ミュージックホーンは様々な乗り物の警笛の一種。
ここでは鉄道車両で流れるものについて解説する(鉄道用語)。
概要
鉄道車両が通過駅の客や線路上の作業員への警告のために警笛を搭載しているが、メロディーを奏でることにより、鉄道車両自身のアピールを付加させることで生まれたのがこの「ミュージックホーン」である。由来は「音楽(music)」+「警笛(horn)」。
いわゆる警笛の一種に過ぎないが、「ミュージックホーン」のみを搭載している鉄道車両は法令上の都合により存在せず、「ミュージックホーン」と「通常の警笛」の両方を搭載するのが基本である。「ミュージックホーン」は「補助警笛」としての位置付け。
ミュージックホーンの一例
小田急電鉄
3000形以降に登場したロマンスカーに搭載。ただし30000形には非搭載。
3000形では当初エンドレステープを採用しており、後の形式とは音色が異なっていた。この音色がオルゴール調だったことから、小田急ロマンスカーのミュージックホーンは「オルゴール」と呼ばれる。
かつては走行中常に鳴らしていたが、騒音問題で中止(この際に一部車両ではミュージックホーンそのものが撤去されたとされている)。現在は駅で一部列車がファンサービスで鳴らす。車両によって音色が違う。
静岡鉄道
現在保有する全車両に搭載され、急行列車の駅到着・通過時に鳴らされる。音色は全て同じ。
1000形は当初ペダル操作でミュージックホーンを鳴らしていたが、1996年の急行廃止時に電子警笛用に改造され、2011年の急行復活時には新たに運転台のデスク上にボタンが設置された。
300形にも搭載されており、同車が福井鉄道に譲渡されてからも搭載されていたらしい。
名古屋鉄道
パノラマカーこと「7000系」で初採用。その後、以前に登場していた一部の旧形車両についても特急運用に備えて搭載された(名鉄瀬戸線モ900・ク2300形など)。
キハ8000系にも装備されており、間合い運用の豊橋発新名古屋行きディーゼル特急のミュージックホーンを時報代わりにしていた沿線住民がいたとされている。ちなみに3780系も同様に搭載可能としていたが実際に搭載されることは無かった。
平成以降、ミュージックホーンは基本的に特急形車両に搭載。パノラマSuperはビブラートの効いたスローテンポなミュージックホーン、1600系以降はトランペット風のミュージックホーンになっている。また、電気機関車EL120形もミュージックホーンが装備されている。
いつしかメロディーに「どけよどけよそこどけ~(「はねるぞ~」などさらに物騒な歌詞が付けられることも)」などの歌詞をつけて呼ばれるようになり、「どけよホーン」とも呼ばれている。地元住民にも親しまれており、前述の時報代わりに使っていたという逸話のほか、中京競馬場で開催されるレース「名鉄杯」では、「どけよホーン」のメロディーをアレンジしたファンファーレを、名鉄ブラスバンド部の生演奏で毎年流している。
ちなみに作曲者は「相当有名な方」らしいのだが名鉄の意向により公表されていない。競馬のファンファーレとして使用されている楽曲で作曲者が公表されていないのはこの曲が唯一である。
なお、2016年にこの「どけよホーン」を「音商標」として特許出願申請したが、登録困難で却下された。
全線で使用されているが、名古屋本線・豊橋~平井信号所間は、JR飯田線を走行する為、JR東海の規定で使用が禁止されている(小田急車の御殿場線内も同様である)。
パノラマカーの就役当時は名鉄には踏切が多く、列車の接近を知らせるためにほとんどミュージックホーンを鳴らしっぱなしにしていることもあったとされている。
しかし沿線の宅地化が進んだことから騒音問題となり、現在では駅到着・通過時にまれに使用されるのみとなっている。
ちなみに1007Fが「ブルーライナー」になっていた際は曲が変更され、名鉄グループの社歌「しなやかな風」になっていた。ブルーライナーは他の編成よりもミュージックホーンを鳴らす機会が多く、富貴駅など通常の運用では鳴らさないような駅でも鳴らしていた。
このほか1970年代に短期間ながらミュージックホーンのメロディが変更されていた時期があるという。
日本国有鉄道
四国総局に配置されたキハ58の一部にミュージックホーンが装備された。装備車両はキハ80系を思わせる飾り帯が施され、「ヒゲ付」と呼ばれていた。
JR東日本
251系以降の特急形車両全てとE491系「East i-E」に装備されている。255系とE351系のみ静岡鉄道のミュージックホーンに似た旋律になっていた。
またE261系も専用のミュージックホーンが装備されている。
警笛ペダルを軽く踏むとミュージックホーンのみ、強く踏むとミュージックホーンとホイッスルが同時に鳴る。
JR西日本
207系以降のJR西日本の電車全てに装備されるようになっている。一般車両用と特急車両用の2種類がある。JR東日本の車両と同じく警笛ペダルを軽く踏むとミュージックホーンのみ、強く踏むとミュージックホーンとホイッスルが同時になる形のため、JR西日本管内で装備車両が走行する区間であれば、普通に聞くことができる。またJR東海管内でもホイッスルと同時ではあるが結果としてミュージックホーンを聞くことが可能になっている。なお、JR東海保有の285系3000番台車はJR東海で唯一のミュージックホーン装備車両であり、223系5000番台と通常は併結運用されているJR四国5000系にもミュージックホーンが取り付けられている。
87系気動車にも製造当初は装備されていたが営業運転開始時にEF81の汽笛を録音した電子警笛に差し替えられた。
JR九州
つくばエクスプレス
保有全車両に装備されている。
公式には言及されていないが、オペラ「魔笛」の「夜の女王のアリア」が元ネタではないかと推測する声が上がっている。
京成電鉄
京王電鉄
2代目5000系に装備されており、「京王ライナー」運用時に鳴らされる。第1編成である5731Fは他編成と異なる音源を使用していたが、夜間運用の多い京王ライナーでは騒音問題につながるとして第2編成以降と同じ音源に変更された。
大井川鉄道
小田急電鉄から譲渡された3000形に小田急時代と同じオルゴールを装備していた。
長野電鉄
2100系「スノーモンキー」にはJR東日本時代と同じミュージックホーンが装備されている。
上信電鉄
6000形にJR東日本のものと同じミュージックホーンが装備されていた。
富山地方鉄道
10020形と14760形に静岡鉄道のものに似たオリジナルのミュージックホーンが装備されていた。
北近畿タンゴ鉄道
KTR001形に「虹の彼方に」をオルゴール調にアレンジしたミュージックホーンが装備されていた。