※馬齢は2000年以前の旧表記で記載する。
生涯
1934年(昭和9年)4月23日、下総御料牧場（千葉県成田市）で誕生。
父は戦前の名種牡馬トウルヌソル。
主戦騎手兼調教師※は中島時一。
※戦前では騎手と調教師の兼業が許されていたが、戦後は「調騎分離」の規定が定められたため、現在では兼業は不可能。
競走馬時代
4歳(1937年)
1937年3月28日にデビュー。デビュー戦は3着だったもののわずか6日後に初勝利。
3戦目(4月11日)は、同期で後の天皇賞初代優勝馬にしてクリフジの全兄であるハツピーマイト(ハッピーマイト)を破って2勝目。続く4戦目(4月25日)は2着に敗れた。
そして、前走からわずか4日後の第6回東京優駿大競走(日本ダービー)。
4番人気に推されたヒサトモは第2コーナーから先頭を譲らず、そのまま先頭でゴールイン。
史上初めて牝馬による日本ダービー制覇を成し遂げた。
ヒサトモの他にはクリフジ(1943年・第12回)とウオッカ(2007年・第74回)だけしかおらず、偶然にも3頭共名前が4文字である。
また、2着には牝馬のサンダーランドが入ったが、牝馬による日本ダービーワンツーフィニッシュは現在でも唯一である。
ダービー終了後、ヒサトモは半年間の休養に入った。
しかし、復帰後は呼吸器の不調のため、一転して連敗を重ねてしまう。
この年から始まった帝室御賞典(秋)はハツピーマイトの3着に敗れた。
この年の成績は10戦を走って(3・2・2・3)という結果だった。
5歳(1938年)
年が明け古馬となったヒサトモは最初の2戦は3着・4着と敗れるも、次の競走を勝って連敗を7で止めた。
続く帝室御賞典(春)はハセパークの3着に敗れるも、ここから6連勝を挙げて復活。
大久保房松が騎乗した特別戦は3着に敗れたが、中島に戻った2度目の帝室御賞典(秋)を勝利し、八大競走2勝目を挙げた。
その後は4戦走って1着→1着→2着→1着で引退。有終の美を飾り、繁殖牝馬となる。
この年の成績は16戦を走って(11・1・3・1)という結果で、通算26戦14勝の成績を残した。
繁殖牝馬時代
引退後は「久友」に改名し、4頭産んだ。
しかし、当時は終戦直後の混迷期で、久友を取り巻く環境が変わった。
久友が16歳になった1949年、16歳にして地方競馬でまさかの現役復帰を果たす。
地方では5戦2勝の成績を残したが、同年11月19日、調教を終えた直後に突如ヒサトモは倒れ、そのまま死亡した。死因は心臓麻痺とされる。
死後
ヒサトモの死後、最初の3頭は牡馬だったが、父系は現在いずれも断絶している。
最後に産んだ唯一の牝馬ブリューリボンが唯一のファミリーラインとなるも、繁殖成績が振るわず、ヒサトモの血統は風前の灯となっていた。
そんな中で一人のある馬主が現れた。
その人物こそ「トウカイ」の冠号で知られる内村正則である。
ヒサトモの曾孫にあたるトウカイクインからトウカイミドリを経て、その娘トウカイローマンが1985年に優駿牝馬を優勝。
そして、トウカイローマンの妹トウカイナチュラルが1988年に産んだ競走馬は、クラシック二冠などGⅠ4勝を挙げ、最終的に顕彰馬となった。
その馬こそ、トウカイテイオーである。
内村の努力がトウカイテイオーという形で実を結び、一時断絶の危機にあったヒサトモの血統は現在でも残っている。
評価
下の世代のクリフジが顕彰馬になったこともあって、今ではクリフジに比べて語られる機会が少なくなったヒサトモだが、当時を知る人々は「クリフジも凄いが、ヒサトモだって負けていない」と評価している。
なお、主戦騎手を務めた中島時一の息子中島啓之は1974年にコーネルランサーで日本ダービーを優勝し、史上初めて父子ダービージョッキーとなった。
関連タグ
トウカイテイオー：子孫
