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同志少女よ、敵を撃て

どうししょうじょよてきをうて

逢坂冬馬が手がけた戦争小説。独ソ戦争で活躍した女性スナイパーを主人公にした珍しい内容の作品である。
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概要

早川書房から2021年11月17日に発売。本作は逢坂冬馬のデビュー作であり、第11回アガサ・クリスティー大賞を受賞した出世作である。


多くの女性兵士が参戦した独ソ戦に焦点を当てた戦史小説であり、主人公達こそ架空のキャラクターであるが、ソ連赤軍を指揮したゲオルギー・ジューコフ元帥や後にスターリン批判を提唱したニキータ・フルシチョフ、そして世界最高峰の女性狙撃手リュドミラ・パヴリチェンコなど実在の人物も登場している。


本作の特徴は「ソ連赤軍で活躍した女性スナイパーを題材にしている」ところにあり、彼女達が活躍した背景、そして後に辿るいたたまれない人生を容赦ない筆致で描いている。

ナチスに侵略されたロシアの地を奪還することが物語の大筋であるが、主人公側であるソ連軍による虐殺や性暴力といった戦争犯罪も克明に記されており、正義など入り込む余地のない暴虐である「戦争」に対し、それに荷担している主人公達が悩み葛藤することがストーリーの主軸となっている。


あらすじ

1942年、ソビエト連邦はナチスドイツに侵略されていた。一年前に始まったこの戦争、俗に言う大祖国戦争は苛烈を極め、ソ連軍・ドイツ軍、そして非戦闘員である民間人にも夥しい死者を出していた。

モスクワ郊外にある小さな農村、イワノフスカヤ村もまたドイツ軍によって踏みにじられた。住民は殆どが殺され、猟師の娘セラフィマは眼前で母を殺され自らも死を待つ身となった。

辛くもソ連赤軍の攻撃によって難を逃れたセラフィマは、母を殺したドイツ軍人に復讐を果たすべく、狙撃手になる道を選択。

訓練学校での教練を経て軍人となったセラフィマは、修羅地獄の戦場を歩き続けることになる。

理想も、正義も、道徳も地に落ちた世界で、セラフィマは”真の敵”が何者であるのかを目の当たりにする。


登場人物

  • セラフィマ

本作の主人公。故郷の村をドイツ軍に蹂躙され、母親を目の前で殺されたことから復讐のために女性狙撃手となることを決意。

赤軍兵士となったのちに各地を転戦し、狙撃手として着実に成長して行くが、それと引き替えに人間性を徐々に喪失してしまうことになる。

母親を殺したドイツ人狙撃兵、そして母の死体を焼き捨てたイリーナを殺すと心に決めているが、戦場で様々な人間模様を目の当たりにしたことで徐々に考え方を変えて行くことになる。


  • イリーナ

女性赤軍兵士にして狙撃訓練学校の教官。ドイツ軍に殺されるところだったセラフィマを救った部隊を指揮しており、茫然自失の状態にあったセラフィマを奮起させるために彼女の眼前で家族の写真を焼き捨て母親の死体をも焼くという非道を見せつけた。

当然、セラフィマからは殺意を向けられることになったが、結果として彼女に生きる気力を与えた。セラフィマを一流の狙撃手にするべく訓練学校で鍛え上げ、後に実働部隊の長として彼女らを指揮する事になる。天才女性狙撃手リュドミラ・パヴリチェンコの戦友。


  • シャルロッタ

セラフィマの同期。勝ち気でつっけんどんな態度が鼻につく教条主義的な共産主義者だが、根は明るく優しい性分をしている。元々モスクワ射撃大会で優勝するほどの腕前であったが、兵士としての素養はセラフィマほど高くない。本作の数少ない良識人。


  • アヤ

セラフィマの同期。孤高の天才肌であり、訓練生の中で一番の実力者。カザフの遊牧民出身であり、ソ連の近代化政策によって遊牧民の生き方が否定されたことに内心強い不満を持っている。ために、何よりも自由になることを渇望している。


  • ヤーナ

セラフィマの同期。訓練生メンバーの中では最年長であり、もともとは家庭を持った普通の主婦であった。戦争によって子供達を失ったことから、女子供を守るために軍人を志した経緯がある。母性溢れる人格者であり、仲間達からは「ママ」と呼び慕われている。


  • オリガ

セラフィマの同期。社交的で優しい性分のムードメイカーだが、どこか危険な影を臭わせる人物。ウクライナのコサック出身であり、その出自故に(コサックは帝政に着いて共産党と戦ったことからソ連時代では疎まれていた)色々と辛い思いをしてきたが、それでもコサックであることに誇りを抱いている。実は同期のなかでも一番の食わせ物。


  • ターニャ

セラフィマ達の部隊に所属している看護兵。男勝りな肝っ玉母ちゃん気質の持ち主で、口は悪いが真心のある少女である。敵味方の区別なく傷付いた者達を治療し続けるド根性は周囲からも一目置かれており、戦士とは種類の違う強さを垣間見せている。


生きながら伝説となったソ連最高峰の女性スナイパー。イリーナの戦友であり、彼女が素で話し合える唯一の友人。戦傷を理由に第一線からは引退しており、後進の育成に力を注いでいる。天才らしく非常にシンプルな思考回路と飾らない素朴な性格をしているが、誰からも理解されぬ孤独と戦場で味わった地獄によって蓄積された、深い深い闇を抱えている。


  • イェーガー

セラフィマの村を襲撃した部隊に所属していたドイツ人狙撃手。セラフィマの母親を殺した張本人であり、彼女にとっては何が何でも殺したい怨敵である。スナイパーらしく合理的な冷血漢だが、一方で軍人としては真面目であり、ちゃんと良識や人情も持っている等身大の人間。普通の人を悪魔に変えてしまう戦争のおぞましさを体現したような人物である。


  • ミハイル

セラフィマの幼馴染みの少年。互いに憎からず思い合う仲であったが、故郷のイワノフスカヤ村が壊滅したことで離ればなれになってしまう。後に赤軍に入隊し、砲兵士官となって戦地に赴くこととなった。


関連タグ

独ソ戦 本屋大賞 戦争

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