太はパンを食べ進めることが出来ず、見かねたドラえもんは「水で流し込め!」と言いながらのび太に馬乗りし、大量のアンキパンを彼の口に無理矢理詰め込み、更に水を注ぎ込むというとんでもない行動に出てしまう。だが、そんなことをすればのび太の胃腸が耐えられるはずが無く…。
翌朝、ドラえもんが1階に降りると、パパがトイレの前でソワソワしながら待っていた。ドラえもんが事情を聴くと、パパ曰く「のび太が1時間経ってもトイレから出て来ない」とのことで、ドラえもんは「のび太君が食べ過ぎでお腹を壊してしまった」と考える。
トイレから出たのび太はやつれており、ドラえもんは彼を見て「覚えたことをすっかり出しちゃったな!」と大慌てする。
その後、ドラえもんはのび太の為に1ページ目からアンキパンを写してあげることにする。のび太は「勉強は辛いなあ」と言いながら、再び大量のアンキパンを食べ直す羽目になってしまうのだった。
登場人物
ドラえもん
ご存知主人公。
テスト勉強をしなかったのび太を助ける為に「アンキパン」を取り出す。
しかし終盤ではアンキパンを食べ切れないのび太を見かねて、大量のアンキパンと水を彼の口に押し込むというとんでもない行動に出る。
のび太
ご存知副主人公。ドラえもんの親友。
テスト前日になって慌ててしまい、ドラえもんに相談してアンキパンを出してもらう。
しかし色々な事情で満腹になった上に、ドラえもんからアンキパンを無理矢理食べさせられてしまう。その結果、翌日には腹を壊してしまい、暗記した内容を全て排泄してしまった。
しずか
原作初期故に現在と性格が異なる為、「暗記が得意」と述べたのび太を馬鹿にして笑ってしまう。
しかしテスト前日にもかかわらず、のび太に自分のノートを貸してあげる優しい一面もある。
スネ夫
ドラえもんとのび太の友人。
のび太にノートを貸してあげようとするも、使い込まれていてボロボロだった為に断られてしまった。
パパ
のび太の父親。
母の日ということで、ママの代わりに夕食を振舞う。
ママ
のび太の母親。
パパが作った料理を「美味しいわ!」と評価していた。
余談
上記のエピソードは大山のぶ代版及び水田わさび版アニメで映像化されている。前者は1979年と1992年、後者は2005年と2012年にアニメ化されている。どれも基本的には原作通りの展開である為、以下は原作版と大きく異なる部分のみを記述する。
- 1992年版
サブタイトルが「アンキパン」に変更されている。
原作版では未登場だったジャイアンと出木杉が登場している。前者はスネ夫と共に勉強するという形で登場し、後者はのび太が最初にノートを借りに行く相手として登場している。
その際、出木杉は「ノートは取ってないんだ。授業を聞いていれば全部分かるから、テスト前でも特に勉強したことはないんだよ」と言い、それを聞いたのび太は気分を悪くしていた。
- 2005年版
翌日のテストとは別に、のび太はその日実施された○×テストで0点を取ってしまっていた為、それがママにバレて叱られてしまう展開が追加されている。
その際、ドラえもんは彼の0点の答案を見て「○×式のテストで20問全部外す確率は約100万分の1で、その0点を連続で取るから、もはや天文学的確率だよ」と呆れながら述べている(ちなみにのび太は作中で全20問の○×テストを2科目受け、どちらも0点を取っている。40問全て間違う確率は約1兆分の1)。
また、こちらでも原作版では未登場だったジャイアンが、スネ夫と共に勉強するという形で登場している。
それだけでなく、原作版及び大山版では単に「せん風機」と呼ばれているひみつ道具だが、こちら及び下記の2012年版では「ふきとばし・せん風機」という名称に変更されている。更に、アニメ版『ドラえもん』公式サイト・ひみつ道具カタログにて「これを使用すると凄まじい風が巻き起こり、どんな物でも吹き飛ばすことが出来る」と説明されている。
その一方、ドラえもんがのび太の口にアンキパンを押し込む場面がカットされており、のび太が自力でアンキパンを食べ続け、それをドラえもんが応援する展開に変更されている。
- 2012年版
原作版及び上記のアニメ版では未使用のままに終わった「ふきとばし・せん風機」と「動物ライト」だが、こちらはドラえもんが本当に使用してしまっている。「どこでもドア」で学校へ出向いた後、ドラえもんがふきとばし・せん風機を起動し、学校を吹き飛ばそうとした。
慌てたのび太がふきとばし・せん風機のスイッチを切るも、ドラえもんはそのまま真顔で動物ライトを取り出し、偶然近くを通りかかった先生をゴリラに変身させてしまった。
また、こちらでもジャイアンと出木杉が登場しており、のび太が彼らと対面した際は1992年版とほぼ同じ展開になっている。
それだけでなく、スネ夫が電子ノートを使用してテスト勉強するという、放送当時の時代設定に合わせたアレンジがなされている。
更に、原作版及び上記のアニメ版(2005年版を除く)ではドラえもんが直接のび太の口にアンキパンを押し込んでいたが、こちらでは「好き嫌い矯正ギプス」というひみつ道具を使用してのび太にアンキパンを無理矢理食べさせている。