曖昧さ回避
- エロ漫画家、A-10 (pixiv:820557 twitter:@A10GADGET) 。可愛らしい絵柄に反した、匂い、淫語などのフェティシズムを盛り込んだ作風が特徴。
- 『落葉の大地を走れ』の登場キャラクター。
概要
「A-10 サンダーボルトⅡ」とは、フェアチャイルド・リパブリック社が開発したアメリカ空軍初の近接航空支援(CAS)専用の攻撃機。
戦車などの地上目標への攻撃と航空阻止により、地上軍を支援する任務を担う。
CASとは、友軍地上部隊に近接した地上目標を攻撃することで、友軍を直接的に支援する航空戦術のことを指す。
一歩間違えば誤爆につながる危険な任務であるため、CASには高い精度が求められることになる。
この任務に特化したA-10は、ジェット機としては例外的に速度性能を捨て、代わりに低空、低速での運動性能を追求している。このため、無誘導爆弾や機関砲による攻撃を精密に行うことが可能となっている。
この極端な性能は低燃費にもつながっており、長時間滞空して支援を継続することが可能である。
なお、低速とは言うがヘリコプターと比較すれば倍以上であり、ジェット機であることには変わらない。
対地攻撃用途の機体としてAH-64、AC-130、B-52などとしばしば比較されるが、根本的に運用が異なるので同列に比較するものでもない。
敵地上部隊からの反撃を想定し、機体はある程度の被弾を許容する堅牢な設計になっており、修理や整備の容易さにも気を配っている。ユニットコスト、運用コストも安い。
パイロットはバスタブとも呼ばれるチタン製のケージに守られており50mm砲の直撃でも耐える。機体全体でも23mm砲弾に耐えることができる。
それでも大型の対空兵器や戦闘機は天敵であり、ミサイルの直撃では撃墜の恐れがある。
古式の機体であり、コストは現代マルチロール戦闘機よりも大幅に安いのだが、電子機器などは旧式化が著しく幾度も退役が取りざたされた。しかしながら、現代戦争では非対称戦争と呼ばれる軍事的弱者との戦いがメインであり、正規軍との真っ向からの殴り合いはほとんど起こらないことから、A-10は期待された以上に大活躍を見せており、ろくな対空ミサイルを持たないテロリストやゲリラにとっては悪夢としか言いようのない存在である。
より高価なF-35などは撃墜されにくいものの、攻撃できる時間や弾数がA-10より大幅に劣ってしまう上に、陸軍が保有するAH-64攻撃ヘリコプターなどは装甲と火力に不安があるため、支援を受ける陸軍から見るとA-10の評価と信頼は非常に高いものとなっている。
マルチロール機が当然となった現代では、特定の用途に徹底的に特化した設計とそれに由来する独特なフォルムを持った特異な機体だが、そういったある意味ストイックなロマン性と活躍から軍用機ファンのあいだでは人気が高い。
退役軍人らのロビー活動により政治的生存力も非常に高く、複数回に渡って運用寿命が延長されている稀有な機体だが、使用者である空軍には非常に嫌われているためアップデートは低調である。
開発経緯
そもそもアメリカ空軍という組織は、誕生以来あまりCASに積極的ではなかった。これは当時の米国の最大の仮想敵が、太平洋の向こう側のソビエト連邦であり、これとの戦争が、地上戦よりも長距離戦略爆撃を主軸に置いたものになると考えられていたためである。
また、第二次世界大戦で日の目を見た核兵器があまりに大きな威力を有しており、これの運用を前提にすれば地上戦など発生すらしない、という考えもあった。
このため、米空軍の所属機は、大型爆撃機、高速爆撃機、もしくはこれを迎撃する高速戦闘機ばかりとなり、低空、低速での運用に向いた機体は存在しなかった。
この戦略の欠陥が明らかとなったのが ベトナム戦争である。
核の威力は絶大であるがため、米国の想定ほど気軽に使うことはできないものであった。核が使えないベトナム戦争は泥沼の地上戦が続き、CASは空軍の重要な職務となった。
しかしながら、空軍にはまともに使える近接支援攻撃機がなかった。用いられたF-100は速度が大きすぎてCASには向かず、海軍からA-1やA-7を借りてようやく間に合わせる羽目になる。
しかしこういった高速な航空機は搭載量や燃料の問題で空中待機は長くはできず、要請を受けてから飛び立つのでどうしても駆けつけるのは遅くなってしまう。
空中待機時間の長い機体ならすでにあったが、B-52は高高度爆撃機であり近接支援には向かず、AC-47も元は輸送機であり対空砲火には無力であった。
これを受け、アメリカ陸軍は空軍に頼らないCAS体制を確立すべく、攻撃ヘリコプターの開発に着手することになる。
結果として生まれたAH-1は優秀な攻撃ヘリコプターとして活躍し、攻撃ヘリコプターの可能性が大きく注目された。
攻撃ヘリの大活躍は米軍の戦略にも大きな影響を与え、ワルシャワ条約機構軍への阻止攻撃を担う戦力として大きな期待が集まり、更に高性能なAH-56の開発も(その時点では)順調に進んでいた。
攻撃ヘリに予算が取られるのではないかと危惧した米空軍は、事ここに至ってようやくCASに前向きな姿勢を見せ、CAS専用機を開発すべくA-Xプロジェクトを立ち上げる。
開発を主導したのは、F-15の開発でも重要な役割を果たしたピア・スプレイ。スプレイはベトナム戦争に参加したA-1のパイロットと議論を積み重ね、あわせて第二次世界大戦におけるドイツ、ソ連の対地支援機についても調査を進めた。
ユンカース Ju87をはじめ、ヘンシェル Hs129、ソ連のイリューシン Il-2/Il-10『シュトルモビク』なども念入りに調査しており、完成したA-10はこれらの機体との共通点も多い。
第二次大戦中Ju-87で目覚ましい活躍を果たしたハンス・ウルリッヒ・ルーデルをシンポジウムに招いたこともある。
要求仕様は以下の通りになる。
・低空、低速域での小回りが利くこと
・長時間地上支援が可能であること
・多数の武装を搭載可能であること
・強力な固定武装を有すること
・多少の被弾には耐えられること
のち、ノースロップのYA-9とフェアチャイルドのYA-10の二機が採択された。
このうちYA-10が、操縦特性は劣るものの、高い生存性と試作品からの改良箇所が少なくて済む点が評価され、A-10として正式採用となった。
採用後もあまりにも対地攻撃に特化した機体としてその存在を疑問視していた議会からの圧力を受けたが、A-7との比較テストで良好な評価を得てその存在価値を認めさせることに成功している。
……ただとにかく陸軍に予算を取られたくないという不純な動機のためか、開発中にコンセプトの精査があまり行われていない。
陸軍は若干の速度の優位ぐらいしか取り柄のなかったAH-56の将来性に見切りをつけ、夜間の奇襲攻撃に特化した先進攻撃ヘリコプター(後のAH-64)を開発していた。
一方A-10が対抗馬として見据えていたのはあくまでもAH-1、つまり対ゲリラ戦を想定した昼間攻撃機である。このギャップがA-10に数奇な道程を辿らせることになる。
機体の詳細
【機体から大きく上に突き出たエンジン】
サイドワインダーやスティンガーなどの赤外線(熱線)追尾式ミサイルがエンジンに命中すると機体の損傷が大きいため、地上斜め下から見て主翼で隠す配置になっている。これによりロックオンを攪乱(かくらん)している。さらに対空砲を主翼で受けることでエンジンに直撃しないように配慮している。
この高い配置は地上においても異物吸入による破損(FOD:Foreign Object Damage)を防ぎ、作動中の地上要員の安全を確保している。またインテークが後方にあるぶん、飛行時にもバードストライクでのFODを受けにくい利点もある。※先に機体に当たるなどして弾かれ、エンジンが守られやすい。
消火装置を備えるだけでなく、防火壁により被弾などによる発火の際に胴体へと被害が行かないような構造となっている。
そして、片方のエンジンが完全に故障した場合でも片肺で飛行が継続できる設計である。
また、民間小型旅客機用にも使われている非力なターボファンエンジンを採用することで赤外線排出量を抑えている。
エンジンの機体上配置は長らく非主流だったが現代では見直されており、ホンダジェットなど民間機で採用された例もある。燃費など飛行性能は高いという。
【主翼】
大きな直線翼を持ち、低高度低速度域で良好な運動性を発揮する。
高い短距離離着陸性能を活かし、悪条件下であろうとも大量の武装を搭載した作戦行動を可能にしている。適当な道路かちょっとしたグラウンドがあれば離着陸できる高いSTOL性能を誇るため、F-35のように整備された滑走路を必要としない。このことは前線での運用に大きなアドバンテージである。
限定的ながらもエンジンを防御する盾としても機能する。
翼の外側であれば片側が半分程度へし折れても飛行可能。普通の機体であれば墜落は確実だが、A-10は飛び続ける。
なお片翼では飛べない。A-10は胴体が揚力を産む形状にはなっていないのでF-15のように片翼の喪失に対応することは不可能である。
【双垂直尾翼】
赤外線追尾式ミサイルやFLIRから、エンジンの排熱を隠すように配置されている。
垂直尾翼が片方なくなっても飛行可能。まぁ大抵の機体もその程度なら飛べるが。
後ろから赤外線誘導ミサイルで撃たれた場合エンジンより先に大抵この部分が被弾するが、多くの生還例がある。
【格納してもタイヤが半分出ている脚】
不時着や胴体着陸するときのため。
胴体着陸しても胴体の損傷は警備で、垂直尾翼の下端が削られる程度の損傷で済むようになっている。
前方に引き上げるため、油圧喪失であっても脚が下りさえすれば風圧でロック位置に進めることが出来る。
タイヤ自体も被弾によりパンクしていたとしても十分に着陸できるようになっている。
また、後述のバスタブ装甲のおかげでタイヤがなくても胴体着陸でパイロットは助かると言われている。
7連装30mmガトリング砲。戦車を「地面ごと」耕してしまうA-10のリーサル・ウェポン。
総重量は驚きの1.8t。反動は片方のエンジン出力にも匹敵するらしい。
焼夷榴弾が混ぜて装填してあり、対人・対軽装甲目標への面制圧も行える。
ただしちまたで言われているように戦車を粉砕するほどの威力はない。外部部品を破壊することで中破に追い込むことは期待できるが。
これを機体の軸線状に積むために前脚は右に寄せられている。ニ系統のモーターと油圧駆動システムが積まれており(元々は低速用と高速用)、どちらか片方が生き残ってさえいれば作動可能となっている。
ちなみに、これがないと重心が狂って離陸すら不可能になるので、外して飛ぶ際にはコンクリートブロックなどを代わりに詰めておくのだとか。
ここまでくると機関砲を搭載した攻撃機というより機関砲に翼とエンジンとコクピットがついているという方が正しく思えてくる。
かつては1,800rpm・4,200rpmと、二つの発射速度を選択できたが、現在は3,900~4,200rpmに固定されている。瞬間火力が重要で1800rpmにあまり価値がないため。
余談だがこの火力を買われてCIWSに採用されていたりする。しかし陸上車両には排煙などの問題から採用されていない模様。
【高い抗堪性】
操縦系統は2重の油圧系、さらに予備として機械系が備えられている。
搭乗員はケブラー積層材の内張りが施されたチタン装甲(通称「チタンのバスタブ」)と前面からであれば最大20mmの砲弾に耐えるキャノピーで保護されており、GAU-8も弾薬の誘爆を防ぐために弾倉を空間装甲で保護している。誘爆したとしても爆風等は上方向へと抜けて外に逃げるようになっており、真上にあるコックピットのキャノピーなどが吹き飛んでしまうものの、操縦系統へのダメージが最低限となるようになっている。
さらに泡消火器を備えた自動防漏式燃料タンクも空間装甲として利用する構造となっている。
また、燃料システムは燃料タンク内部に配置して破損時に外部へ漏れることを防いでおり、配管は自己防漏式となっており、保護が難しい給油システムは給油時に取り付ける外装式となっている。
【修理の容易さ】
翼やエンジン、主脚等多くの部品を左右共通設計にすることで、設備・資材が限られた場所でも修理を容易にしている。また、外板を構造部材にせず、現地調達の資材で修理できるようになっている。
構造も可能な限り簡素化されており、2015年4月にはエンジン故障により片肺となったA-10Cのエンジン修理は一月かかると見積もられたが、たった5日で復帰させている。
前線近くの廃墟となった元基地で修理が行なわれたが、機体を人力で牽引し、エンジン架台はマットレスで代用などろくな機材がないなかでも短期間で復帰させられたことが野戦能力の高さを物語っている。
逸話
まずやたらと頑丈で片翼の三分の二が吹っ飛ばされても帰って来れるとまでいわれる。
もっと言うと――
- 対空砲で撃たれて胴体や主翼に400発近い穴が開けられた状態から数日で復帰。
- 携行型地対空ミサイルSA16ギムレット(9K310イグラ-1)で撃たれ、片方の方向舵(垂直尾翼)と尾部が吹き飛ばされて帰還、修理されて復帰。
- 地対空ミサイルで片方のエンジンカウルが吹き飛ばされて片肺になるも帰還、修理されて復帰。
- 地対空ミサイルで右主翼に大穴が開き油圧喪失、被弾の際の破片を吸い込み片肺になるも帰還。
- 胴体着陸したが垂直尾翼下端が地面に削り取られる程度で修理後問題なく復帰。
と言ったような逸話が一杯ある。
他にも(当時は)暗視装備がないので夜間飛行ができないはずなのに搭載したAGM-65 マーベリックの赤外線シーカー(カメラ)で代用して飛行すると言う無茶もしていた(視界が狭いためパイロット曰く、「壁の穴から覗いて操縦するようなもの」らしい)。
運用
A-10はワルシャワ条約機甲軍をぶちのめす無敵のタンクキラーとして喧伝されたものの、実際の性能としては上述したように対ゲリラ戦を想定した弱いものいじめ専用機である。
真っ昼間に長々と空の上を飛びながら兵装を小出しにしていくことに特化した航空機であり、実際の任務でもそのような仕事にばかり就けられることになる。
とびきり危険な任務であるSEAD(Suppression of Enemy Air Defence:敵防空網制圧)はF-16、F/A-18、そして無人機のワイルド・ウィーゼルの仕事である。
また防空脅威の残存を想定しなければならない深部攻撃、阻止攻撃は地形追随飛行が可能なF-15EやAH-64の領分となっている。
例えば湾岸戦争においては、AH-64による対レーダー攻撃を皮切りに、ありとあらゆる作戦機が危険な任務に駆り出された一方、A-10は他機が安全を確保して以降の掃討が主要任務となっていた。
制空権を確立して地上軍が活動開始して以降も、F-111やAH-64が夜間の阻止攻撃を敢行しイラク軍戦車を食い散らかす中、A-10は彼らの真似をしようとして一瞬で返り討ちに遭った。
本命の近接航空支援ですら、大部分は他の作戦に従事する機体が復路でついでに充てられており、A-10は近接航空支援全体の1/4しか担当していない。
高性能なセンサーも高速性能も地形追随飛行能力も持たないA-10は、中途半端な高度から敵をじっくり探すことができる、日中の最も安全な空域に於いてしか活動できないのである。
ただしその結果として、A-10の活動は敵味方の兵士からめちゃめちゃ目立つことになった。
従事者が圧倒的に多い陸軍の戦域の真上、低空、低速、かつ日中の活動がメインであったため、A-10の活躍は自然最も多くの人の目にとまることとなる。こうした陸軍兵士らがA-10の活躍を喧伝することにより、「他の機体がろくに支援してくれない中でA-10だけが俺たちを助けてくれた」というデタラメもいいところの神話が生まれることになった。
そしてその神話を真に受けた彼らの友人知人や議員たちを中心としてA-10の退役を断固阻止する勢力が誕生し、以降退役が持ち上がるたびに彼らのロビー活動によって退役が撤回されるということを繰り返している。
またイラクを叩きのめして以降、米軍の作戦は対テロ戦争が主体となった。
空軍は当然、ろくな地対空兵器も持たないテロ組織をいじめるのであれば、A-10がコスパに優れているのは事実である。アルカイダやISILなどテロ組織が出張るたびにA-10は駆り出されている。
そうした種々の事情もあって、夜間戦闘機能、さらなる誘導兵器の運用機能を追加されたり、主翼を交換されたりしながら2028年まで運用される見込みである。
よりコスパのいい手段として軽ジェット機やターボプロップ機による代替を模索するOA-Xも立ち上がったが、最終コンペにこぎつけたところで凍結されてしまった(成果の一部はSOCOMに引き継がれ、75機が導入される見込み。)
近年は中国の台頭により正規戦の危惧が強まった結果、2030年頃までに全機退役を目標として退役計画が進んでいるが、またひっくり返る可能性もゼロではない。
近年の運用史
2015年3月、アメリカ議会において、とうとうA-10向けの運用予算が削られる見込みとなり、ここに退役が現実の事態となり始めた。
この後継はF-35Bとなる見込みだが、こちらは配備どころか生産さえおぼつかない状態で、全機の退役には間に合わないと予想されていた。
そこで、A-10を補完するための軽攻撃機計画OA-Xが始動する。
アフガニスタン軍向けにアメリカでの機体製造とパイロット訓練が行われているA-29(エンブラエルEMB-314「スーパーツカノ」)や、空軍で練習機として使用されているビーチクラフトのT-6を攻撃機AT-6として転用する案が候補に挙がっていた。
テキストロン・エアランドはCOIN機であるスコーピオンを売り込んでいるが、空軍ではA-10のような単一任務にしか使えない機体は無用とする意見もあり、A-10よりユニットコストも高いこともあって採用の見込みはない。(ちなみに単一任務にしか使えない機体は空戦特化であっても無用とする意見もあり、F-15CやF-22ですら対地攻撃任務に投入して万能さをアピールする有様である)
なお、中東における情勢の変化による対地攻撃の必要性とF-35配備の遅れなどを理由に、A-10自体の退役を延長することを検討しており、F-35の整備員をA-10運用の人員から配置転換を行なうことで確保する計画であることから全機存続は難しいため、機数こそ減らしても運用は継続される模様。(なお、後述のA-10退役計画廃案のために民間から整備員を雇いクリアランスの低い部署へと配属、余剰となった軍の整備員をF-35に回すことで人員を確保する計画に変更した模様)
そして2016年1月、A-10の退役無期限延期が決定的となり、10月ごろにはA-10とF-35の戦闘比較試験によりA-10の任務をF-35が行なえるかの再検討が行なわれた。
演習の詳細は不明だが、退役計画は完全に廃案となった模様。
A-10自体のアップデートは現在も続けられており、タレス社のスコーピオン・フルカラーキューイングシステムが追加されたヘルメットの運用がされている。
これはヘルメットに内蔵された装置で敵味方の識別などのシンボルマークをバイザーに表示するもので、パイロットがいちいち確認しなくとも視覚的にわかりやすく表示するシステムである。『エースコンバット』シリーズなどの敵味方表示と似たようなもので、例えば視界内の敵に赤、味方に緑のマークを重ねて表示するものである。
OA-Xはどの候補もA-10に比べると小型で、見た目も中身も頼りないCOIN機となっており、もちろん高い防御力は望めない。
現状の交戦規定では攻撃前に低空で飛行して目標を目視確認することになっているが、複座機は単座機よりは確認がしやすいとはいえ高い防御力を持たない機では状況によっては難しく、誤爆や被撃墜などの増大も懸念される。
固定火器はA-29でも12.7mmが2門と貧弱であり、20mm機関砲を搭載するには兵装ステーションにガンポッドを積み、航空爆弾などの搭載量を減らす必要がある、と火力不足も懸念されている。
また、ユニットコストの面でも一機導入あたりA-10改修の数倍と改修した方が安く、整備面でもすでにある機体を維持した方が良いという意見もある。
空軍としては「対空砲がバシバシ撃ちあげてくるような目標にはF-15EやらF-16を差し向けるし、特に激しいときはUAVを使い捨てで突っ込ませる。OA-Xはそうやって『掃除』が終わった後に投入するから問題ない」としている。
たしかにA-10が担当するような任務は、対空砲火が壊滅した後にしか行えない任務であり、ならばOA-Xのような機でもいいという意見もわからなくはない。
A-10自身も部品や近代化改修のせいで運航費用が上がっており、製造できない部品の確保や機体寿命の問題も出ており、いつまでも現役に就かせるわけにいかないのもまた事実である。
しかし実戦ではA-10の防御力あっての生存性やGAU-8の高い攻撃力が発揮されたことも一度や二度ではなく、果たしてOA-Xはどう評価されるものやら…?
アフガン戦争、イラク戦争、ISIS戦争での多大な功績が認められ、2019年になって主翼交換プログラムを受注するに至った。
主翼を丸ごと交換することは、それが老朽化するまで退役はありえないことを意味する。
このことは少なくとも10~20年はA-10が飛行することを保証するものである。F-35でA-10の代替は不可能であることを空軍も認識したのであった。
そして空軍はOA-X計画を中止し、A-10の代替として300機ほど軽攻撃機を導入する計画は放棄された。(SOCOMによる武装監視用として最大75機の導入は予定している)
A-10の戦いは、まだ続く…。
メディア評価
タフでパワフルなスペックは実家の人たちのハートをガッチリつかんで放さないらしく、映画やゲームでの(現実ではまずありえないような)大活躍の機会も多い。
こうした娯楽コンテンツが情報源となっている日本のライトなミリオタの間にも信仰は拡大し、↓のようなコピペも広まっている。
何のために生まれた!?
――A-10に乗るためだ!!
何のためにA-10に乗るんだ!?
――ゴミを吹っ飛ばすためだ!!
A-10は何故飛ぶんだ!?
――アヴェンジャーを運ぶためだ!!
お前が敵にすべき事は何だ!?
――機首と同軸アヴェンジャー!!!
アヴェンジャーは何故30㍉なんだ!?
――F-16のオカマ野郎が20㍉だからだ!!
アヴェンジャーとは何だ!?
――撃つまで撃たれ、撃った後は撃たれない!!
A-10とは何だ!?
――アパッチより強く! F-16より強く! F-111より強く! どれよりも安い!!
A-10乗りが食うものは!?
――ステーキとウィスキー!!
ロブスターとワインを食うのは誰だ!?
――前線早漏F-16!! ミサイル終わればおケツをまくるッ!!
お前の親父は誰だ!?
――ベトコン殺しのスカイレイダー!!音速機とは気合いが違うッ!!
我等空軍攻撃機! 機銃上等! ミサイル上等! 被弾が怖くて空が飛べるか!!(×3回)
誇張が甚だしくまるで実様に即していないし、命がけで露払いをしているF-16やイラクで尻を拭いてくれたF-111に対してひどい言い様であるが、これを真に受けたネット住民がいたるところでA-10伝説を吹聴しこの手のバカ長いコピペ(ムダにバリエーションが多い)を所構わず貼り続けるため、ネタに乗れない派閥からは顰蹙を買うことも多い。
youtubeの米軍公式チャンネルではA-10がちらりとでも出るとコピペが乱舞しコメ欄が一色となったため、NGワードに設定されて表示されなくなっている。
バリエーション
- YA-10A:試作機
- A-10A:量産型
- YA-10B N/AW:レーダーを搭載するなどした夜間全天候攻撃型の複座実験機
- A-10C:A-10Aをグラスコックピット化、C4Iの強化、HOTASの対応などを行った改修型
関連イラスト
関連動画
USA Military Channel
【最強のA-10攻撃機】 車よりデカイ30mmガトリング砲の桁違いの威力とは? 華麗なアクロバット飛行も!(2019年4月)
凄まじい威力・A-10攻撃機の搭載兵器(2022年9月)
関連タグ
攻撃機 T-72 Su-25 ハンス・ウルリッヒ・ルーデル エリア88
P-47(初代サンダーボルト。高高度戦闘機だった事はいまや誰も思い出せない)
チャック・ノリス(空軍出身の俳優で、A-10の運用継続運動を行なっている)