「慣れっこですわ。それに、これも王女としての責ある仕事です」
「はい。このたびの遠征で、辺境が抱える不安をいっそう身近に感じましたわ。中央州は安全であっても、諸州はいつ帝国の襲撃に見舞われるのかと懸念しています」
概要
CV:沢城みゆき
星霊使い達の国・ネビュリス皇庁の第1王女。エメラルドの髪に緑色と金色のオッドアイを持つ神がかった美貌とプロポーションを誇る絶世の美女。アリスとシスベルの姉。
人物像
王女の中では頭脳明晰かつ聡明で冷静沈着な上に社交的で教養も知識も深く、多才であるなど後述の能力から「星霊以外の全てを与えられた」と評される才女であり20代という若さでイスカをして八大使徒に匹敵する老獪さを身に着け、極めつけに「魔法」とまで称され、同姓ですら惑わす魔性の美貌を誇る。その裸体は目撃した女性を気絶させ、人間を研究対象としか見ない女科学者ですら欲情を抱かせるほど。その知性と大人の余裕でふたりの妹を翻弄し、イスカをも手玉にとる。
普段は女王補佐として外征や外遊に力を入れ、辺境の不安に耳を傾けるなど王女として慈悲深く国の行く末を憂いている。
王女としても次期女王としても完璧な彼女だが、しかし下記のように星霊の力が弱いというただ一点の欠点を持って、生まれた時から「女王にはなれぬ」と皇庁の人々から揶揄されている。
好きなものは「子供と遊び、動物を撫で、植物を愛でること」、嫌いなものは「星霊、ネビュリス皇庁」、趣味は「世界変革(の妄想)」
能力
上記の通り明晰な頭脳と知識に気高い品格を持つ完璧な淑女なのだが、それは努力の賜物であり、星霊使いとしては純血種の王女でありながら、星霊の持つエネルギーは微弱でその能力も『声』という一度聞いた声を再現するオウム返しのようなもので戦闘能力と自衛能力は愚か、シスベルのような証拠能力としても使い道がなく臣下も自身ですらも役に立たぬ星霊と評し、ゾア家当主グロウリィからはイリーティアが誕生した時に女王聖別儀礼の勝利を確信され、ヒュドラ家当主タリスマンからも「星には愛されなかった」と評され、母ミラベアでさえもこれでは女王の資質にそぐわないと断じられている。
因みに星紋はその性質上、喉に存在する。
このように自らが次期女王候補となりえない原因であるはずの弱い星霊だが、しかし本人はその弱さを認めつつ「この星霊で良かったと思っている」と語る。
一方、自身の努力で培った知識と教養は本物でありアリスやシスベルを凌ぐ知識や皇庁の文化の造詣はこの上もなく深く、絵画の腕前も神がかりであり、その画力は芸術に目が肥えたイスカをして写真と見まごうほど。おまけに王女でありながら料理の腕前もあるなど、シスベルからは「究極完全体パーフェクトお姉さま」とまで畏怖されている。
関連タグ
アリスリーゼ・ルゥ・ネビュリス9世 シスベル・ルゥ・ネビュリス9世 ミラベア・ルゥ・ネビュリス8世
ネタバレ
ここから先は作品の重要なネタバレを含む為、閲覧注意。
上記のように星霊の弱さを気にしていないように振る舞っているが、実際には誰よりも気にして誰よりも苦悩してきた。星霊の力が弱いために女王候補から外され、強大な星霊に恵まれた母や姉妹たちと比較され疎外感と劣等感を抱いており、それでも手が届く努力はなんでもし女王にふさわしい品格と知性を磨いてきたが、結局その努力は誰からも母からすら省みられず、彼女は生まれながらにして女王候補から外され、陰から嘲笑される原因となり、母と姉妹たちをはじめとした純血種たちの星霊が賞賛されるそばで、自身は悔しさから自室で密かに泣き暮らす生活を送っていた。
それ故、生まれ持った星霊だけで全てが決まる皇庁に対し憎悪を抱くようになり、帝国と内通していたヒュドラと共謀、現在(1巻開始時点)から2年前に帝国へと渡り、自らの全てを捨て人外の『魔女』となる覚悟で『大星災』を投与する実験に志願し、「被検体E」となった
実験前、大星災との適合率を調査する目的で行われたパッチテストでは、通常触れれば肌を焼くほどの濃度であった厄災の溶液をその場で飲み干すという芸当を見せ、第一人者であるケルヴィナをも驚愕させる。そして成功例である「被検体Vi」に投与された0.0002%の500倍であり、常人であれば消し飛ぶという51%もの濃度を自ら望んだ上で投与を受け、その結果自我を失うほどの拒絶反応に苦しむことになるが、最愛かつ唯一の味方への想いでそれを乗りこえる。これは施術したケルヴィナや八大使徒にとって計算外の結果であり、自分たちの手に余る力を備えはじめた彼女を警戒かつ危険視し抹殺を決定。意識を失っていたイリーティアが入ったフラスコの前で、彼女を失敗として処分することを懺悔のように一人呟くケルヴィナだったが、本人に代わり投与された大星災がそれを聞いており、自我を取り戻した彼女は帝国から脱出する。
以降、皇庁に戻ってからは全てを隠し、外遊に力を入れ模範的な王女として振る舞うが、その裏では大星災の侵食により『魔女』化が進行、強烈な吐き気などの拒絶反応と引き換えに神星変異と呼ばれる異形への変身能力を獲得。シスベルが『灯』で目撃した異形の怪物とは、この頃に神星変異を行ったイリーティアの可能性が高い。
1巻開始時点では周辺諸国へ外遊に出ており名前のみが話題に上がる程度だったが、4巻にて外遊から戻ると早速仮面卿にシスベルが帝国に内通しようとしていると嘯き、外遊先を密告するなど水面下で暗躍。さらに女王暗殺の手引きと合図と同時に『声』の星霊により仮面卿の声を再現し、暗殺自体は失敗したが実行疑惑をゾア家に向けさせ仮面卿を一時拘束に追い込むなど八面六臂の権謀でルゥ家とゾア家を翻弄。同時に帝国へと情報を流し、帝国軍による皇城襲撃を誘導する。
さらに自身やヒュドラの暗躍を白日にし得る『灯』の星霊を持つ妹シスベルが中央州に帰還したのを見計らい先回りして妹や第907部隊を脅迫し、別荘のルゥ・エルツ宮へと封じ込める（この手練手管にイスカからは八大使徒を想起させ戦慄されている）。これによりアリスが姉を連れ戻すためにルゥ・エルツ宮に乗り込まざるを得ないようにし、彼女という切り札を女王から切り離すことにも成功。そして、自分だけが王宮に戻った際に母から上記の暗殺未遂のカラクリを看破されるも狡猾な演技で受け流し、帝国軍の襲撃の時間稼ぎを行う。
このように余人から見れば綱渡りに等しい謀略を、顔色一つ変えないばかりか微笑さえ浮かべて平然と成し遂げてしまう器量と手練手管に加え、ルゥ・エルツ宮でイスカに対し悠然と自らの真意たる皇庁への憎悪と破壊願望を冗談まじりに打ち明け、それとなく自身の帝国の内通相手をも明かすなど、その神経は達観を通り越して超越しているとさえ言え、後に冗談ではなく紛れもない真実を語っていたのだと悟ったイスカは心底戦慄している。
そうしてついに発生した帝国軍の襲撃では、混乱の最中、母ミラベアと使徒聖第一席ヨハイムとの戦いに割って入り、駆け付けた妹アリスの前で母を庇って斬られ、大量の出血を伴う瀕死の重傷を負う。そのままヨハイムに盾代わりに連れ去られるも、これは裏切り者の容疑から自分を外し堂々と皇庁から脱出するためであり、イリーティアは既に剣で切られる程度では死なない程度に人間から遠ざかっていた。
そして襲撃部隊の撤退の裏で、シスベルを連れ去るヴィソワーズの現場を押さえたゾア家当主グロウリィと相対する。瀕死であったはずの彼女が艶やかな嬌笑を響かせながら現われたその姿は人のものではなく、カラスの濡れ羽色のような黒い星霊光を発し、黒いドレスを纏いながら全身の肌までもが真っ黒に染まり、双眸だけが星のように輝く異形であり、それこそが神星変異した姿であった。その姿で発する声は、美しい女声と底知れぬ怪物の声の二重音声であり、彼女はその理由を未だ不完全で星霊が馴染みきっておらず「声」が乱れるためと語る。しかし完全ではないながら、過去の自らが勝てるはずもなかった純血種であるグロウリィを不意打ちの形とはいえその力で降し拘束した。
襲撃の翌朝、帝国へ帰還する部隊に捕虜として彼女はいた。ヨハイムに斬られ重傷であったはずの傷は既に治りかけており、水を飲めば身体から不要だと拒絶反応が起こるほど侵食は進行していた。その身体が近い将来呼吸すら不要となる人外へ変化していることを想うも、自ら望んだこととして受けいれた。
その一方で母や妹たちへの情も確かに存在し、この離脱劇は自らが化け物へと変わりゆく過程を母親と姉妹に見せないようにする配慮でもあったことが語られた。
そして捕虜として八大使徒と面会。人を捨てることをも辞さない自らの覚悟を語りつつ、星霊の強弱によって全てが決まる皇庁の破壊を宣言し、目的の一致からひとまずの協定を結ぶ。帝国内へ八大使徒により用意された館に監視を受けつつ滞在するも、そこでさらに『魔女』化は進行。食事や睡眠すら不要となり、拒絶反応による強烈な吐き気に苦しみつつも、同時にその侵食を身体が悦び、隅々まで身体が弄られていくことに心地良さすら感じるほどになる。
そして自らが人間でいられる最後の時間と悟った夜、最愛かつ唯一の味方に見守られながら、世界の要素ひとつずつを挙げ、自身が『最後の魔女』となり全てを破壊することを共に宣言する。その数刻後、屋敷からはこの世のものとは思えぬ苦悶の叫びが響き‥‥さらに数刻後、人ならざるモノの歓喜の「歌声」が響きわたった。
真の魔女
星霊が恐れる災厄である大星災と完全な融合を果たした魔女。漆黒の霧のような気流が集まり形作られるその外見は、目も鼻も口もない半透明をした黒い塊がヒトの形をしただけの漆黒の怪物である。体内には何百という光の粒が封じ込められ、あたかも空の闇夜を人間の形に凝縮させたがごとき姿となっている。
虚無のような黒染めのウェディングドレスを着たヒトの姿を取ることは出来るものの、それは皮一枚だけを取り繕った擬態であり、中身は真っ黒な霧のようなもののままである。衣服も身体と同じように黒い霧が集まって出来ており、他の被検体のように変身時に服が焼け落ちたりはせず、着たまま壁をすり抜けたりも出来る。というよりは実質的にイリーティアの一部であり、衣服を着ているように見せているだけである。
体内には生命維持に必要な内蔵すら存在せず、ヒトどころか生物の枠すらも逸脱している。すなわち既に肉体という実体すら持たない星霊エネルギーの塊であり、あらゆる物理的干渉を受けつけない星霊に近いものとなっている。大地や鋼鉄を幽霊のように通り抜け、身を切られても出てくるのは赤い血ではなく黒い霧で傷はすぐに塞がり、拳で突こうともぽちゃりと体内に沈みこみ石油の塊を突いたような手応えがするのみで、痛みすら感じている様子はない。
星霊に近い存在となった彼女には唯一星霊エネルギーのみが干渉できるが、星霊を遮断する星晶による結界は難なく破壊し、星霊による攻撃には痛みを感じるが、それでも純血種の星霊術をものともせず、中規模の星脈噴出泉に相当する星霊エネルギーの巨星兵の星夜見でさえ熱湯を頭から被った程度と称し、全身が滅されたとしてもどこからともなく黒い霧が集まり元通りに再生する。ただし純度の高い星霊エネルギーが蓄電されている『星剣』で斬られた傷はすぐに修復できず、また強力な星霊術についてはダメージが蓄積される様子。
攻撃面では黒い気流を操り、星夜見さえ凌ぐ光の津波のごとき黒い雷光を放てるなど絶大な力を行使できる上、悪星変異したケルヴィナと同じく星霊特有の現象光転移（リープ）も扱える。さらに大星災により変貌した星霊である『虚構星霊（エイドス）』をその身から生み出すことができ、それらは単体で帝国や皇庁を滅ぼすポテンシャルを持つ上、虚構星霊が知覚したものを自身も感知することが出来る。
さらに切り札として、星の中枢の大星災へと語りかけ、大星災の因子を宿す者に拒絶反応を起こすことができる。これにより作中でも高位の星霊使いである始祖や天帝、元使徒聖筆頭を行動不能に陥いらせ、クロスウェルは「彼女には星霊使いでは勝てない」と語った。
元から宿していた「声の星霊」も「星歌の星霊」へと進化を遂げ、『歌』として放出したエネルギーを浴びた者はなにをもってしても目覚めない昏睡状態に陥らせる能力を獲得した。エネルギーは物理的な干渉を受けず全てをすり抜けて直接相手の心を壊すため、星霊エネルギーによる防御をしない限り必中必殺となる。ただ、イリーティア本人によれば肉体を壊すことなく即座に戦闘不能とするこの技は自身の持つ術の中で最も優しく倒すためのものであり、これを行使することは「慈悲」であるという。なお、同作者の世界の終わりの世界録の最終盤にはほぼ同じ効果を行使する精霊が登場する(ただしその精霊は声の精霊ではない)。
総じてその力はもはや星霊使いの次元を超えた存在となっているが、イリーティア本人によれば、これは未だ進化の途中であり、星の中枢に存在する大星災本体と接触すればさらなる力を得られると言う。
そのように強大な力を得たイリーティアだが、力に溺れることで逆に生来の培ってきた知略には隙が出来ており、実際以前は看破したであろう八大使徒の星晶による罠や後述のタリスマンの戦術にまんまと嵌ってしまっている。
またゾア家との交戦時には生まれながらに強大な星霊を宿したことで恵まれた彼らに対し今までため込んだ鬱憤を発露するなど嗜虐性と愉悦に満ちた表情を顕す場面もあり、被検体ViやF、そして原液を押しつけられたタリスマンと同じく、性格にも侵食の影響が発生している。
真の魔女化後の行動
真の魔女へと変貌を遂げたイリーティアは、まずは八大使徒が潜む帝国議会の奥底を目指し、その道程にある帝国軍中央基地を星歌の星霊の力で壊滅させる。そのまま地中を星霊のように通り抜け、八大使徒と交戦。イリーティアが反逆した日に向け数々の準備をしていたはずの彼らだったが、彼女の圧倒的な力の前に粉砕される。
次に帝国第8国境検問所に出現し、駐在軍を星歌の星霊の力で壊滅させる。そしてそこを突破せんとしていたゾアの仮面卿やキッシング、精鋭たちと遭遇。そのまま交戦へと至るも、ダメージを受けた様子もなく、またもや星歌の星霊の力を行使。仮面卿の力でその場を逃がれたキッシングを残し、ゾアは壊滅した。
さらにその場に現れたアリスとも再会。異形の姿となった自分に呆然となる妹へ、終戦ではそれを導いた力への信仰が強まるのみで弱い星霊使いも含めた真のすべての星霊使いの楽園は訪れないことを冷笑まじりに諭し、だから帝国も皇庁も全てを破壊するのだと自らの意思を語る。
次にイスカ、そして始祖や天帝らとも遭遇。その全員と相対しながらも、始祖や天帝らには大星災の力を借りることで対処し、そしてついに身内であるアリスに矛先を向けるがそこをイスカの星剣で切りつけられる。イリーティアの一部が欠け、初めて明確に痛みを訴える有効なダメージを受け危機に陥るが、そこへ自らの最愛の剣士が助けに現われる。そのまま膠着状態に至ると、イリーティアとその最愛の剣士はその場に虚構星霊を残し撤退した。
その後、星の中枢へ続くと目される星脈噴出泉「太陽航路」にて、待ちぶせていたタリスマン、ミゼルビビィ、ヴィソワーズらヒュドラのメンバーと交戦。物理攻撃主体のタリスマンや自らより適合率が低いヴィソワーズはイリーティアにとって脅威とはならなかったが、ミゼルビビィの持つ光輝の星霊に純血種を強化されれば自身は倒されうると確信。ミゼルビビィを天敵と認識し、イリーティアは星歌の星霊の力を行使する。回避不能、必殺必中のはずのそれだが、タリスマン、ミゼルビビィ、ヴィソワーズの星霊特性は耐性を有しており、なんとか堪えることに成功。だがそれを「やさしく壊滅させるための慈悲を拒否した」と解釈したイリーティアは怒りを現わにし、黒一色だった顔に真っ赤な目のような光を灯しながら、歪に爪を伸ばしながら彼らを物理的に破壊すると宣言する。そこへタリスマンが立ち向かい、隠しもっていた厄災の力100%原液をイリーティアに注入する。
己の耐性を越えたそれを投与され自己消滅の危機に陥ったイリーティアは、投与したタリスマンを黒い繭と化した己の内へと引き摺りこむ。繭の内から二人の悲鳴が響き、卵のように割れた後に残ったのは、立つことすら出来ないイリーティアと棒立ちのまま動かないタリスマンだった。イリーティアは繭の中で原液の力の半分をタリスマンに押しつけたのだ。そうしてなんとか難は逃がれたものの、イリーティアはその身を起こすこともできず地面を這い進みながら、そこにすら恐怖で何も出来ないミゼルビビィを嘲笑する。そうして星脈噴出泉へと辿りついたとき、ようやく奮い立ったミゼルビビィだったが、そこにイリーティアの最愛の人が助けに現われ、彼に抱き抱えられながら己を焼いた厄災の力を称えつつ、さらなる進化を求め噴出泉の底を目指し落ちていった。
