概要
沖縄県の民話。昔話でありながらゴリラが主題とされている点や、あまりにも恐ろしいストーリーが特徴。
伊集院光がラジオで紹介したことにより、有名となった。
あらすじ
旅をしている五人の若者が海を渡り、ある島にたどり着いた。
島で巨大なゴリラと出会い、驚いた若者たちは散り散りに逃げ出した。ところが、一人の若者がゴリラに捕まってしまい、住み処へと連れ去られてしまう。
ゴリラたちの住み処には、最初に出会ったゴリラよりも遥かに巨大なメスのゴリラがおり、それが彼らのボスであるようだった。
若者はボスメスゴリラに気に入られてしまい、無理やり婿にされてしまう。かくしてボスメスゴリラはゴリラ女房となった。
ゴリラたちと暮らすうち、若者にも情が芽生え、ついにはゴリラ女房を孕ませてしまう。
ゴリラ女房は子供を生むが、それは人間でもゴリラでもない非常に醜い生き物だった。
それでも二人の子供として、若者とゴリラ女房は大切に子供を育てていた。
しかし、やはり若者は人間の世界が恋しくなる。
ある日、ゴリラたちの隙をつき、若者は筏で海に逃げようと画策した。だが、岸を離れる寸前にゴリラ女房に見つかってしまう。
振り返っては情が移ると考えた若者は、ゴリラ女房に背を向けて海を漕ぐ。
そのとき後ろからボリボリボリボリと強烈な音がする。
思わず、振り返った若者が見たのは、自らの醜い子供を八つ裂きにするゴリラ女房の姿だった。
異説
「伊集院光 深夜の馬鹿力」内では、オチで子供が張り付けにされて石をぶつけられるという話も紹介された。
漂着したのが女で、ゴリラが雄であるという「ゴリラ婿」という民話も伝わっている。
息子を産んだ女は通りがかった船を見つけて逃げ出そうとしたが、ゴリラ婿に息子を奪われ股を引き裂くそぶりを見せられ脅された。
しかし女は息子を置いて逃げてしまったために、ゴリラ婿は怒って去って行った。
残された息子は野生のまま育っていったが、あるとき別の島にたどりついて人と交わり、言葉や文化を身に着け家族を持った。
そして故郷の島に戻ってみると、ガマの中でゴリラ婿が骨となっていたので供養したという。
原典であるのは、人間になった熊女が神の妻となる韓国の建国神話の影響があると考察される沖縄民話「熊女房」であるといわれる。
この民話では中国から帰る途中に遭難して無人島に漂着した王が、一等の雌の熊と情を交わして背に毛が生えた息子を成した。
あるとき、船がこの島を通りかかったので王は熊女房を残して息子と故郷へ帰ってしまった。
しかし息子が母を恋しがったので、再び王はこの島に訪れてみると熊女房は見送った姿のまま骨となっていた。
王はその遺骨を自国に持ち帰り、立派な墓を造り手厚く葬ったという。
その他、日本全土に猿が盟約により人の娘を娶るが、最後は命を落としてしまい娘に逃げられる「猿婿」という民話が伝わっており、それと「熊女房」などの異類婚姻譚と南洋から伝わったゴリラの伝聞が組み合わさって生まれた話であるのかもしれない。