語意
モラルが低い・マナーの悪い右派に対して侮蔑的に用いられたり、他者に対するレッテル貼りとして使用される蔑称。「ネット」は文字通りインターネットの意味だが、実際のところはネットと無関係な文脈においても用いられている。
「ネトウヨ」「ネットウヨ」「熱湯浴( 誤変換より )」などと表記される。特に「ネトウヨ」は語呂が良く変換しやすいため広く定着していった。
ネット上の右派言説の特徴として、日本の旧来右派が一般に持つマッチョイズム(貧困層や弱者への冷淡さ)、自己責任論、タカ派、歴史修正主義への傾倒の他、「朝鮮・韓国に対する差別感情」が目立つ。このことから、いわゆる「嫌韓厨」とほぼ同義として用いられることがしばしばである。もっとも、「イルベ民」のような韓国右派に対し好意的な態度を示すことはある。
元来がネットスラングであるがゆえに明確に定義されてはいないが、特定アジアへの関心の薄い、例えばいわゆる「Jアノン」、スピリチュアル系右派(スピウヨ)、反米・親露的な右派についてはネット右翼とは呼ばれにくい(トランプやプーチンのファンで、なおかつ嫌韓的な言動が目立っていればネトウヨ呼ばわりされることはある)。
基本的に自称するものではないのだが、高須克弥や瀬戸弘幸( 外部リンク )など「ネット右翼」を自称する者もいる。なお在特会は「俺たちは顔出しでデモ活動しているからネット右翼ではなく行動する保守だ」と名乗っている。
歴史
ネット上の嫌韓言説(即ちネット右翼)は2002年の日韓ワールドカップの開催を機に2000年代に台頭したが、2005年ごろまでは彼らの活動はネット上にとどまっており、マスコミはあまり取り上げることはなかった。しかし2006年に「在日特権を許さない市民の会(在特会)」が結成され、同会をはじめ「街に出たネット右翼」と称される草の根市民団体の脅迫・ヘイトスピーチなどの事件が報道されるようになると、この言葉が普通にネットの外でも使われるようになっていった。
2010年代には「特定アジア」などネット周辺から生まれた用語が産経新聞など既存のメディアで使われるようになり、嫌韓・嫌中を扇動する書籍が広く読まれるなど、ネット右翼的な言説が(ネットをあまり使わない)中高年の保守層にも浸透していく。一方でアンチネトウヨに転じたネットユーザー(ネット左翼)が2ちゃんねる嫌儲板を拠点に、冷笑的なノリでネトウヨへのカウンターをするようになった。また、ネット右翼系ブログサイトのデマ・扇動による弁護士への懲戒処分申請(いわゆる余命騒動)へのカウンターとして、2018年になんJ板を拠点に差別動画通報騒動、いわゆる「ネトウヨ春のBAN祭り」が発生した。
2020年に巻き起こったコロナ禍に乗じて、ネット右翼の間で嫌中国・反ワクチンネタが多数流布され、「神真都Q(やまとQ)」と名乗る団体が各地で抗議デモやワクチン接種会場への妨害を展開。さらに2022年、ロシアのウクライナ侵攻と安倍晋三銃撃事件が発生した。こうした中、2020年代にはロシア・Qアノン・コロナワクチン・統一教会などをめぐりネット右翼同士の対立と抗争が目立つようになっている。
ビジネス右翼
上記の余命騒動・差別動画通報騒動の中で、ネット右翼の台頭の背後には、アフィリエイト収入目当てに過激な差別扇動を繰り広げる「ビジネス右翼」(通称「ビジウヨ」)の暗躍があったことが知られてきている。フェイクニュースを発信するようになったのもこの頃からである。参考→右派系まとめサイトの管理人に「目的」を直撃してみた(外部リンク)
2021年10日6日には野党議員に対する(捏造を含めた)中傷を行い続けていたTwitterアカウント「Dappi」が発信者情報開示により自民党と取引のある企業であることが発覚。被害を受けていた立憲民主党議員の2名に提訴された。
問題点
ネット右翼、もしくはネット左翼と認定される、あるいは自称するものの中には「フェイクニュースのような事実を捏造・改竄・歪曲しデマを流布」「ヘイトクライムなどの犯罪行為を扇動」「根拠なく他者を敵味方に分類し、敵対すると見なした人物や団体を誹謗中傷」「2ちゃんねるなどの電子掲示板や、ピクシブ百科事典などのwikiといった、ネット上のコミュニティ荒らし」などの問題行動を繰り返す場合がある。
また、上記の行動をたしなめられると相手を「反日」「テロリスト」等のレッテル貼りを行ったり、「根拠の無い敵対陣営認定」( 例えば「工作員認定」「在日認定」 )を行うなど、いわゆる厨的な行動が非常に目立っている。一部では「上記の行動を行う悪質なネトウヨとされる人物の中には敵対勢力の工作員や団体が成りすましたニセ右翼が混じっている」と主張する場合もあるが、これもまた「根拠の無い敵対陣営認定」に類する話である。
実際、かつてはネット右翼から賞賛されていた在特会や田母神俊雄は、暴行事件や選挙違反が発覚した途端に「左翼の成り済まし」認定を受けた(一方で「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会(高須克弥代表)」による署名偽造事件は「左翼のスパイによる工作を受けただけ」と未だ擁護されている)。
実際のところこのような問題は、多くの人が集まるコミュニティにしばしば発生する状況であり、ゲハやカップリング論争など、多くのジャンルにおいて問題化している信者とアンチの騒動に巻き込まれるファンという構造と、本質的にはほぼ同じである。もはや思想以前の問題として、ただ厨は厨としか言いようが無い。(実際、こういう事態はサヨク・パヨクの中でも(異なる意見に対して極度に不寛容なので寧ろこちらの方が多いかもしれない)割と発生している)
なお、しばらく前からこの言葉を俗にいうサヨクやパヨクが「気に入らない相手や言い負かせない相手を(その相手の政治思想の右左関係なく)貶めて精神的勝利を得るための都合の良いレッテル」として濫用しており、結果としてこの言葉の意味自体が半ば形骸化している節がある。
総括
ネット右翼の本質は崇拝対象(日本やアメリカ)の負の部分から目を背けて中国や左翼に責任転嫁して逃げる自称・愛国者であり、常に誰か他人のせいしたがる他責思考と言える。