気功とは、中国の民俗信仰の一つである。
概説
自然界や体内に備わったエネルギー、即ち気をコントロールし、その力で肉体に様々な作用を及ぼす――という民間療法、並びにそこから発展した武道術理である。
気功には二種類あり、体内の気を循環させて気の質を高めてコントロール力を高める「内気功」、体の悪い気を体内から排出して健康を改善する「外気功」に分けられる。
さらに内気功には、運動を用いて体内の循環を活性化させる「動功」と、深呼吸や瞑想などで心を鎮めながら整える「静功」に大別される。
こうした「体内エネルギーの操作」という考えは、自己鍛錬による研鑽を好しとする中国拳法と相性が良く、太極拳を筆頭に肉体を鍛えると同時に気のコントロールを習熟するという、中国拳法特有の術理を形成することに繋がっていったとされる。
メディアでの扱い
日本で気功術というと、専ら外気功による治療や、その応用で相手の気を吸引して操作する、超能力的な側面がクローズアップされやすい。
また創作作品では、気を攻撃エネルギーとして発射する荒唐無稽なもの、回復魔法のように味方を治療する本来の姿の発展形として描かれる傾向が強い。
特に日本の場合、『ドラゴンボール』のかめはめ波が生み出した功罪が大きく、さらにそのオマージュである『ストリートファイター』シリーズの波動拳の登場で一層攻撃的な面が強まって広がり、フィクションにおいては武術としての色がたいへん濃くなってしまった。
RPGでも武闘家系のファンタジー職業のスキルとして抜擢される機会が増え、それまで戦士と並んで攻撃コマンド一辺倒で脳筋扱いされがちだったところを、飛び道具や範囲攻撃の修得という個性を獲得しており、より戦士系職業との差別化に成功している。
なので日本で気功というと、「中国のオカルト治療法」か「中国拳法の奥義」という、極体な見方で解釈される場合がほとんどである。
『北斗の拳』の北斗神拳奥義「転龍呼吸法」や、『ドラゴンボール』の「界王拳」、『ジョジョの奇妙な冒険』の波紋法、それをリスペクトしたと言われる『鬼滅の刃』の全集中の呼吸、『アカツキ電光戦記』の魏の使う「練精化気」及び「練神還虚」などは、フィクションには珍しい本来の気功に近い技といえる。
また「軟気功」と「硬気功」という誤用も日本特有のもので、治療や健康を目的としたものを「軟気功」、敵を攻撃するためのものを「硬気功」と呼ぶが、本場中国にそんなものはない。
正しくは「肉体に柔軟性を与える【軟功】」と「筋肉の硬度を高める【硬功】」で、これが日本に伝播した際に誤用されたものと考えられる。
※気功はあくまで健康法です
一種の超能力的な扱いが多いが、上述のように本来は運動や呼吸法を通じた健康法である。
もちろん、オカルトの領域ではあるが、気功を究めて超能力的なパワーを身に着けたという人は、これまでに何人も登場している。
しかしそこばかりが注目されてしまい、本来の「健康維持」の目的に焦点が充てられる機会に欠いている。
今更ながら、こうした論を振りかざしてフィクションの矛盾を暴き立てるのも、野暮というものだろう。
しかし「民間健康法としての気功」についても、ちょっと頭の隅で覚えておいて欲しい。
気功には気功としての歴史と術理があり、それを真剣に研究・研鑽している人もいるのだから。