概要
イランを中心とする中東地域で話される言語。ペルシャ語、パルシ語ともいう。漢語による省略形は波語。
一般にペルシア語といえばイスラム時代に成立した近世ペルシア語をさす。現在はイラン、アフガニスタン、タジキスタンの公用語で、話者数は4600万人。ただし、アフガニスタンのもの(アフガン・ペルシア語)は1964年以降ダリー語、タジキスタンのもの(タジク・ペルシア語)は1920年代頃よりタジク語と別の言語名で呼ばれる事がほとんどである。語彙の面でもイランのペルシア語はフランス語の、ダリー語はパシュトー語や英語やウルドゥー語の、タジク語はロシア語やウズベク語の影響を受けており、それぞれ別言語とされることもある。特にタジク語は他の2言語に比べ母音の発音が大幅に変化しており、また後述の通り文字体系が異なる事から他2言語の話者には若干通じにくいという。
アラビア語より文字は多いが、取得はアラビア語より容易である。
理由はアラビア語は書く文字と発音が異なる事や男性名詞、女性名詞等が存在するが、ペルシア語は性による名詞は基本的に存在せず、文法も英語や日本語などでやり方で非常に分かりやすいからである。
故にペルシア語の場合はペルシア文字に慣れるかが、取得できるか否かになる。
又、アラビア語はセム語系になるのに対してこちらはインド・ヨーロッパ語系になる為である。
発音がフランス語に似ている。
分類
ペルシア語は、時代によって次のように大別される。
古代ペルシア語
古代ペルシア帝国(アケメネス朝)の公用語の一つ。古代ペルシア楔形文字を用いた。
中世ペルシア語
サーサーン朝頃に使われた。アラム文字から派生したパフラヴィ文字(中世ペルシア文字)を用いた。後述の口語のダリー語に対し、行政・宗教・文学で用いられた文語だった。
近世ペルシア語
現代では「ペルシア語」といえばふつう近世ペルシア語を指す。7世紀から9世紀頃に原型であるダリー語(上述のアフガン・ペルシア語とは関係がない。起源はサーサーン朝の宮廷口語。「Dar(宮廷)-ī(の)」が語源とされる)が成立した。
文字はペルシア文字(アラビア文字の一種。ナスタアリーク体)を用いている(ただしタジキスタンのみキリル文字)。特に「現代ペルシア語」ないし「現代ペルシア発音」という時は、近世ペルシア語のうち、発音がテヘラン方言に近いものに変化したものを指す(i→e、u→o、q→ghなど)。
言語対応表一覧。
タジク語を除いて母音は表記されないため、各文字に適宜母音を添えて読む(ペルシア語ではア、エ、オの3種類、ダリー語ではこれにイ、ウを含めた5種類)。なお、以下の表におけるラテン文字転写・読みはイラン国内のそれに準じる。
ペルシア文字
ペルシア語・ダリー語※1 | ラテン文字転写 | おおまかな読み | タジク語・ロシア語※2 | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
ا | a ā e o (i u) | ア、アー、エ、オ | А И У О | 他の子音字に添えた場合は長母音アー(ā)を示す | ||
ب | b | バ行 | Б | |||
پ | p | パ行 | П | |||
ت | t | タ行 | Т | |||
ث | s | サ行 | С | 外来語用 | ||
ج | j | (破擦音の)ジャ行 | Ҷ(ДЗ) | |||
چ | ch | チャ行 | Ч | |||
ح | h | ハ行 | Ҳ(Х) | 外来語用 | ||
خ | kh | (هより喉を狭めて発音する)ハ行 | Х | |||
د | d | ダ行 | Д | |||
ذ | z | ザ行 | З | 外来語用 | ||
ر | r | ラ行 | Р | |||
ز | z | ザ行 | З | |||
ژ | zh | (摩擦音の)ジャ行 | Ж | |||
س | s | サ行 | С | |||
ش | sh | シャ行 | Ш | |||
ص | s | サ行 | С | 外来語用 | ||
ض | z | ザ行 | З | 外来語用 | ||
ط | t | タ行 | Т | 外来語用 | ||
ظ | z | ザ行 | З | 外来語用 | ||
ع | 'a 'e 'o | (「ん」の後に続く時のような)ア行 | Ъ | |||
غ | gh | (摩擦音の)ガ行 | Ғ(ГВ) | |||
ف | f | (下唇を噛む)ファ行 | Ф | |||
ق | gh (q) | (本来は喉奥で発音するカ行) | Қ(К) | 外来語用、イランではغと発音の区別をしない | ||
ک | k | カ行 | К | |||
گ | g | ガ行 | Г | |||
ل | l | ラ行 | Л | |||
م | m | マ行 | М | |||
ن | n | ナ行 | Н | |||
و | v ū(ō) | ヴァ行、ウー(オー) | В У Ӯ(ОУ) | 長母音としては、イランではウー、アフガニスタンではオーと読む | ||
ه | h | ハ行 | Ҳ(Х) | 語末に付く際は直前に母音エがある時に限り発音されない傾向がある | ||
ی | y ī(ē) | ヤ行、イー(エー) | Й И Ӣ(ЕЙ) Е Ё Э Ю Я | |||
ء | 'a 'e 'o 'ī | (「ん」の後に続く時のような)ア行 | ъ | 他の文字の上に重ねる記号。یとともに使って子音のないイーの音を表す、あるいは語末の子音とともに使って母音エを表す以外は外来語にのみ用いられる | ||
لا | lā | ラー | ЛА | لとاの合字 |
※1 括弧内のものは、イランでは用いないダリー語特有の発音である。
※2 ロシアでは用いない、あるいはロシア語と異なる表記をするタジク語用のキリル文字に関しては、括弧で対応するロシア語キリル文字転記を併記する。
ペルシャ数字
ペルシア数字 | 数字 | 漢数字 | ギリシャ数字 | ペルシャ語読み |
---|---|---|---|---|
۱ | 1 | 壱(一) | I | یِک(イェク) |
۲ | 2 | 弐(二) | II | دُو(ドゥ) |
۳ | 3 | 参(三) | III | سِه(セ) |
۴ | 4 | 四 | VI | چَهار(チヤハール) |
۵ | 5 | 伍(五) | V | بَنج(バンジュ) |
۶ | 6 | 陸(六) | VI | شِش(シュシュ) |
۷ | 7 | 叱(七) | VII | هَفپ(ハフト) |
۸ | 8 | 仈(八) | VIII | هَشپ(ハシュト) |
۹ | 9 | 仇(九) | IX | نُه(ノ) |
۰ | 0 | 什(十) | X | دَه(ダ) |
ペルシア語一覧
一般
- مَن(私)
- ما(私達)
- تُو(貴方)
- شما(貴方達)
- او(彼、彼女)
- آنها/اشان(奴ら)
- بَله(はい)
- ته/نَه خِیز(いいえ)
- کی(誰)
- چا(何)
- چطُور(どの様に)
- کجا(何処)
- کِی(いつ)
- کِتاب(本)
- ِ /مالِ (~のもの)
- حُود(~自身<単数>)
- حُودِ(~自身<複数>)
- میرادی(西暦<付けないとイラン歴になる。>)
国名
- ایران(イラン<伊蘭>)
- سوریه(シリア<西利亜>)
- لُبنان(レバノン)
- عربسیاسعودی(サウジアラビア)
- عُمان(オマーン)
- قَطَر(カタール)
- اردن(ヨルダン)
- مِصر(エジプト<埃及>)
- اسرائیر(シオニスト政権イスラエル<以色列>)
- عراق(イラク<伊楽>)
- روسیه(ロシア<露西亜>)
- ژاپُن(日本)
- آلمان(ドイツ<独逸>)
- فَرانسه(フランス<仏蘭西>)
- هِند(インド<印度>)
- لَهِستان(ポーランド<波蘭>)
- برَزیل(ブラジル<伯剌西爾>)
- جین(中国)
- سنکاپور(シンガポール<新嘉坡>)
- آمریگا(アメリカ合衆国<米帝>)
ِ
都市名
- یوکوهاما(横浜)
- پاریس(パリ<巴里>)
- هامبورگ(ハンブルク)
- اصفهان(エスファハーン)
- مَسکُو(モスクワ<母栖鍬>)
- پِکَن(北京)
- کیویو(京都)
- شانگهای(上海)
- سَنپتربورگ(サンクトペテルブルク)
- تِهران(テヘラン<帝経蘭>)
関連タグ
イラン / ペルシア / ペルシャ タジキスタン アフガニスタン
外部リンク
ペルシア語(Wikipedia) ※一部引用しています。