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概要

冲方丁サイバーパンクSF作品。

ハヤカワ文庫JAより2003年に『圧縮』『燃焼』『排気』の全三巻構成で刊行され、第24回日本SF大賞受賞した。

ウィリアム・ギブソン作品の翻訳で有名な黒丸尚を意識した文体が用いられており、とりわけ主人公バロットの人生観が大きく変化する中盤から終盤にかけてのカジノでのギャンブルシーンの描写は絶賛されている。


大今良時によってコミカライズされている。

2005年12月にGONZO製作でアニメ化されることが発表されていたが、2006年12月21日に製作中止が発表。

その後、2010年11月からGoHandsによる三部作劇場アニメ作品が公開された。脚本は原作者の冲方丁自身が手がけている。


あらすじ

男性型社会を象徴するかのような高層塔型建築が並び立つ華やかな工業都市・マルドゥック市。

そこで暮らす15歳の少女娼婦ルーン・バロットは、ショーギャンブラーにしてオクトーバー社の汚れ仕事を引き受ける男・シェルの専属娼婦として虚無感を抱えながら日々を送っていた。


そんなある日、バロットはシェルによって突然車ごと焼き殺されかける。重傷を負ったバロットだったが、シェル及びオクトーバー社の犯罪を捜査していた委任事件担当捜査官のドクター・イースターと、人語を話す金色のネズミ型万能兵器ウフコック・ペンティーノにより救出され、マルドゥック・スクランブル09法に基づく禁じられた科学技術の特別使用によって一命を取り留める。


治療によって電子干渉(スナーク)能力とそれに伴う超人的な戦闘能力を手に入れたバロットはウフコック、イースターと共にシェルの犯罪を立証するべく事件を追うことを決意。

一方、バロットを殺し損ねたことを知ったシェルは、ウフコックのかつての相棒であり、凄腕の委任事件担当捜査官ディムズデイル・ボイルドを雇い、彼女たちに差し向けるのだった。


登場人物

主要人物

声:林原めぐみ

本作のヒロイン。12歳の時に父親に強姦され、一家離散後に預けられた福祉局の施設で性的虐待を受けたことを切掛に売春婦となった少女娼婦。

シェルの専属娼婦として子飼いにされていたある日、裏取引を控えた彼によって焼殺されかけたところをシェルをマークしていたウフコック達に救出され、『マルドゥック・スクランブル-09法』に基づき、全身に電子干渉機能と代謝機能を持つ金属繊維による人工皮膚を移植されて一命を取り留める。

これにより全身が高レベルな一種の電子情報端末と化し、手を触れずにあらゆる電子機器への操作・干渉(スナーク)が可能となった他、彼女自身の持っていた適性が技術と合致、感覚と意識の加速によって常人を遥かに超える身体能力と知覚能力を獲得することになった。

当初は閉鎖的で虚無的な性格だったが、ウフコック達とシェルの犯罪を追う中で様々な人々との出会いや戦いを経て、力を得たことに伴う責任やルール、真の強さや勇気、他者を愛することとは何かを身を以って学び、精神的な逞しさと生きることの意義を築き上げていく。


声:八嶋智人

委任事件担当捜査官。人語を解する金色のネズミ型万能兵器(ユニバーサルウェポン)。

終戦前の宇宙戦略研究所で開発され、周囲の人間の感情を匂いとして読み取る能力を持っており、研究所では「金の卵」と呼ばれた。肉体が多次元構造になっており、亜空間に収納してある物質を用いて様々な武器や道具に変化(ターン)させることができる。兵器として非常に強力だが、彼自身の意志を無視し、適正な範囲を逸脱して「濫用」されるとセイフティが発動、彼の心身に多大なダメージを与えてしまうことになる。

誠実で思慮深い性格であるが故に、物事を真面目に考えて悩んでしまう癖があり、名前と引っ掛けて「煮え切らない」と周囲から揶揄されることもある。尻尾をつままれて持ち上げられると怒る。


  • ドクター・イースター

声:東地宏樹

委任事件担当捜査官。かつては宇宙戦略研究所の研究者であり、人体改造手術の名人だったが、戦争終結による研究所の廃棄が決定された際、ウフコック等と共に研究所を出てマルドゥック・スクランブル-09法に基づく生命保全プログラムに従事するようになった。シェルに殺されかけて全身大火傷を負ったバロットを救い、彼女の証言を元にシェル及びオクトーバー社の犯罪を追う他、主治医としてバロットの肉体のメンテナンスも行う。

当初、痩せぎすで髪はカオス理論に基づきまだらに染め、派手な色の白衣を着込み、多くの小物をぶら下げているというさながらパンク青年のような容姿であったが、バロットの不興を受け、裁判やカジノでは服装、髪型を改めている。ボイルドの無睡眠化に自分の研究が関わっていることに責任を感じている。バツイチ


声:中井和哉

オクトーバー社のショーギャンブラー。

オクトーバー社傘下のカジノを複数経営しており、裏ではオクトーバー社のマネーロンダリングも行っている。裏取引が行われるとその記憶を抽出して自身から除去する手術を受けているが、その度に子飼いにしていた家出少女や少女娼婦を殺害し、その骨をブルーダイヤに加工するという「儀式」を行っている危険人物。ある大きな取引に備えてバロットを殺そうとするも失敗、彼女達が自分の犯罪を立証しようとしてることを知り、ボイルドを雇って再びバロットを抹殺することを目論む。


声:磯部勉

圧倒的な戦闘力を持つ委任事件担当捜査官であり、かつてのウフコックの相棒。

元はエリート軍人であったが、ある事件で廃人寸前となっていたところを宇宙戦略研究所に保護され、開発されたばかりのウフコックと出会い、パートナーシップを結んだ。研究所の廃棄後はウフコック、イースター等と共にマルドゥック・スクランブル-09法に基づく生命保全プログラムに従事していたが、とある事件においてウフコックを「濫用」したことで彼と決別、現在はオクトーバー社の下で委任事件の捜査に当たっている。

研究所で擬似重力(フロート)を発生させる能力と一切の睡眠を必要としない肉体を与えられており、これは銃弾の軌道を逸らしたり、立ち位置を変化させる等、幅広い応用性を持つ。しかし無睡眠化とウフコックの喪失、そして過去の事件によってウフコックを求める以外のあらゆる感情を失い、巨大な虚無感を抱えるようになっている。

武器として64口径という極めて巨大なリボルバーを使用するが、これはかつてウフコックがターンし、残していった物。

続編にして前日譚である『マルドゥック・ヴェロシティ』における主人公でもある。


バンダースナッチ・カンパニー

依頼による誘拐及び殺人を生業とする集団で、人体を扱う畜産業者として潜伏しており、殺害・解体した犠牲者のパーツのうち、各々が気に入った物を生きた状態でコレクションして残りを裏市場に売りさばいている臓器フェティシスト集団。全員が元軍人であり、脳に通信装置を、網膜にディスプレイデバイスを移植しており、それを用いて高度に連携をとることが可能。ボイルドの指示でバロットを狙う。

  • ミディアム・ザ・フィンガーネイル

声:若本規夫

殺害した人間の指を自分の指に移植している。軍では斥候をしていた。

  • ミンチ・ザ・ウィンク

声:三宅健太

元爆撃パイロットで筋骨隆々の大男。殺した人間の眼球を全身に移植している。

  • フレッシュ・ザ・パイク

声:脇知弘

情報管理及び電子戦担当。殺害した女性の乳房を全身に移植しており、特に気に入った物はホルモン注射で育てている。

  • レア・ザ・ヘア

声:かないみか

殺害した人間の髪の毛や頭皮を移植している。女性のようだが、元は男性。ワイヤーカッターの使い手。

  • ウェルダン・ザ・プッシーハンド

声:田中正彦

リーダーであり元従軍牧師。自身の左掌に殺害した女性の性器を移植しており、腕の筋肉の隙間を通して膣腔まで移植している。


楽園

かつて宇宙戦略研究所と呼ばれていた施設。常識では信じられないような知識と科学技術の宝庫だが、現在は社会から完全に隔絶した環境に置かれている。

  • プロフェッサー・フェイスマン

声:有本欽隆

宇宙戦略研究所の創始者"三博士"の一人。悪性の腫瘍により、延命のために首から下を切除して「フェイスマン」の名前の通り、生命維持機能のあるケージに繋がれた頭部だけで生きている。

  • トゥイードルディ

声:小林由美子

生まれつき体に重い障害があり研究所に預けられた青年。体を治療しトゥイードルディムの行動意識を移植することで体を動かせるようになった。"完全な個体"をテーマに改造されており、呼吸や食事をしなくても活動することができる。

  • トゥイードルディム

声:浪川大輔

トゥイードルディの言語意識により人語で会話できるようになったイルカ。気さくかつアバウトな性格で、トゥイードルディとはホモ・セクシャルの恋人同士。


エッグノックブルー

シェルが経営するマルドゥック市最大手のカジノであり、業界トップクラスのディーラー達が集う。このカジノの最高額チップにシェルが自身から除去した取引や殺人に関する記憶データを隠し、オクトーバー社への牽制等に用いていたことを突き止めたバロット達は迅速かつ合法的にデータを入手すべく、壮絶なギャンブル戦を挑むことになる。

  • ベル・ウィング

声:藤田淑子

その世界では名前を知らないと言われているほどの凄腕のベテラン女スピナー。

バロットとのルーレットでの対決の中で語らいながら、彼女の見せる能力と才能を評価、「女としてのあり方と強さ」を教え、虚無的だった人生観に多大な影響を及ぼす。

  • マーロウ・ジョン・フィーバー

声:小野大輔

ディーラー。優秀な技量を持つが、自身の能力を過信するあまり、バロット達とのブラックジャック勝負で仕掛けを逆手に取られて完全敗北を喫する。

  • アシュレイ・ハーヴェスト

声:土師孝也

エッグノックブルーのハウスリーダーであり、最強のディーラー。

シャッフルしながら全てのカードの位置を文字通り自在に操る超絶技術や寸分違わずその位置を把握するという人外の認識力に加え、バロットのプレイを一目見て手袋に化けて助言を与えていたウフコックの存在に気づくという観察力や洞察力まで持ち合わせる圧倒的実力者。

バロットとブラックジャックで激戦を繰り広げるが、その中でも変化・成長していく彼女をベル同様に気に入り、「運」の本質とは何か、「生き残るために必要な強さ」とは何かを語り、敵ながら彼女を大きく進化させることになる。


オクトーバー社

  • クリーンウィル・ジョン・オクトーバー

声:小室正幸

現在のオクトーバー社の社長で、シェルの取引相手。グッドフェロウ・ノーマン・オクトーバーの傀儡。

  • オクタヴィア

声:勝田晶子

クリーンウィルの娘。


用語

  • マルドゥック・スクランブル-09法

本作のタイトルにもなっているマルドゥック市における人命保護を目的とした緊急法令「マルドゥック・スクランブル」の一つ。保護証人の生命保護のために委任事件担当捜査官および保護証人に禁じられた科学技術の使用を認めるというもの。但し、09により禁じられた科学技術を扱う者は常に自身の有用性を社会に対して証明し続ける必要があり、社会にとって危険な存在と認識されればいつでも「廃棄処分」を受ける可能性がある。

  • 委任事件担当捜査官

警察機関とは別に事件当事者からの依頼を受け、依頼者にとって有利な結果になるように事件の捜査・解決を行う職業。俗称として「事件屋」と呼ばれる。報酬はブロイラーハウス(法務局)から支払われ、事件の規模によっては超高額となる。ライセンス制であり、人間でないものであってもライセンスを取得することができる。担当する事件に関係する場所、物品に関して非常に強大な権限を持つが、捜査過程における行動や解決の行方によっては連邦法違反の容疑者として特定される可能性がある。

しかし依頼者である事件当事者が失踪または死亡すると事件不成立として処理されるため、事件当事者間の利害関係や情勢次第では委任事件担当捜査官同士の交戦が発生するケースもある。

  • オクトーバー社

マルドゥック市の娯楽産業を総括する大企業であり、09と同様に禁じられた科学技術の保有を許された存在の一つ。

元は化粧品や香料を扱う大手メーカーだったが、終戦後にかつての宇宙戦略研究所の創設者である三博士のうちの一人が都市に市民の望む快楽と娯楽を供給することで研究所の科学技術の社会的有用性を証明することを目的に合流、マルドゥック市を実質的に支配する規模にまで成長する。過去のある経緯から、現在はウフコックやイースターら09関係者と敵対関係にある。


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マルドゥック・スクランブル攪拌

マルドゥックバロット&ウフコック


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