「その機体の名前は?」
「そのMSの呼称はなんという?」
概要
『機動戦士ガンダムサンダーボルト』にて登場。
サイコ・ザクの存在とリユース・P・デバイスに眼を付けたアナハイム・エレクトロニクス社のウェリントン卿曰く「傑作機であるRX-78にリユース・P・デバイスを組み込み、ニュータイプの兵士に操縦させる事で核兵器に替わる新たな抑止力になる」とのことらしい。
この場面で本機の名前が作中で初めて挙がったのだが……。
後述の理由でダリル・ローレンツが「連邦軍の試作MSパイロット」としてルナツーへと潜入する際に搭乗したガンダムタイプのモビルスーツ。この頃のダリルは既にニュータイプに覚醒しており、皮肉にもこの構想が南洋同盟側で実現し、核兵器に次ぐ脅威となった。
その正体は自身の愛機であるサイコ・ザクマークⅡをとある経緯で入手したフルアーマーガンダム(正確にはそのコアMSであるRX-78)の装甲等で偽装改修した機体。
つまり端的にはサイコ・ザクにガンダムの皮を被せた仕様で、ガンダムの名前と容姿こそしているものの、機種としてはガンダムでは無くザクである。
SDガンダムでの事例をリアルロボット作品でやらかした経緯から、読者の間では「リアルタイプにせガンダム」とも呼ばれたり。
誕生までの経緯
タール火山基地での決戦において敵旗艦であるスパルタンを単独で撃墜し、南洋同盟製のサイコ・ザク全機の宇宙打ち上げを成功させたダリルは、基地脱出後かつての知り合いや、ジオン時代の元上司などの協力を得て自身も宇宙へと向かった。
宇宙へ来たダリルは自身が南洋同盟に寝返った際に始末した、クライバー将軍が有していた小惑星帯にある秘密の宇宙要塞を強襲、その中のある物を手にする。
それは一年戦争時に自身と激闘を繰り広げた因縁の機体―――ガンダム。
ガンダムのパーツを手にしたダリルは、仲間達にガンダムのパーツを自身のサイコ・ザクへの使用を提案。
ダリルとガンダムの因縁を知っていた仲間達はその提案に難色を示すも、ダリルは2つの理由を上げて説明した。
1つは自身の機体を宇宙戦用に強化する為。
サイコ・ザクマークⅡは高い能力を有しているが、元になった機体が陸戦型のザクⅡJ型であり、宇宙空間で戦えるように宇宙戦用に改装する必要があった。それも可能な限り最高の状態で。
その点では高性能で宇宙戦にも対応し、更に強固な装甲や高出力のスラスターによって更なるパワーアップをもできるガンダムは、皮肉にも現状考えられる中では最高の換装パーツなのである。
そしてもう1つはルナツーへと潜入する為。
レヴァン・フウの目的を遂行するためには強力な武器がいると考えていたダリルは、自身を呼ぶ謎の「声」がルナツーの奥から聞こえると感じていた。
かくしてサイコ・ザクマークⅡ改めパーフェクト・ガンダムとなった愛機と共に、ダリルはその声が待つルナツーへと向かう。
その道中、連邦のMS部隊と交戦、武装を奪ったりして戦火を潜り抜けるが新たなるガンダム・ブルGを前に苦戦してしまう。
交戦時に格納庫に逃げ込むが、そこに格納されていた巨大機動兵器を持ち出し起動させ、ルナツーの突破を試みるのであった。
この後開発者がやりたかったことを始めるためにサイコ・ザクマークIIの頭部に仕掛けていた細工を作動したが、頭部をフルアーマーガンダムのものに入れ替えていたダリルのみ、皮肉にも事なきを得た。
容姿
本物のガンダムの装甲などを使っており、尚且つご丁寧にもカラーリングもオリジナルと同じトリコロールとなっているのもあり、外見はガンダムそのもの。
ただし、ガンダムとザクでは機体の構造が異なる関係上、胴体や足からザク特有の動力パイプが露わになっている。
起動音も他のジオン系MS・MAと同じ「グポン」である。
尤もその頃のルナツーはアナハイム・エレクトロニクスからガンダムタイプの試作MSが沢山送られてきていた事情から、特に問題は無かった模様。
16巻限定版付録『MSデザインワークス』で紹介された沢山の設定案は、従来のフルアーマーガンダムの流れを汲む案の他、外見をガンダムMK-Ⅱに似せて『Ζ』へと繋げる案も存在した。
ファースト版に似せた正統派でシンプルなデザインに決定した理由は、太田垣先生曰く「素のガンダムをあまり描いた事が無い」「原点回帰」との事。
そしてサイコ・ザクにガンダムの装甲を被せるアイデアは「善と悪が交錯して正邪が分からなくなるのが戦争」とする至って真面目なコンセプトである。→シリアスな笑い
武装
頭部バルカン砲
ガンダムの頭部をそのまま使っている為、問題無く使用可能
こちらもガンダムのランドセルをそのまま使っているので使用可能
連邦系MSに採用されている粒子加速砲。脱出時に強奪したもの。
実体シールド
連邦系MSに採用されている大型実体盾。脱出時に強奪したもの。
ルナツーの格納庫に保管されていたもの。その運用方法は……
尚、ダリルはこれを外部から感応波だけで動かしているので、分類としてはビットやファンネルと同系統の装備と思われる。
読者からの評価
当然だが賛否両論の一言に尽きる。
これは「サイコ・ザクにガンダムの装甲を被せる」冒涜的な発想に起因する。更に単行本16巻の表紙がアニメ版ファーストOPラスト部分の模写を敢えてパーフェクト・ガンダムに差し替えた形で描くと、正統派な構図で冒涜感を引き立てる演出が為された。
そもそも名前の元となった『プラモ狂四郎』版パーフェクトガンダム自体も作中で、とある原作至上主義者から「神聖な原作を貶す存在」と大いに批判されており、これと照らし合わせると「冒涜的と揶揄された機体に更に冒涜要素を複数追加する斜め上な発想」との見方もある。
尤も、冒涜的な発想云々についてはネタで笑い飛ばす人が圧倒的に多い上、先述の原作至上主義者についてもパーフェクトガンダムの作者本人から「頭おかしい」と有難い言葉を頂戴しているが……。
- 肯定的な意見
〇富野由悠季氏が携わった作品でも「ΖガンダムにザクⅡの頭を付けた」Zザク、「∀ガンダムに化けた」モビルフラットなどのニセモノMSが出ているので、このようなパターンもアリとする寛容的な考えによる。
〇読者視点では冒涜に感じるかもしれないが、物語の中の人物の視点に立ってみると、敵軍の象徴たるガンダムをぞんざいに扱う行為に違和感はない。特にガンダムに散々煮え湯を飲まされたダリルにとって、むしろ「ガンダムをパーツ扱いしてザクに被せて『パーフェクト・ガンダム』と名付ける」行為自体が、ガンダムやイオへの当て付けの意が含まれていた可能性は十分考えられる。
〇また、近似したケースとして正史の『機動戦士ガンダム_MS_IGLOO』ではジムに偽装したザクが存在している。
〇それに連邦軍だって同じような行為をやってるし。
- 否定的な意見
〇宇宙世紀としての正史作品の1つである『ΖΖ』で登場したZザクは、アナハイム製MSのユニバーサル規格としての演出が成り立っていた。
しかし登場作品の『サンダーボルト』は時系列的に『ΖΖ』どころか『Ζ』よりも前である上に、構造が全く異なるガンダムとザクをどうやってすり合わせたのかが説明不足(ジオン系と連邦系の相性を考えると、無理やり繋げたと見ても過言ではないが、サイコ・ザクマークⅡが作られた南洋同盟は元々連邦系の組織であり、ガンダムは大破した状態からジオン残党によって修復、特に頭部は完全なジオン製であるため、両機とも両軍の技術が使われているとの解釈も出来る)。
〇何よりもファースト版の熱狂的なファンにとっては(思い出補正ありきで)原作レイプそのものと見ても過言ではないのだ。
……とはいえ、最初期から登場する元の機体やジムの「MSにサブアームを併用する」発想はジ・Oやアドバンスド・ヘイズルを始めとする、グリプス戦役から産まれる筈のものであるし、後半にジムカスタムなど時期的にもう少し後に登場する機体が登場していたり、そもそもミノフスキー粒子散布が大なり小なり行われているであろう戦場で、小型ラジオが繋がるはずもない(従来のラジオでなら……だが)。
つまるところ、作品の最初期から「宇宙世紀世界に似た世界観のアナザーガンダム」の方向性が一貫して感じ取れる作品なので、この機体が登場する頃まで読み進めた読者であれば、上記の否定的な意見を持ちづらく感じると思うのではないだろうか。
関連タグ
機動戦士ガンダムサンダーボルト ダリル・ローレンツ 南洋同盟
サイコ・ザク:ベース機種
フルアーマーガンダム(サンダーボルト):換装パーツにされたMS。
パーフェクトガンダム:他作品の同名MSについてはこちらを参照。
サイコガンダム:別作品で登場するサイコミュ搭載MA。ガンダムの皮を被ったサイコ・ザクと聞けばこっちを連想しがちだが別物。
ガーベラ・テトラ:ガンダムになるはずだったMSのフレームに「ジオン系MSっぽいガワ」を被せたもの。こちらもある種冒涜的。
ビルドバーニングガンダム:あるジオン機のガワを装着した状態で初陣を飾ったガンプラ。パーフェクト・ガンダムとはある意味真逆の立ち位置にいる存在である。
リハイゼ:鹵獲したガンダムを魔改造と称されるほどに改装したうえでジオン系の外装へと変えたもの。こちらはモノアイの追加等は無く、ツインアイのまま。
にせガンダム:実質新たなにせガンダムである