“あの男というのは当然ながら、ゲラート・グリンデルバルドの事です。もしもヴォルデモート卿が次の世代に現れなかったとしたら、彼こそが100年ぶりに現れた歴史上最も強力で邪悪な魔法使いでした。”
「法律のせいで、我々は溝鼠のようにこそこそと、本当の自分を押し殺して生きねばならない。ひとつお聞きしたい、議長。皆に聞きたい。誰を守るための法だ?我々か? 彼らか?」
「殺すがいい、ヴォルデモート!私は死を歓迎する。お前の理解していないものの、何と多いことか……」
概要
『ウィザーディング・ワールド』の人物。魔法使い。
名前は『ハリー・ポッターシリーズ』の1巻『ハリー・ポッターと賢者の石』から登場していたが、その詳細が明かされるのは7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』からとなる。
『ハリー・ポッターシリーズ』の前日譚である『ファンタスティック・ビーストシリーズ』にはキーマンとして登場。
ヴォルデモートに次いで歴史に爪痕を残した闇の魔法使いであり、アルバス・ダンブルドアのかつての親友(恋人)。
魔法族が正体を非魔法族へ表し、彼らを屈服させるという思想を掲げヨーロッパを中心とした大動乱を引き起こした。
仮にヴォルデモートが現れなければ最も危険な魔法使いの王座にあったとされており、魔法界の歴史における転換点として「ヴォルデモート卿の凋落(一度目)」、「国際魔法使い機密保持法の制定」と並び、「グリンデルバルドの敗北」が挙げられている。
プロフィール
名前 | Gellert Grindelwald (ゲラート・グリンデルバルド ) |
---|---|
種族 | 人間 魔法使い |
人種・国籍 | 白人 国籍不明 |
血統 | 純血または混血 |
誕生日 | 不明 |
生没年 | 1883年ごろ〜1998年3月(115歳~116歳) |
家族 | 大おば:バチルダ・バグショット……有名な魔法史家 |
出身校 | ダームストラング (退学処分により中退) |
杖 | ニワトコの杖(38センチ、ニワトコ、セストラルの尾の毛) |
映画版演者(吹替) |
以下、ネタバレ注意
経歴
二人の天才
闇の魔術の教育で悪名高いダームストラング校に通っていたが、同級生を攻撃した事で退学処分となる。
その後、大おば(祖父母の姉妹の意)であり著名が魔法史家であるバチルダ・バグショットの暮らすゴドリックの谷に滞在することになる。
(バチルダの大おばというのが父方か母方か、祖父か祖母か、姉か妹か全く描写されていないが、中国語版では『姑婆(父方の祖父の姉妹)』という表記となっているためグリンデルバルド家からイギリスのバクショット家に嫁いだという可能性が高いことになる。)
そしてそこに住んでいた当時のアルバス・ダンブルドアと断金の交りを結び、アルバスと共に「より大いなる善の為に」というイデオロギーのもと、死の秘宝を探し出しマグルを魔法族の下へ屈服させるという計画を練った。
その過程で、決して互いに攻撃できなくなる血の誓いをアルバスと交わしている。
アルバスはグリンデルバルドの思想の過激さに気付きながらも、初めて出会った同世代の天才に惹かれてしまう。(原作者曰く、「恋愛的感情を抱いた」。)
しかし、2人が計画を進めるうちにアルバスは妹のアリアナの世話を疎かにするようになる。
(アリアナはとある事情で精神的に不安定となり魔法が制御できなかったため、アルバスが面倒を見ていた。)
これに怒ったアルバスの弟アバーフォースはグリンデルバルドと口論。やがてアルバスを含めた三つ巴の決闘に発展し、その巻き添えでアリアナが死亡してしまう。
アリアナの死そのものは偶発的な事故であり、彼女を死に至らしめた原因が3人のうちの誰が放った魔法であったかは不明。しかし既にダームストラングでの前科があったグリンデルバルドは、咎を受ける事を恐れ国外へ逃亡し行方をくらました。
この事件を気にアルバスは弟との仲が決裂(後に和解)しただけでなく、グリンデルバルトと決別する事になった。
その後、杖職人マイキュー・グレゴロビッチからニワトコの杖を盗んだ。
革命者の台頭
1920年代に台頭。
魔法族によるマグル支配を掲げ、それに賛同する魔法族を率いて反乱を起こした。
その究極的な目的は、魔法族はマグルから身を隠して生きることを義務化する「国際魔法使い機密保持法」の破棄であった。
グリンデルバルドにとっては自らが支配者となる基盤であり、支持者たちにとってはマグルから身を隠す抑圧からの解放を意味していた。
グリンデルバルドは誰よりもアルバス・ダンブルドアを恐れていたとされ、それは最強と言われるニワトコの杖や決して互いを攻撃できない「血の誓い」をもってしても拭いきれない程の事実であった。そのためグリンデルバルドはダンブルドアの住むイギリス国内では一切事件を起こさなず、オーストリアのヌルメンガード城拠点に勢力を拡大した。
ブルガリアのビクトール・クラムの祖父を含む大勢の敵対者を虐殺(これが原因でビクトールは闇の魔法使いを嫌っている)、あるいはヌルメンガードに監禁した。
1926年を舞台にした『ファンタスティック・ビーストシリーズ』1作目『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』ではアメリカ、ニューヨークのオブスキュラス事件の黒幕として登場。しかし渡米していたニュート・スキャマンダーらの活躍で捕縛された。
1927年を舞台にした2作目『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』においては、ヨーロッパへの護送中にアバナシーを使って脱走。フランスに潜伏すると腹心ヴィンダ・ロジエールら信奉者を従え、再びニュートらと相見えている。
ニワトコの杖を用いたり演説により仲間を集めるなど、前作よりも堂々と活動。
最終的にクイニー・ゴールドスタインやオブスキュラスであるクリーデンス・ベアボーンを自らの配下にし、彼に自身の真の名前を告げた。
1932年を舞台にした3作目『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』ではドイツ魔法省を通じて国際魔法使い連盟に取り入ると、自身の罪状を取り消させた上、連盟のトップである「上級大魔法使い」の座につこうと画策。
真っ向からの選挙では及ばないと考えたグリンデルバルドは、純粋さと善の心を見抜く希少な魔法動物、麒麟によって上級大魔法使いを選出するという古来の手法に目を付け、「麒麟を殺害して亡者として操り、自らを選ばせる」という計画を実行する。
しかし、今回はその過程で暴力と支配という本性を現した事でクイニーとクリーデンスに裏切られ、さらにダンブルドアの計画を実行したニュートたちの活躍により麒麟を殺害した罪を背負った上、選挙にも敗北するという完全な失策に終わる。
なお、ダンブルドアはその後、『ハリー・ポッターシリーズ』の時系列において上級大魔法使いに就任している。また、5巻『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』においてヴォルデモートの恐怖に屈した国際魔法使い連盟によりダンブルドアが上級大魔法使いの座を追われた事も語られている。
正規の手段で上級大魔法使いに就任したダンブルドア、そんなダンブルドアすら追い落とすヴォルデモートの脅威と比較すると、今作でもグリンデルバルドはそのカリスマ性や計略を含めてやはり「一枚落ちる」描写となっている。
伝説の決着
1939年、信奉者と共にら魔法使いがマグルを支配する世界の為に反乱を起こす。
反乱は6年に及んだ。そしてグリンデルバルドの力が最高潮に達した1945年、ついに無視する事ができなくなったダンブルドアが動き、二人は決闘。グリンデルバルドは敗北した。
結果、ニワトコの杖はダンブルドアのものとなったのだった。
二人の戦いは歴史に残る伝説の決闘と語り継がれているが、中にはグリンデルバルドは最初から敗北を予言し白旗を上げていたと証言するものもおり、その実情は不明となっている。
敗北後、グリンデルバルド自身がヌルメンガードの最上階へと収監された。
ヴォルデモートとの対話
1998年時点、『ハリー・ポッターと死の秘宝』の時点では改心している。過去の自身の行いを恐ろしく思い、誤りだったと認めていた。
ニワトコの杖を求めるヴォルデモートがヌルメンガードを訪れた際は堂々たる姿勢を貫き「お前は勝てない」とヴォルデモートの敗北を予言すると同時に、緑色の閃光に射貫かれて死亡した。
その最期の行動はダンブルドアの肖像画からは「悔悟の念から」、ハリーからは「ダンブルドアの墓を守るため」だと推測されている。ダンブルドアの耳に届いていた通り、彼が改心していた事は少なくない魔法使いの知るところではあったようである。
グリンデルバルドは最期の最期にダンブルドアと同じ陣営に立ち、闇の帝王に立ち向かってその生涯を終える事になった。
容姿
青年期は他人の容姿に厳しい人によれば金髪(ブロンド)の巻き毛、陽気な雰囲気のハンサムな容姿をしていた。
中年期〜壮年期は2パターンの容姿で、ジョニー・デップとマッツ・ミケルセンがそれぞれ演じた。
デップが演じたグリンデルバルドはハイトーンの金髪をツーブロック&モヒカンにし、口髭を蓄えた派手な容姿。
ミケルセンが演じたのはグリンデルバルドは銀髪の横分けであり、落ち着いた容姿。
ま左右の眼の色が異なるオッドアイであり、右眼がかなり薄い青色、左眼が黒色(もしくは濃い青色)である。
これは後述の「予言者」の能力と関りがある可能性がある。
また、アメリカでオブスキュラス事件を起こした際は闇祓いの長官パーシバル・グレイブスに変身していた。
能力
最強に次ぐ魔力
もしヴォルデモート卿という規格外が出現しなければ、史上最強の闇の魔法使いは彼だっただろうと言われている。
『ファンタスティック・ビーストシリーズ』では正面から闇払い十数人の一斉放火を受けながらも一方的に相手に無双するほどの実力を披露し、並の魔法使いをはるかに凌駕する力量を見せる。
ただし操る闇の魔法力や凶悪性はヴォルデモートには及ばず、ダンブルドアもニワトコの杖を持ったグリンデルバルドに対し「おそらくわしの方が少し勝っていると思っていた」とハリーに語るなど、この2人ほど絶対的な存在ではなかった。
『ファンタスティック・ビーストシリーズ』1作目では、隙を突いたニュートにあっさり拘束されたり、闇払い数人が張った保護呪文を破る事ができなかったりする。
忠誠心の無いニワトコの杖でさえホグワーツの防御魔法(魔法使いが数百人束になっても壊せない)を一撃で打ち破って見せたヴォルデモートの強さには及ぶべくもない。
3作目では、遂にダンブルドアと対決。互角の戦いを繰り広げた。しかしニワトコの杖を用いてなお、真正面からの呪文の激突で押し込まれれており、「ニワトコの杖を持ったグリンデルバルドよりも自分が少し勝ると思っていた」というダンブルドアの評価は間違っていなかったと言える。
人心掌握
その一方で、人心掌握術に長けていたとされており、グリンデルバルドはヴォルデモートとはまた違ったベクトルの力を持っていたようだ。相手に「自ら従いたいと思わせる」能力では彼らよりも上の可能性が高い。
『ファンタスティック・ビーストシリーズ』の2作目では巧みな演説により「信奉者」を増やす姿を見せている。
自身の力や容姿による魅了というよりは、少しでも心の闇を抱える人々の願いを汲み取り、理知的に自身の思想へと恭順させる。
その点で、絶対的な力による恐怖、過去には端正な容姿など、あくまで自身への畏怖と崇拝で組織を束ねていたヴォルデモートとはそのカリスマの本質に大きな違いがある。
『ハリー・ポッターシリーズ』の後期と『ファンタスティック・ビーストシリーズ』の監督ディビット・イェーツは「ヴォルデモートがギャングならばグリンデルバルドは詐欺師」と的確に表現している。
しかし3作目では焦りからか人心掌握に陰りが見えている。失敗を犯した部下を脅す、敵対者を磔の呪いで拷問する、魔法による小細工によって選挙に勝とうとする、純血を優遇し半純血やマグルを許さない、といったヴォルデモートほどではないが力と恐怖、単純な純血思想に傾く様子が見受けられた。
今作ではそういった行動に出た事でクイニーやクリ-デンスにあっさり離反されている。
未来視
彼はまた「予言者」(原語では「Seer」なので直訳すると視る者、未来視を行う者)でもあった。
原作者J・K・ローリングのTwitterでのファンへの回答によると、「彼は予言者で、嘘吐き」。グリンデルバルドがシビル・トレローニーと同様の能力を持つことが示唆されている。
この能力で未来を垣間見たためか、ヴォルデモートに対して「お前は勝てない」と断言しており、現実のものとなっている。
余談
マグル界の世界大戦
作中でグリンデルバルドは第二次世界大戦そして原爆の投下を予言しており、演説時にはその映像を聴衆へ見せている。
またグリンデルバルドは原作者ローリングによればアドルフ・ヒトラーと関連している。実際に彼らはどちらもカリスマ的な支配者であり、1945年に倒れた。
映画版との相違点
映画版『ハリー・ポッターと死の秘宝』では、グリンデルバルドとダンブルドアの過去は大幅にカットされている。
また終盤ではヌルメンガードの自分の独房に訪れたヴォルデモートにニワトコの杖の在り処を教えており、殺された描写も無かった。
関連項目
アルバス・ダンブルドア ヴォルデモート ニュート・スキャマンダー クリーデンス・ベアボーン パーシバル・グレイブス ヴィンダ・ロジエール クイニー・ゴールドスタイン
夏油傑……やたらと共通点がある。