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スチームボーイ

すちーむぼーい

『スチームボーイ』とは、大友克洋氏が監督した長編アニメ作品。19世紀のイギリスを舞台とした空想冒険活劇並びにスチームパンク作品である。2004年に劇場公開された。また、漫画やゲーム作品としても販売されたこともある。
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僕は、未来を、あきらめない


概要

『スチームボーイ』は、海外との共同制作を経て、総製作費24億円、製作期間9年をかけた長編アニメ作品である。かつて近未来を描いたアニメ『AKIRA』で世界中の注目浴びたが、今回は時代を遡り、ロンドン万国博覧会の開催を間近に控えた19世紀イギリスを舞台にしており、所謂産業革命の時代における時代背景設定や、蒸気機関によって生まれたメカデザイン(または、存在したかもしれないメカ類)を徹底的に拘ったスチームパンク作品である。


総作画枚数18万枚で、当時ではあまり広く浸透していなかった3DCG等によるデジタルと、昔ながらの手描きを融合させた緻密な映像表現で描かれている。しかし公開しての興行収入は11億6000万円となり、当初の予想よりも業績を残せなかった。


監督によると、題名は鉄腕アトムの米題『ASTRO BOY(アストロ・ボーイ)』のオマージュであると言う。


映画以外には2005年6月9日に映画本編のIFストーリーを描いたPlayStation2専用アクションゲームがバンダイから発売し、月刊マガジンZにて2005年8月号より衣谷遊氏が作画を務める映画本編の前日譚となる漫画作品が連載、単行本上下巻が発売された。


ストーリー

19世紀半ば、世界初の万国博覧会を目前にしたイギリス。研究のため渡米中の発明家・父エディと祖父ロイドの帰りを待つレイ少年もまた、発明が大好きな男の子だ。そんなある日、レイのもとに謎の金属ボールが届く。祖父のロイドからだ。

すると今度は、父と祖父をアメリカへ招いたオハラ財団の使者と名乗る男たちが現れ、ボールを奪おうとする。自作の一輪自走車に乗り、ボールを抱えて逃げ出すレイ。だが蒸気歯車メカで追いかけてくる男たちに捕まり、万国博覧会のパビリオンに閉じこめられてしまう。

そこでレイはアメリカにいるはずの父エディと再会し、金属ボールの秘密を知る。超高圧力の蒸気を高密度に封じ込めた球体。それは人類の歴史を塗り変える力を秘めた驚異の発明〈スチームボール〉だったのだ! 財団はその力を兵器として世界中に売りさばこうとしていた。

「おじいちゃんは、戦争のためにスチームボールを発明したんじゃない!」

レイと財団のボールをめぐる争いは、やがてイギリス軍までが出動する大騒ぎになる。その騒動の中、スチームボールのさらなる秘密が明らかに……。科学とは、人類の希望なのか、それとも禁断の知識なのか。科学の持ちうる真のパワーを信じ、レイは《スチームボーイ》となって大空へ飛びたつ!


※公式HPより抜粋

登場人物

(声:鈴木杏/英:アンナ・パキン

本作の主人公。13歳。

発明家であるスチム家の発明好きな少年。父・エドワードや、祖父・ロイドのことを誇りに思っており、2人のことを侮辱されると激怒する一面がある。

ある日、ロイドから送られてきたスチームボールをきっかけに一連の事件に巻き込まれてしまう。この事件を通してロイド、エドワード、ロバートらの科学に対する考え方に触れる。

(声:小西真奈美/英:カリ・ウォールグレン

本作のヒロイン。14歳。

オハラ財団会長チャールズ・オハラ・セントジョーンズの孫娘。高飛車かつ、気紛れで典型的なお嬢様である。「自分がこれだ」と思ったとおりに世界が動いていると勘違いしている。裕福な家で育ったせいか、世間知らずな発言が目立つ。サイモンが頭の上がらぬ人物でもある。

(声:中村嘉葎雄/英:パトリック・スチュアート

65歳。レイの祖父。

アメリカのオハラ財団の協力の元、アイスランドで発見した特殊な液体を動力源としてスチームボールを開発することに成功する。だが完成と引き換えに事故が発生し、同時に息子のエドワードは瀕死の状態になってしまう。

この一件で、科学への考え方を変えるが、皮肉にもエドワードと考え違えてしまう。

その後、スチームボールを悪用しようとするオハラ財団と、財団と協力的になったエドワードの陰謀を阻止しようとする。

  • ジェームス・エドワード・スチム

(声:津嘉山正種/英:アルフレッド・モリーナ

ロイドの息子でレイの父親。45歳。ロイドからは「エディ」というニックネームで呼ばれている。

スチームボール開発の際に大量の蒸気を直に浴びてしまい、右腕と右目付近に大怪我を負ってしまった。当初は科学への見解を慎重にしていたが、この大怪我がもとで一転、皮肉なことに慎重的になった祖父とは違える形で「科学は力である」と認識してしまった。

レイと再開した際は火傷により頭髪が減り、右頭部には火傷跡を隠すためか鉄仮面を被り、右腕など身体の一部が機械化しており、まるで「悪の科学者」とも言える姿へと変貌していた。

オハラ財団の出資で多くの発明品を生み出していくが、どれも圧倒的な破壊力を持つ兵器ばかりを造っていた。スチーム城を究極の発明とすべく、計画を進めていった。ロバートとは研究仲間もといライバルである。

(声:児玉清/英:オリヴァー・コットン

「鉄道の父」と呼ばれるジョージ・スチーブンスンの息子であり発明家。

イギリス政府内部に力を持っており、兵器開発を担当していると同時に、鉄道会社も運営している(劇中では言及されていないが)。エドワードとはライバル関係にある。

科学は人類の幸せの為、という考え方を持つなど、エドワードとは違った考えを持つが、それが皮肉にも最強の軍隊を作り上げる事となる。発明家として優秀だが、独創性にかけてしまい、それがエドワードとの差を生み出す結果となる。

  • デイビット

(声:沢村一樹/英:ロビン・アットキン・ダウンズ

25歳。ロバートの部下。

蒸気機関に対する豊富な知識を有しており、時にはレイを助けようと大胆な行動を見せることもある。だがエドワードの画期的な発明を垣間見て、ロバートが失脚することを察知すると、ロバートに取って代わろうとレイやスチームボールを利用しようと考えるなど、科学者の違う一面を見せた。

  • アーチボルド・サイモン

(声:斉藤暁/英:リック・ジーフ

46歳。オハラ財団の雇われ社長。

スチームボールの威力を目の当たりにし、それを軍事利用したビジネスに利用しようと画策する。さらに万国博覧会を利用して、各国の軍事顧問たちにエドワードの発明した兵器を売り込もうとする。

冷徹さもあり、平然と打ち殺す様に命令を下すこともあるが、会長の孫娘であるスカーレットには頭があらない。

  • アルフレッド・スミス

(声:寺島進/英:マーク・ブラムホール

サイモンの部下。

財団の裏仕事を任されており、スチームボールの回収を命令された1人で、執拗にレイを追い回すこととなる。ボルチャルド銃を携帯している。物語終盤、中央動力室で大型のクレーン「アイアンハンド」を使って追い回すが、仕留めたと確認しようとした時、レイが自身の所に突っ込んで来たことに驚いた際に操作を誤り、自らの手でアイアンハンドを自身の居る制御室へと突っ込ませてしまい、あっけない最期を迎えた。

  • ジェイソン

(声:稲田徹/英:デヴィッド・S・リー

サイモンの部下。

アルフレッドと同様に財団の裏仕事を任されている。大柄な体格で、アルフレッドとは対照的。物語終盤では飛行兵より大きい「大型飛行メカ」に搭乗してレイを追い回すが、その途中でロバート達が機関車でスチーム城を堕とそうとしているのを見つけ妨害するのだが、レイにその隙を突かれてレイの飛行メカの蒸気を上に押し当てられ、そのまま川の中へと墜落する。

  • レイの母

(声:相沢恵子/英:キム・トーマソン

エドワードの妻でレイの母親。

オハラ財団に出向しているエドワードやロイドに代わって家を支えている。

自宅にオハラ財団の者達が押し入った際はジェイソンの顔面を座布団で張り倒して足止めすると言った行動をとった。

発明好きの息子に手を焼いているが、それでも母親として息子を大切にしている。

  • エマ

(声:小林沙苗/英:ポーラ・J・ニューマン

レイの幼馴染の少女。

親の都合でスチム家に泊まっていたところで、急な事件に巻き込まれてしまった。

実は初期シナリオではヒロイン枠であった。漫画版では料理上手として描かれている。

  • トーマス

(声:日比愛子/英:モイラ・カーク

エマの弟。

エマと一緒にスチム家に泊まっていた。

オハラ財団がスチム家自宅に押し入った時は二階でまだ寝ており、部屋を確認するため扉を開けたジェイソンに起こされるが、直ぐに二度寝に入る。

(声:森ひろ子

イギリス女王。

万国博覧会の開会式に出席するが、オハラ財団との戦闘が始まる直前に元帥の計らいによって会場を離れた。

  • 元帥

(声:阪脩/英:オリヴァー・モアヘッド

イギリス海軍元帥。

オハラ財団の兵器取引を阻止するため、軍と警察を出動させた。自身は軍艦に乗り込み指揮を執る。艦砲射撃で優勢に立ったと思いきや、スチーム城の登場を目の当たりにし、その脅威に愕然とする。


登場メカ

レイ作成メカ

  • 一輪自走車

祖父ロイドの残した『ロイドノート』にあった設計図を基にレイが造り上げた蒸気機関式のモノホイール。本作品を象徴するメカ。

座席後部に搭載された小型蒸気機関は人力による走行を補助するものであり、仕組み的には電動アシスト自転車に近い。

工場などからくすねてきた部品を用いてようやく完成にこぎつけたが、完成したその日に歯車メカとチェイスし、最後は歯車メカと機関車に挟まれて壊れてしまう。

  • 飛行メカ

蒸汽男孩.临摹

起動したスチーム城へと向かうため、墜落した飛行兵の機関部をその場で改造して造り出した即席の飛行メカ。一輪自走車と同じく、本作を象徴するもう一つのメカ。

構造、飛行方法はまさに「超簡易化、超小型化したスチーム城」と言えるもので、スチームボールを動力源として組み、両側のグリップを握る事で下部にある5個のノズルからボールの超高圧蒸気を噴射し飛翔、レイの重心でコントロールする。

最後はスチームボールをスチーム城に戻したため代わりに即席の蒸気タンクを付けて中央動力室を飛翔、レイをコントロールルームへと送り届けた所で蒸気圧を使い果たし、役目を終えた。


オハラ財団

  • 潜水艦

本編冒頭、アイスランドの洞窟で採取したスチームボールの超高圧蒸気の素となる鉱水を輸送するために使用した、オハラ財団の潜水艦。

魚をイメージした様な姿で、船腹に3対のオール、船尾にスクリューを1機備えている。潜水艦とは言えども、浅い深度でしか潜れない。

スチームボールを持って一輪自走車で逃走するレイを追跡するために使用されたオハラ財団の重量級自走蒸気機関(蒸気自動車、またはトラクションエンジンに当たる蒸気メカ)。正式名称は「ジャイアントデスピア」。

座席は操縦座席となる前部と、蒸気機関の圧力調整を行う後部の2つに分かれており、2人1組で操縦する事になる。最高速度などは明記されていないが、線路を走る蒸気機関車に追い付くくらいの速力は軽く有している(舗装されていない道路において)。

捕獲用の為か、2本のアームが備え付けられているが、元々は荒れ地を整地するために開発されたメカであるため武装はない。しかし、当作品では最初にインパクトを与えた重量級メカとして印象付けた。因みに水上を移動することもできる(正確には水陸両用ではないと思われるが、川に没したはずの歯車メカが、そのまま川を下っている)。

  • カニメカ

列車に乗るレイ(厳密に言えばスチームボール)を鹵獲するために用いられた飛行船に吊り下げられる形で搭載されたメカ。

トラクションエンジンに車輪ではなく蟹のような3対のアームを下部に取り付けた様な外見をしており、機関士二人係りで運用する。

劇中ではレイが乗る客車の屋根を剥がすのに用いられたが、本来の用途は遠隔地への鉄鋼材運搬である。

  • スカーレット号

オハラ財団のスカーレット専用蒸気船。双胴型で、船体中央部に巨大な動輪を備えている。スカーレットがアメリカからやってくる際に使用された。

  • 潜水艇

レイとエドワードが水中にあるスチーム城底部の修理の為に使用した2人乗り用メカ。水滴型(尖った方が下)にも似たユニークなデザインで、下部にスクリューが付いている。定期的に浮上して空気を入れ替える必要がある。

  • 蒸気兵

オハラ財団が誇るニューモデルとしてお披露目された蒸気式パワードスーツを身に纏った兵士達。

外見は昔ながらの甲冑で、背中に背負った蒸気機関の動力がロッドを介して手足に伝わる機構となっており、これによって人力を増幅させる。

デモンストレーションとして財団パビリオン内に突入して来たスコットランドヤード達を相手に猛威を振るい、手にしている中折れ式の大口径砲(グレネードランチャーの様な物)で蹴散らしていった。

大口径砲のグリップ内には格闘専用の斧が内蔵されている。

  • 飛行兵

オハラ財団が科学の粋を集めて開発した空飛ぶ兵団。

防弾対策としてか甲冑を纏っているが、中には甲冑ではなく飛行服を着た者もいる。

飛ぶためのメカは蒸気機関による単発レシプロ機(翼は2対)で、半ばグライダーに近い感覚で操ることとなる。

兵士は腹部に爆弾を付けており、落とす時は自分の手で持って外し、任意の目標に落とす。

操縦に不慣れな者は墜落することもあり、その中の一人は万博博覧会に突っ込み、持っていた爆弾が起爆して大騒ぎとなった。また、飛行服を着た別の飛行兵はロバートの工房近くに墜落し、その残骸はレイの飛行メカへと改造された。

  • 大型飛行メカ

ジェイソンが乗り込んだ大型飛行メカ。一般の飛行メカより2回りは巨大な機体で、しかも双発機である。ただし搭乗方法は一般飛行メカと同じで、グライダー感覚で操ることとなる。

武装は2丁の機関銃に2つの回転ノコギリ、さらに数発の爆弾とかなりの重武装を誇る。

  • 水中兵(ボーフラメカ)

サイモン曰くオハラ財団の最終兵器である水中兵団。

水中から忍び寄り、襲い掛かるのだが、今一つ活躍の場面がなく、印象にもかけてしまう不運な兵器。何分、防水性や耐圧を考慮してか、頑丈に造る必要があり、それはそれで防弾性にもつながるが、装備が前方に伸びる2本のアームしかなく、さらに陸上では動きが鈍いだけでなく視界が非常に狭い。故に階段で足を滑らせるなどと言うハプニングも・・・。

  • クモメカ

オハラ財団が開発した陸上兵器の1つ。

キャタピラではなく、8本の鉤爪状の脚で移動する(蜘蛛のように全方位に足が配置している訳ではなく、前方方向に4本、後方方向に4本、と固定された状態になる)。武装は主砲が1門のみ。

登場シーンは水中兵並に極めて短いが、英国軍の蒸気戦車と渡り合っている等、こちらの方がかなり奮戦している。また足を採用したことによって、敵の弾丸が車体下部を狙っても、キャタピラではなく細長い脚であるがたえに、すり抜ける効果もあった模様。

  • アイアンハンド

スチーム城の基礎工事の際に用いられた2基のマジックハンドタイプの巨大クレーン。

工事終了後、中央動力室の壁の一部として封印されていたが、アルフレッドの手によって起動し、スチームボールを設置するために中央動力室へと来たレイに襲い掛かる。

操作は制御室にあるグローブ型のトレースシステムによって行われる。

スチームボーイ

アイスランドの洞窟で発見された鉱水から生成した超高圧蒸気を封入したサッカーボール程の大きさの金属ボール。本作の重要アイテム。

スチーム城を動かすための動力源で、計3個存在する。

最初のスチームボールの蒸気封入実験の際に起きた事故によりエドワードは大量の蒸気を直に浴び、身体を一部機械化する要因となった大怪我を負う。

  • スチーム城

蒸汽男孩.临摹

本作最大の蒸気メカで、ロイドとエディがオハラ財団の支援を受けて設計・開発した“究極の発明”である黒鉄の天空城

中央動力室に設置された3個のスチームボールから送られる超高圧蒸気によって城全体の機構が稼働し、城の下部に設置された多数の噴出孔から蒸気を噴射することにより巨大な城を空中へと浮遊させている。

発動前は外壁を纏ってパビリオンに偽装していたが、発動時にすべての外壁を外し、さらに水中に隠れていた大部分も、浮遊したことによって姿を見せた。

防衛用の武装も施してはいたが、計画の繰り上げの影響であまり使用されず、殆どは下部噴出孔から噴き出す膨大な蒸気によって周囲をたちまちに凍らせていくという方法で対処した。だが2個のスチームボールの出力だけで賄おうとした無理がたたって、各パイプや機関部が激しく消耗、後に3個のスチームボールを組み込まれたが、英国軍との戦闘によるダメージと、これまでの無理がたたってテムズ川に入った所で城は崩壊し、無理な扱いをしたためかスチームボールは破裂して大爆発を起こし、蒸気が広範囲に広がって凍結し、巨大な氷塊となったが、程なくして氷塊は崩壊し、雪の様にロンドンの街に降り注ぎ、スチーム城であった瓦礫はテムズ川の中へと沈んでいった。

イギリス軍

  • 英国軍蒸気戦車

ロバート・スチーブンスンが開発に協力した兵器。武装は主砲1門のみ。元は農業用トラクターで、それを戦闘車両に改良を施したものとされている。半円柱形の車体の左右に巨大なキャタピラを1対備え、車体中央部には煙突が立っている。

座席は前部の砲手席と、後部の操縦席の2つに分かれている。砲手と操縦者ともに、装甲などで覆われてはいない。それでもオハラ財団に対して強力な対抗兵器として奮戦した。が、オハラ財団のクモメカや飛行兵によって破壊される車両も相次いだ。

  • 英国海軍戦艦

 英国海軍の大型戦艦。モデルは日本の戦艦『三笠』。大まかなデザインは三笠とほぼ一緒だが、煙突は並列配置式である。武装は連装主砲2基4門、単装副砲を両舷に14門等。オハラ財団のパビリオンに向けて2~3発の艦砲射撃を行った。スチーム城が姿を現してもなお、奮戦したものの噴出される蒸気によって氷漬けになってしまう。

  • 英国海軍駆逐艦(仮名)

スチーム城に砲撃を加えた英国海軍の駆逐艦(と思われる)。1門の砲を装備し、スチーム城に果敢に砲撃したが、やはり蒸気に呑まれて氷づけにされた。


評価

大友克洋氏が手掛けた新たな長編アニメーションとして、公開前から期待が寄せられていた。しかし、実際に公開されてからの収入が11億円台と低調(24億円の製作費に比してである)の結果に終わってしまった。これには様々な評価があるが、『AKIRA』の様な近未来ではなく19世紀と一気に遡った舞台としたこと自体へのギャップ感からの失速感もあれば、各登場人物の掘り下げが足りないとする声、声優ではなく俳優を多量に起用したことによる演技力への不満感、ストーリーの深みが無いとする声、等々、批評が目立った。

ただし、デジタルを取り組んだことによるカメラワークやアニメーション、メカニックの設定、蒸気の表現方法、美術背景の美しさ、時代背景の再現度、作品の雰囲気を捉えた音楽、等々、アニメーション技術としての完成度の面から見ると、多くの高評価を得ている事も事実である。

ストーリー構成や演技力等への批評こそ目立ったこそすれ、アニメーションとしての技術力の高さは好評を得ている事から、一概に成功したとも言い難く、かと言って失敗したとも言い難い。特に上記した3DCGを盛り込んだことによるアニメーション技術力の高さは、今後のアニメーションに多く導入されていくことからも、デジタル導入の先駆けとなった役割は大きいのではないであろうか(因みに、本作の前に公表された『大砲の街』が最初に初期的だが、デジタル技術が導入されている)。


制作において

制作期間

『スチームボーイ』は、制作期間を9年も費やしており、同時に製作費も24億円を途方もない金額となっていた。何故、これほどまでに製作期間が延びてしまったのか。その所以は、大まかに言ってしまえば、海外との共同制作の影響が大きいと見られている。プロットは1995年から着手されており、1996年におけるイギリスへのロケハンをまたいで、1997年には大友克洋氏の絵コンテを基にして制作に向かっていった。

しかし、海外からの要望(海外配給やプレゼンテーション等)に振り回される形となり、そのたびに脚本は変更されていった。村井さだゆき氏が参加するまで、少なくとも20稿以上のシナリオが作成されていったとも言われている。因みにこの時はヒロインがエマであったが、様々な意見を取り入れていった結果から、ヒロイン枠はエマではなくスカーレットとなった。

海外向けということもあって、単純明快なシナリオが良いんじゃないか、という意見もあったが、大友監督のやりたいところは残すべきだ、という意見もあったことから、その部分は残しておこうという話になった。大友氏いわく「ありきたりのストーリーにはしたくなかった」という考えを持っていた。村井氏も「勧善懲悪ではなく、歴史的な事件を交えながらも、各人物の複雑な関係にしたかった」という。その後も様々な意見提案があったが、1999年にようやくシナリオが決定した。


デジタルと手描きの調和

『大砲の街』で初期的(試験的)に導入されたコンピューターによる処理で、カメラワークに奥行きの表現を再現することに成功した。これを生かして、スチームボーイでは本格的な3DCGやデジタル技術の導入を行っている。またデジタルと並行して手描きアニメーションとの融合を成功させるために、リアルなキャラクター表現等に細心の注意が払われた。その為、1秒間に8枚から12枚の絵によって、キャラクターの滑らかな動きを表現されている。

デジタル処理や3DCGによって、これまでにないアニメーションの新しい表現を目指すという意気込みもあった。新しい映像表現を成し得る為の新しい試みでもある。『大砲の街』で得られた、ワンカットで進むような表現、背景の奥に突き進んでいくような奥行き感を応用。特にレイが乗る一輪自走車とオハラ財団の歯車メカによるチェイスシーンにおいては、このデジタル技術を導入したことによって、流れる背景などをスピード感のある映像に仕上げている。またデジタル技術や3DCGによって、メカニックを常に正確な表現を成し得る事も出来た。

デジタル技術等は、今作で最大の主役とも言える「蒸気」の表現に大いに役立った。変幻自在な常軌を、デジタル処理等によってぼかしを入れたりすることで、蒸気らしさを見せた。時にはキャラクターの気持ちを代弁するものとされることもあった。

また3DCGは、手描きアニメとの調和が非常に難しく、手間が必要以上に掛かってしまった、という苦労の面(時間的なデメリット)が発生してしまった。


音楽

スチームボーイのメインテーマ等の音楽は、様々な音楽家に依頼して出来上がったものの中から、音楽監督の百瀬恵一氏がチョイスし、海外の音楽家スティーブ・ジャブロンスキーを起用した。中には日本人音楽家で起用しようか、という人物もいた模様。音楽を制作してもらうにあたって、日本映画という枠に捕らわれない様に、ハリウッド的な(又は19世紀のイギリスさ)ジャブロンスキー氏に依頼したと言う。また音楽を演奏する過程で、生のオーケストラによる演奏を採用した。


キャスト

主要キャストにはアニメ声優ではなく、俳優を多く起用したことでも注目を集めている。主人公役を務める鈴木杏小西真奈美をはじめ、ベテラン俳優である中村嘉葎雄津嘉山正種児玉清らが参加している。

無論のことアニメ声優も数多く参加(脇役等が殆どだが)しており、ベテランとして阪脩が参加している。その他にも、声優としてデビューしてまだ4年目だった小林沙苗白石涼子佐藤利奈等も出演している。

しかし、俳優業の起用をしたものの、演技を合わせるのに大変苦労した話もある(中村氏等は特に苦労された模様)。それでも、『宇宙戦艦ヤマト』や『沈黙の艦隊』等で声優経験のある津嘉山氏などの活躍もあって、見事に完成させているのではないであろうか。


盗作疑惑

本作序盤の見せ場となるレイと歯車メカとのチェイスシーンで使用されるBGM「the Chase」の一部に映画公開前に発売されたカプコンのゲーム「モンスターハンター2(とMHP2)」の雪山戦闘BGM「白い闇の住人」と似ている部分があり、一部の人々から盗作疑惑が指摘された。

詳細や事の顛末については不明で、この一件が原因なのかは定かではないが「MHF」と「MHP2G」で雪山戦闘BGMは「白い闇の住人」から「怒れる雪獅子」に差し替えられ、モンハンシリーズの楽曲を収録した「狩猟音楽集」に「白い闇の住人」は未だ収録されていない。

ちなみに「the Chase」の方はオリジナルサウンドトラックに収録されている。

  • the Chase(問題の部分のみ)

  • 白い闇の住人


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