概要
国家の地理的位置関係が政治、国際関係に与える影響を研究する学問。歴史学、政治学、経済学、軍事学、文化学、宗教学、哲学などを総合し、国家戦略に科学的根拠と正当性を与えることを目的に発達した。
19世紀にドイツで唱えられた大陸国家系地政学と、これに対抗して英米で唱えられた海洋国家系地政学の2つの学派がある。第二次世界大戦後は後述の地政学の恣意性が批判され、軍事分野以外では、より客観性を強調した「政治地理学」として取り扱われることが多くなった。
投資分野では、特定地域の抱える政治的・軍事的リスクのことを「地政学的リスク」という。このことから地理的な条件が与える経済的、政治的、軍事的影響のことを勿体ぶった言い方で「地政学的に」と表現するが、単に「地理的に」と言い換えても差し支えないことが多い。
疑似科学?
地政学は政治的目的をもって成立した学問であることもあって、その客観性はかなり疑わしいものがあり、大陸系地政学にはドイツの地理的条件が、海洋国家地政学には英米の地理的条件が色濃く反映されている。はっきりと「疑似科学である」と言われることもある。
大陸系地政学は、生存圏理論がナチス・ドイツやファシスト・イタリア、大日本帝国などの膨張政策に利用されたことから廃れ、第二次大戦後の主流である海洋国家地政学も学術分野で顧みられることは少なくなり、主に軍事教育に限定されて取り扱われている。
大陸国家系地政学
大陸国家系は主にドイツで発展した学派。海洋国家とは異なり隣国と陸続きになっているため、戦略的縦深性の維持が困難で、生存圏の確保を志向するため比較的に統合を志向する立場にある。
発祥の地のドイツでは上記の理由で廃れたが、現在のロシアの膨張志向(ウクライナ侵攻など)はこの行動原理で読み解けるとする向きもある。
海洋国家系地政学
海洋、つまり海と関係性が深い国家で興った地政学であるので、国内の団結を強め、海軍力をもって制海権を獲得し、海上交通路を維持拡大、国内経済の成長を推進し、大陸国家を分断することを原則的な方針とする。